2013年9月9日月曜日

新刊『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』を語る

こんにちは!

前回の「アメコミ魂」では期待の復刊作品『バットマン:ハッシュ 完全版』をご紹介しました。今回はその『バットマン:ハッシュ 完全版』と同じ発売日である9月28日頃発売予定のデッドプール初邦訳作品『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』について少しだけ語ってみようかと思います。

▲日本語版カバー
ソフトカバー、オールカラー328ページ、定価:2,940円(税込)……アメコミ初心者の方には少々お高く感じるかもしれませんね。とはいえ、表紙の雰囲気やこのブログを見て気に入っていただけたのならば、お買い求めいただいて損はないと思います。アメコミファンからすると、328ページで2,940円!?と、いい意味でいていただいているかもしれませんね。

本書は、とってもお茶目でクールな作品です。いつもの邦訳アメコミとは違って「クスッと笑える」場面も多いですし、気軽に読めちゃう海外マンガです。一応はじめに申しておきますと、今回の作品はデッドプールというキャラクターとゾンビ版デッドプールの頭部(ヘッドプール)との珍道中が描かれてありますので、少しだけ、ほんのちょっとだけ“グロ注意”ということだけお伝えしておきます。驚く度合いは個人差がありますからね。作品内容は違いますが『ウォーキング・デッド』や『キック・アス』を楽しめた人ならまったく問題はないですよ。

『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』の原題は“Deadpool: Merc with a Mouth”です。
“Merc”は“mercenary”の短縮形(スラング)で「傭兵」や「雇い兵」などの意味です。ほかにも「報酬目当てで働く人」などの意味もあります。邦題は原題のカナ表記にしましたが、日本語訳にすると『おしゃべりな傭兵デッドプール』でしょうか。本書では「冗舌な傭兵」と記してあります。

本書は、2009年9月から2010年9月に連載された『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』1号~13号をまとめた単行本で、一つのまとまった物語になっています。連載時のカバーアート(単行本内では各章トビラ)は、パロディの連続で『ジョーズ』やら『プリティ・ウーマン』やらの映画ポスターやニルヴァーナのジャケットなどのパロディで構成されているのも見どころですね(数量限定購入特典ポストカード配布対象書店一覧で一部使用されています)。

さて、「デッドプール」ってホントはよく知らないという方にちょっとご説明を。デッドプールの本名はウェイド・ウィンストン・ウィルソン。マーベル・コミックスのユニバースで活躍する傭兵アンチヒーローです。初登場号は1991年2月の『ニューミュータンツ』98号。誕生してまだ20年ちょっとなんですね。デッドプールをクリエイトしたのは、ライターのファビアン・ニシーザとアーティストのロブ・ライフェルドです(ライフェルドの画は本書でも見れますよ)。デッドプールの誕生秘話にはDCコミックスのデスストロークを意識して…などとありますが、このあたりは本書内にあるボリューム満点の別紙解説書をご覧ください!

デッドプールといえば戦闘能力超回復能力。ダメージを受けてもすぐ治っちゃう。ウルヴァリンをイメージしていただくとわかりやすいと思います。実際に同じ能力ですからね。また、彼は日本に来て相撲部屋に弟子入りしていたこともあり、日本語のほか語学は堪能です。あとは変貌してしまった顔に極度のコンプレックスを抱いているのですが、なぜそうなってしまったのかはこちらも解説書をお読みください(笑)。最大の特徴は、デッドプールは読者に語りかけてしまったり、メタ発言ができる数少ないキャラクターだというところでしょう。ここが彼の魅力であり、読者が彼を「可愛い」「憎めない」「面白い」と思ってしまうところだと思います。

クールなアンチヒーローなんだけど、ユーモアやパロディもあり、愛もある(笑)ヒーロー、デッドプール。ハマる人は絶対ハマってしまう、彼の魅力がいっぱい詰まった本書をぜひご一読くださいね!

ではまた!


(文責:山本将隆)

2013年9月1日日曜日

大解剖『バットマン:ハッシュ 完全版』

こんにちは!

今日から9月ですね。「あ~夏休み終わっちゃった」なんて思っている人も多いはず……。

さて、今回の企画は9月28日頃発売予定の『バットマン:ハッシュ 完全版』を紹介します。同時発売に日本初上陸の『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』や映画原作コミック『R.I.P.D. アール・アイ・ピー・ディー』などがあります。とにかく、どれも注目作ですので、ぜひご贔屓に!

これだけ邦訳コミックが出ていますと、何がいま発売されているかを忘れてしまいますので、念のために8月発売の邦訳アメコミを列挙しておきます。。
『スーパーマン:ラスト・サン』
『ウルヴァリン:エネミー・オブ・ステイト』
『バットマン:梟の夜(THE NEW 52!)』
コミックじゃないけど……これも。
『アート・オブ・アイアンマン3』
あと…アメコミじゃないけどヒーローつながりでこれも……。
『科学忍者隊ガッチャマン アニメアーカイブス』


では、謎の包帯男ハッシュの話をしましょう。

■『BATMAN: HUSH』について
▲『バットマン:ハッシュ完全版』

『BATMAN:HUSH』は、2002~2003年に『BATMAN』誌で12回にわたって連載されたエピソードです。その後、全2巻のTPB(単行本)が刊行(本書を底本としたものが他社さんで邦訳)。2005年には全エピソードに加え、多くの特典ページを収録した『ABSOLUTE BATMAN HUSH』が刊行されました(今月末刊行する『バットマン:ハッシュ 完全版』は本書が底本です)。

また2011年にはジム・リーのペンシル画で構成された『BATMAN:HUSH UNWRAPPED』(『バットマン:ハッシュ 完全版』にも少しだけ特別収録!)も出版されています。



ABSOLUTE版(完全版)は、大判のハードカバーで豪華なケースのついたDCコミックのシリーズで、小社でも『ウォッチメン』や『バットマン:ダークナイト』『キングダム・カム 愛蔵版』などはこのABSOLUTE版を底本としています。


左が『ABSOLUTE BATMAN HUSH』。右はABSOLUTE版を底本とした翻訳版『キングダム・カム愛蔵版』

アメコミの通常の単行本サイズと比較するとこんなにも大きいのがABSOLUTE版。書棚に収まりきれませんね(笑)


▲ハッシュ。モザイクの理由は……
ジム・リー&ジェフ・ローブの『BATMAN:HUSH』は大ヒットを記録するのですが、大ヒットに至るまでの過程などについては、『バットマン:ハッシュ 完全版』に収録されているジム&ジェフによるイントロダクションや日本語版解説をご覧ください!

本書は読みきり作品として成立しており、バットマンのキャラクターやヴィランが多く登場するので、バットマン入門書としても適しています。ちなみに“HUSH”は謎の包帯男の名前なのですが、日本語では「しっ。静かに。黙って」という意味になんですね。読む前に覚えておくといいかもしれませんね。




■『バットマン:ハッシュ 完全版』の収録特典
《その1》ジム&ジェフによるイントロダクション
ジム・リーとジェフ・ローブによるイントロダクションを冒頭に収録。これは本書の底本である『BATMAN HUSH ABSOLUTE』の出版当時(2005年)のインタビューなので、モロネタバレになっています。『ハッシュ』を初めて読む日本の読者は、この項目は本編を読んだ後に読むべきですね。逆に『ハッシュ』をすでに読んだことなある方は、初めから読んでいただいてもいいですし、とても興味深い内容になっています。
▲ネタバレが含まれているイントロダクション(写真は原書版。以下同)

《その2》カバーアート集
全2巻の単行本にもカバーアートは収録されていましたので、もちろん重複する画もあるのですが、こちらの方がアートが豊富ですね。


《その3》ジム・リーによる解説
アーティストによる場面解説。これは贅沢ですね……。写真でいうと右のページになります。日本語版でも12ページにわたって解説されています。


《その4》スケッチ集
これは画を勉強している人やイラストを趣味にしている人には大変参考になりますよね。


《その5》ジム・リーの原画が完成するまで
見開き2ページのみの収録ですが、裏側が見れてとても楽しい!


《その6》修正原稿
完全版だからこそのこの企画、マニア垂涎です!



《その6》商品デザイン
このフィギュア、うちの100名様プレゼントにあったような……。このフィギュアにもちゃんとデザイン画があったんですよね。


《その6》日本語版のみの特別収録『バットマン:ハッシュ アンラップド』の冒頭をほんの少しだけ収録!
日本の読者に喜んでもらえるか分かりませんが、一応、自分のアイデアで入れてみました。本当は全ページ入れたかったのですが、そうなると700ページ近くになってしまうのでやめました(笑)。雰囲気だけでも味わっていいただければ幸いです。
▲これが『~UNWRAPPED』の原書。う~ん、渋い


▲中身はこんな感じ! ジム・リーファンにはたまらないでしょうね……


そのほか下絵やスケッチなどもまだまだ収録されています。もちろん、いつものように日本語版解説と用語解説も収録されています。今回の『バットマン:ハッシュ 完全版』は、完全新訳なので、その点もご注目くださいね!



HUSH!(しっ!)……この記事は誰にも言わないで!……というのは冗談で、買おうかどうか悩んでいる人はこの記事を参考にしてください。最近、アメコミファンになった人には全力でお薦めできる作品です! 最後に、日本語版のケースと表紙のデザインを本邦初公開。なかなかカッコよくできたと思います。ご期待ください。


ではまた!


(文責:山本将隆)