2014年11月17日月曜日

その一瞬を手にしたい……スパイダーマン、待望の邦訳!

「アメコミ魂」読者のみなさま、こんばんは!

今回ご紹介するタイトルは『スパイダーマン:ワン・モーメント・イン・タイム』です!
▲『スパイダーマン:ワン・モーメント・イン・タイム』
ジョー・カザーダ[作]
パオロ・リベラ[画]
定価:本体2,000円+税
●12月19日頃発売予定●
本書は、メリー・ジェーンが突然ピーターの部屋に訪ねてくるところから始まり、二人で『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』で起きた、過去を振り返るという展開で進行していき、そのときのエピソードを補足するサイドストーリーとなっています。

そして、一つだけ未だに解決されていない疑問である「コミック史上、最大のイベント」だったピーターとメリー・ジェーンが結婚しなかった経緯が描かれています。「アメコミ魂」の読者さんはご存知かもしれませんが、『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』をおさらいすると、永遠に続くはずだったピーターとMJの愛は、悪魔メフィストによって一瞬にして終わりを告げます。

これは、メフィストが二人の弱みにつけ込み、メイおばさんの命と引き換えに“二人の結婚”をなかったことにするという取引を持ちかけ、二人はそれに応じてしまうことで、歴史が改変されてしまうという内容です。ただし、このピーター・パーカー/スパイダーマンの人生に一つのピリオドが打たれる物語は、決して終点ではなく、通過点に過ぎません。

なぜならば、『スパイダーマン:ブランニュー・デイ』という新設定による再スタートにつながるからです! 『ブランニュー・デイ』以降の主な設定変更としては、ピーターとMJが結婚していないこと、スパイダーマンの正体は世間の人々に知られていないこと、ピーターはクモ糸を出すときに手首から直接出すのではなく、ウェブシューターを使う、死んだハリー・オズボーンが復活していることなどがあります。
▲『スパイダーマン:ブランニュー・デイ 1』
ダン・スロット他[作]
フィル・ヒメネス他[画]
定価:本体2,100円+税
●好評発売中!●
このように、スパイダーマンを語る上できわめて重要な『ワン・モア・デイ』から『ブランニュー・デイ』へとつながるミッシングリンクを埋めるのが、本作品となります。
▲『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』
J・マイケル・ストラジンスキー[作]
ジョー・カザーダ[画]
定価:本体1,900円+税
それでは、本書のあらすじをご紹介します。

メイおばさんの命を救うために、自分たちの結婚を諦めたメリー・ジェーンとピーター・パーカー。ついに、結婚式当日の出来事が語られる……
メリー・ジェーンがメフィストにささやいた内容とは? メイおばさんはどのようにして生き返ったのか? そしてメリー・ジェーンとピーター・パーカーの関係を決裂させた出来事とは?

『ワン・モア・デイ』で語られることのなかった数々の謎の答えが、今ここに明らかとなる!

うーん。やはり気になる内容ですよね。
ストーリーもところどころに旧作の引用があったり、『ワン・モア・デイ』の場面が出てくることで上手く過去エピソードとの関連が紐付けられており読みやすい工夫がなされています。

さらに注目したいのが、各章のサブタイトルです。本書は全4章から構成されていますが、それぞれの章が結婚式における欧米の慣習である“サムシング・フォー”にちなんでつけられています。“サムシング・フォー”とは、結婚式で花嫁が身につけると幸せになれるという4つのものをさします。そして、各章をそれらに当てはめて読んでみると、ストーリーもそのコンセプトに合っているような気がしました。

個人的な解釈ではありますが、簡単に触れますと……

・第1章:サムシング・オールド 
“なにか一つ古いもの”ということにかけて、ストーリーではピーターのMJとステイシーに対する恋愛感情の葛藤を描いています。

・第2章:サムシング・ニュー 
“なにか一つ新しいもの”では、MJがピーターに今まで語ることのなかった新しいエピソードがフューチャーされています。

・第3章:サムシング・ボロー 
“なにか一つ借りたもの”としては、スパイダーマンの正体が自分であるということを、世間から忘れさせたいという願望を抱くピーターがドクター・ストレンジの力を借りる場面となっています。

・第4章:サムシング・ブルー
聖母マリアのシンボルカラーである青、つまりは“純潔”をあらわす意味ですが……最終章は是非、ご自分の目でお確かめください。サブタイトルにぴったりのストーリーとなっております!

各章のトビラには収録作品のカバーアートも入っていますので、そちらも合わせてお楽しみいただけます。中でも、第2章のトビラになっているカバーアートはウェディングケーキの上に、スパイダーマンとMJの人形がデコレーションされているのですがケーキをカットしているナイフに血痕のようなものが付着しているという、二人の愛の運命を象徴しているものになっておりかなりのインパクトを受けました。

巻末には、バリアント・カバーのアートギャラリーも収録しており、こちらはもう一人の主役であるMJにフォーカスしたものになっています。

スパイダーマンの華麗なアクションシーンはもちろんですが、やはり本作が面白いところは、ピーター・パーカーという一人の男としての苦悩であったり、メリー・ジェーンのスーパーヒーローと結婚するということの重圧を、それぞれの視点でドラマチックに描いているところだと思います。

恋人や家族と過ごす時間が増える、年末のホリデイシーズンにぴったりの一冊となりました。『スパイダーマン:ワン・モーメント・イン・タイム』、発売は12月19日頃を予定しています。女性の方にも、是非読んでいただきたい、いつもとはまた違ったスパイダーマンをお楽しみいただければ幸いです。

最後に今週末開催されます、『リトル・ニモ』に関するイベントをご案内させていただきます。
詳細につきましては、下記をご確認ください。

〈からだと文化〉ウィンザー・マッケイ マンガとアニメの天才

アメリカのマンガ・アニメーションの父として知られ、今年没後80年を迎えたウィンザー・マッケイ。
現代の視覚文化の成り立ちを考える上で、きわめて重要な位置を占めるその多彩な仕事をめぐり、「見る」ことと「からだ」をテーマに発表と討論を行います。

【日時】2013年11月22日(土)13:00~17:00
【会場】学習院大学 西2号館501教室(東京・目白)
http://www.gakushuin.ac.jp/mejiro.html
【主催】学習院大学人文科学研究科身体表象文化学専攻
【共催】学習院大学文学会
【申込】不要 ※当日時間までに会場にお越し下さい。
【受講料】無料
【内容】
■第1部:発表
夏目房之介(テーマ:マンガ「リトル・ニモ」をめぐって)
細馬宏通(タイトル:アニメーション「リトル・ニモ」「恐竜ガーティ」の奥行きと身体性)

■第2部:討論・質疑応答
夏目房之介、細馬宏通、佐々木果(司会)

「アメコミ魂」では、過去に『リトル・ニモ』に関する記事を掲載しました。こちらもチェックしていただき、ご興味のある方は、是非会場まで足を運んでいただければと思います。
過去のブログ記事はこちら

それではまた次回に。


(文責:渡辺直経)