2014年3月31日月曜日

新サーガ第二部『バットマン:ブルース・ウェインの帰還』

みなさん、こんにちは!

話題のバットマン新サーガ第二部、今月は第二弾バットマン:ブルース・ウェインの帰還』の登場です。超特大ボリュームの『バットマン&ロビン』に比べるとスリムな1冊ですが、あなどるなかれ。ライターは前作に続いてグラント・モリソン。ただの続編ではない、一筋縄ではいかない作品になっています。
『バットマン:ブルース・ウェインの帰還
グラント・モリソン[作]、クリス・スプラウス他[画]
定価:2,300円+税
●小社より発売中●
ということで、今回はこちらの作品を激推ししたいと思います。では、まず前作との関係性から。

バットマン:ブルース・ウェインの帰還』は、2010年に全6号のリミテッド・シリーズとして、『バットマン&ロビン』と並行して刊行されました。『バットマン&ロビン』では、ディック・グレイソン(元ナイトウィング)とダミアン・ウェインという新生ダイナマイト・デュオの活躍が描かれましたが、一方、本書では、元祖バットマンであるブルース・ウェインがその頃何をしていたかが描かれます。そして最終的に、これら2誌で描かれた物語が合流することになるのです。


さて、肝心の“何をしていたか”ですが、これについては本編のカバーアートをいくつか見ていただくのが一番いいでしょう。
▲原始人バッツ!
▲海賊バッツ!
……どうです? 気になりませんか?
(作品完結後まもなく、DCコミックスの関連会社であるDCダイレクトから、本作をテーマにしたアクション・フィギュアのシリーズが発売されますが、それも納得!)


ざっくり説明すると、ブルース・ウェインはタイムトラベルをして、いろんな時代でこんなふうに活躍するのですが、そこはグラント・モリソン、物語にはさらに仕掛けが施されています。


原始時代……大航海時代……西部開拓期と時間をさまようブルースは、各時代に存在するDCユニバースのキャラクターと次々と遭遇するのです。たとえば、西部劇の時代に迷い込んだ彼は、ウェスタン・コミックの名物キャラ、あの“ジョナ・ヘックス”(2010年の映画化は残念な結果でしたが)と相対すことに……。コミックの歴史を自家薬籠中のものにした、モリソンらしい遊び心に思わずニヤリ。“アメコミってスーパーヒーローだけじゃないんだなあ”とあらためて思わされます。


その他にも、作中のちょっとしたエピソードが時間を超えて『バットマン&ロビン』につながっていたりもするので、2冊そろえて読み比べていただければ、きっと興味深い発見があるかと思います。かくいう自分も、果たしてどれだけ理解できているのか、まだ自信がありません……。

ところで、本書には『バットマン&ロビン』でも個性的なアートを披露したフレイザー・アービングをはじめ、何人もの気鋭のアーティストが参加していますが、今回はカバー・アーティストに注目してみたいと思います。そう、先ほど紹介したイラストを手がけた、アンディ・キューバートです。

いわゆるアメコミ業界のなかでも、アンディ・キューバートを輩出した“キューバート一家”は、マーベル・コミックスを根城にする“ジョン・ロミータ一家”と並ぶ名門といえるでしょう。なにせ、父親のジョー・キューバート2012年に永眠……合掌)は1940年代から戦争コミックを中心に活躍した大ベテラン(サージャント・ロック、エネミー・エースの共同考案者!)。アンディと兄のアダム90年代のX-MEN関連誌で名をはせたスター・アーティスト。そして父親が設立したコミック学校“キューバート・スクール”は、アラン・ムーアとの仕事で知られるリック・ビーチ、“パワーガールといったらこの人”のアマンダ・コナーをはじめ、ジャンルを問わずコミックの第一線で活躍するアーティストを数多く育成してきたのですから。

本書にはそんなアンディの手がけたカバーアートが6点収録されていますが、ぜひ見ていただきたいのは、巻末特典として収録されたキャラクターのスケッチ“もしバットマンが○○○だったら……”というコンセプトで、細部までバットマン的な要素にこだわったデザイン……ある意味バカバカしいともいえるアイディア(失礼!)に取り組む、徹底的な姿勢……トップに立つプロの凄さを垣間見ることができます。

あ、ちなみに日本オリジナルのふろくとして、「邦訳“バットマン”の手引き」も収録されています。小社刊行のバットマン作品を時系列と内容で、できるかぎりわかりやすく並べた力作年譜。ぜひお役立てください。

本書を読んで、コミック史を自在に行き交うグラント・モリソンの語りに魅了された方におすすめなのが、『バットマン:ブラックグローブ』。1950年代の忘れられたスーパーヒーロー・チーム“ヒーロークラブ”を、思いも寄らぬ形で蘇らせています。作画にはアラン・ムーアとのプロメテア』日本版発売も間近に迫るJH・ウィリアムズⅢも参加


そしてカバーアートを通じてアンディ・キューバートに興味を持った方には、本編の作画を手がけた『バットマン・アンド・サン』を……とも思いましたが、あえてお兄さんのほうを。『スーパーマン:ラスト・サン』では、スーパーヒーロー映画の古典、1978年版『スーパーマン』の監督リチャード・ドナーと、いまやDCの重鎮となったジェフ・ジョーンズ(かつてドナーのインターンでした)の脚本による怒涛のストーリーを、アダム・キューバートが見事に活写しています。兄弟の画風を比べるのも、アメコミらしいマニアックな楽しみかと。 


バットマン新サーガ第二章もいよいよ大詰め。物語はグラント・モリソンの手を離れ、さまざまな作家チームの手によって展開されます。来月発売の最終巻『バットマン:ブルース・ウェインの選択、ぜひお楽しみに。




ではでは、今日はこのへんで。


(文責:中沢俊介