2014年3月10日月曜日

初心者にお薦めするアメコミ『DCスーパーヒーローズ』

こんにちは!

「アメコミ初心者に最適な邦訳コミックは何?」
「アメコミ入門書は?」
「アメコミは何から読めばいい?」
これらの質問にはいつも悩んでしまいます。一言で「アメリカン・コミックス」といっても幅が広いですからね。スーパーヒーローコミックもあれば、オルタナティブ・コミックもある。またスーパーヒーローにもマーベルやDC、ダークホースにIDWなど、ヒーローものや映画もののコミックを出している海外コミック出版社のカラーもあり、キャラクターも数多いる。オルタナティブ・コミックにしてもそれこそ内容が様々……。アメコミを初めて読もうとする人たちの趣向がわかれば、多少あれやこれや推薦できるのですが、いわゆる万人受けする入門書なるものを選べというのはなかなか難しい。さらに、「お薦めしたこの作品で、アメコミを嫌いになってしまうかもしれない……」なんて考えてしまうと、なかなか一冊に絞れないんですよね(笑)。

 

■究極の選択ではあるが……

それでもスーパーヒーローものの中から一つの作品に絞らなければならないとしたら、ポール・ディニ&アレックス・ロスの『DCスーパーヒーローズ』をお薦めします。個人的にはこの作名より、以前小社より刊行し、現在は絶版の「スーパーマン:ピース・オン・アース」や「バットマン:ウォー・オン・クライム」、もしくは他社様より刊行されていた「JLA リバティ&ジャスティス」の作名の方が馴染み深い人がいるかもしれません。『DCスーパーヒーローズ』は、これらの作品も収録されている大変お得で読みやすい作品です。とはいえ、定価:本体3,200円+税と価格も高いし、ハードカバー400ページなので、本当に初心者向けかと自問自答してしまうときもあります。また確かにアレックス・ロスのペイントアートは誰もが魅了されてしまいますが、いわゆるスーパーヒーローもののアメコミを象徴するアートかといわれれば、そうだとも言い切れない。ですが、悩んだ挙句、結局推薦してしまうのはこの作品になってしまいます。

スーパーヒーローものが好きな人、スーパーヒーローが苦手でオルタナ系が好きな人、アート系が好きな人……ある程度幅広い趣向に応えてくれるアメコミが『DCスーパーヒーローズ』ではないかと思います。日本の読者がアメコミに手を伸ばさないのは、様々な理由がありますが、「何から読めばいいのか分からないから」というのも一つの理由だと思います。読み切り作品で予備知識がいらないオルタナティブ・コミックならば、好きな映画をお薦めする感覚で推薦できるのですが、スーパーヒーローコミックはそうはいかない。どのキャラクターの作品も何十年という歴史を持っており、シリーズを順に追って読むのは不可能に近い。しかも日本で翻訳刊行されたアメコミは氷山の一角です。「途中から読んでも物語が分からない」と思って手を伸ばすのをやめようと思うのは当然だと思います。しかし、アメコミの魅力に一回ハマってしまうと、次々読みはじめ、ユニバースの知識もつき、ライターやペンシラーの情報も増え、重厚な物語もしくは日本にはないアートなど、自分の好みのアメコミの方向が定まり、抜けられなくなるということもありうるので、ぜひ一度アメコミの世界に浸ってください。

■二つの魅力

本書の魅力の一つに、(当然DCコミックスのキャラクターに限ってではありますが)アレックス・ロスによるアートで、各キャラクターのオリジンが見開きで簡潔に紹介されている点が挙げられます。オリジン(誕生秘話)を知るということは、そのキャラクターを理解するうえで重要なことで、入門書に適しています。スーパーマンバットマンはもちろんのこと、ワンダーウーマンキャプテン・マーベル(シャザム)。さらにフラッシュグリーンランタンアクアマンマーシャン・マンハンターグリーンアローホークマンアトムプラスチックマンアダム・ストレンジ、ザターナ、メタモルフォ、エロンゲイテッドマン、ファントム・ストレンジャー、レッドトルネードはキャラクター紹介のみ)。これだけのキャラクターのオリジンが、アレックス・ロスのアートで見られるというファン垂涎の作品です。現行シリーズ“ニュー52”ではリランチされたとはいえ、すべてが「なかったこと」になっているわけではないので、いまでも充分読むに堪えうる作品だと思います。

もう一つ魅力を挙げるとするならば、物語のテーマでしょうか「スーパーヒーローたちが現実の社会問題に対峙する」をテーマに、スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン、キャプテン・マーベル、JLAのそれぞれの物語が描かれています。当然、各々のヒーローが立ち向かう問題も違います。このコミックにはスーパーヒーローものでイメージしやすい勧善懲悪やスーパーヴィランとの戦闘シーンなどはほとんどありません。むしろ彼らの内面を抉った作品です。ヒーローたちも現実の世界で起こっている貧困問題や国際問題などに悩み、平和を求める。読者は本書を通して様々な社会問題の根深さを考えさせられると思います。もちろん、重く暗いだけではなく、エンターテインメント性は損なわれていません。このテーマは、スーパーヒーローが苦手な人がイメージされている内容ではなく、そういった方々にも充分読み応えのある作品だと思います。
とにかくアイズナー賞受賞者による、評価も質も高い、スーパーヒーロー入門書をお試しあれ!

■最後にもう少しだけご紹介……

『DCスーパーヒーローズ』の底本は、1998年から2005年にかけてタブロイド判で刊行された6冊のシリーズを合本した“The World's Greatest Super-Heroes”。冒頭でも述べましたが、この6冊のシリーズのうち、小社より2000年に「スーパーマン:ピース・オン・アース」と「バットマン:ウォー・オン・クライム」をケース入りで分売可のセット販売をしました。2005年に他社様より「JLA:リバティ&ジャスティス」と「JLA:シークレット・オリジン」を収録した「JLA:リバティ&ジャスティス」が発売されました。ゆえに6冊のうち4冊はすでに紹介された作品ですが、本書には未邦訳の「ワンダーウーマン:スピリット・オブ・トゥルース」と「シャザム!:パワー・オブ・ホープ」が収録された、まさに完全版です。
彼らがなぜ“The World's Greatest Super-Heroes”と称されるのか、本書でぜひ確かめてみてください。

当然のことながら、皆さんにとってのお薦めの邦訳アメコミ入門書は、違う作品かもしれません。これを機会にいろいろとアメコミ仲間と語り合うのもいいかもしれませんね。
▲『キングダム・カム 愛蔵版』
マーク・ウェイド[作] アレックス・ロス[作]
定価:本体3,400円+税
●小社より発売中●
アレックス・ロスのアートをさらに堪能したい方へ
▲『マーベルズ』
カート・ビュシーク[作] アレックス・ロス[画]
定価:2,300円+税
●小社より発売中●
アレックス・ロスのアートでマーベルが読める!

ではまた!


(文責:山本将隆)