2014年2月17日月曜日

映画によせて……『マイティ・ソー:アスガルドの伝説』

みなさん、こんにちは!

現在公開中の『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』はご覧になりましたか?

前作『マイティ・ソー』で意外なハマリ役だったクリス・ヘムズワースの雷神ソーも、もちろん引き続き好演していますが、今回の注目キャラはなんといってもトム・ヒドルストンによる邪神ロキ! 登場場面では必ずと言っていいほど印象的な演技を見せ、主役を食う勢いで大活躍しています。“マーベル・シネマティック・ユニバース”におけるアイアンマン(トニー・スターク)以来の人気キャラクターとなりそうなロキですが、そんな彼とアスガルドの仲間たちの冒険が読める日本語版アメコミといえば……

 
『マイティ・ソー:アスガルドの伝説』
スタン・リー[作]/ジャック・カービー[画]
定価:2600円+税
●小社より好評発売中●
というわけで、刊行からかなり時間が経っていますが、今回は『マイティ・ソー:アスガルドの伝説』をご紹介したいと思います。

まずは本書のいささか変わった成り立ちから。

もともとSF/ホラー雑誌だったマーベル・コミックスの『ジャーニー・イントゥ・ミステリー』にソーが初めて登場したのが1962年。当初ソーはおもに現代の地球を舞台にさまざまな敵と戦っていたのですが、やがて翌年から雑誌の巻末に毎号5ページ、ソーの故郷である異世界アスガルドをテーマにした短編『アスガルドの伝説(Tales of Asgard)』が掲載されるようになりました。

最初は1話完結による、世界観やキャラクターの紹介だったのですが、次第に複数の号にまたがる壮大な物語へと発展していきました。連載は約4年間、雑誌の名前が『ジャーニー・イントゥ・ミステリー』から『マイティ・ソー』に変わっても続きました(1967年にブラックボルトをはじめとする種族“インヒューマンズ”を扱った短編『インヒューマンズ伝説(Tales of the Inhumans)』へと変更)。

そして時代は流れて2009年、この連載をまとめた全6号の雑誌が刊行され(カバーは当時ライターのJ・M・ストラジンスキーと組んでソーを描いていたオリビエ・コイペルによる描きおろし)、その雑誌を1冊の単行本にまとめたのが『マイティ・ソー:アスガルドの伝説』なのです(ちなみに本書以前、1968年と1984年にも『アスガルドの伝説』から10話ほど選んでまとめた増刊が発売されています)。


続いて、本書の見どころについて……。

何よりもまず注目するべきは“黄金コンビ:スタン・リー&ジャック・カービー全盛期の作品!!”という点でしょう。すでに語り尽された話ではありますが、1961年に雑誌『ファンタスティック・フォー』を創刊して以来、このコンビはハルク、アイアンマン、X-MENと新感覚のスーパーヒーローを次々と考案し、マーベル・コミックスに現在まで続く繁栄をもたらしたのです。

そんな二人の日の出の勢いは、たった5ページの巻末連載にも感じられます。最初は単なる設定の補強として始まったのかもしれませんが、次第に弾みがつき、1話完結の単なる絵物語から壮大な冒険譚へと展開していく様子は、当時絶頂期にあった彼らの創作意欲を生々しく伝えてくれます。またジャック・カービー(インカーはおもにビンス・コレッタ)の描くアスガルドは神話とSFを自由に行き来し、彼の奔放な想像力にさらなる発展があることを暗示しているかのようです。やがてカービーは1970年にDCコミックスで『フォース・ワールド』を、1976年には出戻ったマーベル・コミックスで『エターナルズ』を生み出すのです。

また、コミック本編に加えて収録された特典の充実も、嬉しいところです。キャラクター解説アスガルドの地図といった設定資料が、『オフィシャル・ハンドブック・オブ・マーベル・ユニバース』『ジャーニー・イントゥ・ミステリー・アニュアル』といった雑誌から集められ、原書の単行本を年代順にまとめてリスト化し、さらにソーが初登場を飾った記念すべき1962年の『ジャーニー・イントゥ・ミステリー』#83も収録! まさにマイティ・ソー関連資料の決定版といった趣があります。

現在のようにさまざまな海外コミックが毎月コンスタントに出版されるようになっても、興味の中心になるのはやはり現在進行形の作品であって、こうした“アーカイブ系”の作品はなかなか日本語版出版の機会に恵まれません。そんな中でもアメコミの歴史をひも解いてみたい、という研究熱心な読者のみなさんは、本書はもちろん、『グリーンランタン/グリーンアロー『ベスト・オブ・スパイダーマン』などもぜひどうぞ! スタン・リー、ジャック・カービーの偉大な功績についてもっと知りたい方は『スーパーゴッズ:アメリカン・コミックスの超神たち』を!




『マイティ・ソー:アスガルドの伝説』がアメリカで連載されていたのは、日本ではおおよそテレビアニメ版『鉄腕アトム』から『ウルトラマン』にかけての時代、マンガだと『8メン』『サイボーグ009』から『カムイ伝』『巨人の星』にかけての時代にあたります。そんな歴史を頭の片隅に入れ、彼我のコミック文化の違い思いを馳せながら本作を読んでみるのもまた一興かと。

それでは本日はこのへんで。


(文責:中沢俊介)