2015年3月30日月曜日

スチームパンク愛好家必携の『スチームパンク・バイブル』

「アメコミ魂」読者のみなさま、こんばんは!

今月は新刊タイトルが6冊と多くありましたが、その中からアメコミではない一冊『スチームパンク・バイブル』をご紹介したいと思います!
『スチームパンク・バイブル
ジェフ・ヴァンダミア[作] S・J・チャンバース[作]
定価:本体3,400円+税
●好評発売中!●
“スチームパンク”とは、サイエンス・フィクションやファンタジーのサブジャンルの1つで、1980年代から1990年代初めごろまで特に人気を博しました。

物語の設定として、蒸気機関ヴィクトリア朝のイギリス西部開拓時代のアメリカを舞台とすることが多く、その中にSFやファンタジーの要素を組み込んでいます。

代表的な作品の一例として、小説では、ジュール・ヴェルヌによる『海底二万里』やアーサー・コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』が挙げられ、アニメ作品には、『スチームボーイ』『天空の城ラピュタ』『鋼の錬金術師』などがそれにあたります。

本書は、創始者ジュール・ヴェルヌとH・G・ウェルズの作品をピックアップしながら、スチームパンクという言葉を作り出し、文学のジャンルとして築いた作家たちにクローズアップしその歴史解説やルーツを探っていきます。

また、衣装や装身具といったファッションの世界芸術音楽などライフスタイルに関する側面もイラストや写真など、多数のビジュアルを用いて紹介しております。

ここで、スチームパンク愛好家、“スチームパンクス”の7つのサブジャンルを簡単にご紹介します。それぞれ下記のような特徴を持っていますが、どれか一つでもその世界観に興味があるようでしたらあなたも立派なスチームパンクス!?

1.ボイラーパンク
これは貴族に対抗した労働者が生んだもので、石炭を掘ってスチームパンクには欠かせない蒸気を作り出しました。
蒸気機関車はもちろん、蒸気で動く飛行船や象などもスチームパンクには登場します。

2.クロックパンク
ボイラーパンク同様、スチームパンクに欠かせない要素のひとつである時計仕掛けを指します。
時計を構成する歯車は象徴的なデザインであり、ファッションの道具として懐中時計はマストアイテム。

3.ディーゼルパンク
ディーゼルパンクは比較的新しいサブジャンルで、蒸気がディーゼル燃料や原子力に取って代わられたことから発生しました。
これにより、ロケットシップや大きな建築物も作ることが可能となります。その夢は遙か宇宙まで広がっていきます。

4.ガスライト・ロマンス
ファッションにヴィクトリア朝を取り入れ、主に英国人にて構成されています。
紳士スタイルは、ネクタイを締めて、葉巻とブランデーを片手に。淑女はボタンの付いたロングブーツを履き、紳士にようにタキシードを着てステッキを持てば完璧です。

5.マナーズパンク
パーティ、または大邸宅での舞踏会を楽しむジャンル。
たくさんのジュエリーやアクセサリーを身につけて、独創的なファッションに飾り立てます。

6.レイアガン・ゴシック
アール・デコと流線形の近代的なデザインを特徴とするレトロフューチャーなスタイル。
このようなコンセプトは、映画やさまざまなSFの舞台に登場します。

7.スティッチパンク
スチームパンク構成要素の中でも、DIY精神や手工芸をテーマにした内容。
ファッションも、工具類をしまうポケットがたくさん付いた機能性を重視したものになっています。
またスチームパンクのイメージでもある、ゴーグルは必需品です。

ファッションや小道具において、DIYという精神がとても重要なスチームパンクですが、
本書の中では実際にブリキ缶へエッチングを行うというプロジェクトが紹介されています。

これはスチームパンクに関わるプロジェクトは必ずしも、大規模である必要はなく、大切なのはみんなが参加できることをモットーに必要な道具から下準備、絵柄の作成、印刷、転写など各ステップを写真入りで丁寧に説明してくれています。

一人で挑戦するにはちょっと、難しそうですが友達と一緒に作ってみたい気になります。
仲間のスチームパンクスと一緒に、エッチングを施したオリジナルのミント缶を持ってたらちょっとお洒落かもしれません。

また、コミック関係ですとアラン・ムーアマイク・ミニョーラもその作風にスチームパンクの影響をみることができます。

ミニョーラの代表作『ヘルボーイ』の巨大な右手や、敵として登場するバイオメカニカル・クリーチャーもスチームパンク的装置として参考にしたそうです。
こうして見ると、アメコミとも実はつながっていますね。

そして、関連という点でいえばNHK Eテレで放送している「ムジカ・ピッコリーノ」という子ども向け番組。それまでは、特に気にとめることもなく子どもと視聴していましたが、本書に携わることで出演者の衣装や世界観がスチームパンクであることが分かりました。

その他、音楽ではスマッシング・パンプキンズの「Tonight, Tonight」のPVもまさにスチームパンク全開!

このように、様々なジャンルに影響を与えているスチームパンク
その全てを理解するのに最適な『スチームパンク・バイブル』は好評発売中です!

すでにゴーグルを装着しているスチームパンクスの方も、これからスチームパンクスの仲間入りを考えている方もぜひ本書を手に取っていただき、レトロで新しい、不思議なジャンルをお楽しみください。

それではまた次回に。


(文責:渡辺直経)

2015年3月23日月曜日

トランスフォーマー伝説の新たなる幕開け……『AHM』!

皆様、お待たせしました!

待望の日本版もそろそろ店頭に出そろった頃、ということで、今回は『トランスフォーマー:オール・ヘイル・メガトロン』をご紹介させていただきます。
『トランスフォーマー:オール・ヘイル・メガトロン』
シェーン・マッカーシー他[作] グイド・グイディ他[画]
定価:本体3,800円+税
●好評発売中!●
昨年、誕生から30周年を迎えたトランスフォーマー。日本のミクロマンやダイアクロンといったトイラインの変形ロボットを、アメリカで独自にブランドづけして売り出して……と、その起源はなかなか複雑ですが、テレビアニメ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』とともに1985に上陸すると、日本にもすぐ定着しました。それ以降もトイの展開はもちろん、日本オリジナルのアニメシリーズが何作も作られたり、『ビーストウォーズ』のように当時最新の3DCGアニメとして蘇ったりして常に新たなファンを獲得し、2007から始まったハリウッド映画版は、いまや超大作映画として定番のシリーズになっています。

そんなトランスフォーマー、じつはアメコミとしても非常に人気のあるタイトルなのです! トイやテレビアニメに負けない歴史を持っているアメコミ版トランスフォーマー。これまでアメリカやイギリスで数多くの作品が刊行されてきましたが、その中でもかねてから日本版を求める声が高かったのが、今回ついに発売された『オール・ヘイル・メガトロン』。それでは、どんな物語かといいますと……

ロボット生命体トランスフォーマーたちは長年にわたって、正義の戦士サイバトロン悪の軍団デストロンに分かれて熾烈な戦いを繰り広げていた。 だが、ある日ついに決着がつく。勝ったのは……だった。地球で破壊の限りを尽くす、破壊大帝メガトロン。じつは悪の勝利の影には、あるろしい秘密があった。壊滅的な打撃を受け、惑星セイバートロンに幽閉されたサイバトロンと総司令官コンボイは再び立ち上がることはできるのか? そして人類の運命は……!?

あらすじを読んで、“あれっ?”(または“おっ!”)と思った皆様、さすがです!

今回の『オール・ヘイル・メガトロン』、イメージ源になっているのがトランスフォーマー・シリーズの原点であるジェネレーション1G1、とくにテレビアニメ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』を中心にした世界観なのです。なので、本作につきましては、キャラ名などはG1系の呼称にて統一させていただきました。では次に、どんなキャラクターが登場するかというと(カッコ内に英語名を表記)……

サイバトロン戦士(オートボット) 
コンボイ(オプティマス・プライム)総司令官。リーダーの証であるマトリクスの所有者。
プロール戦略家副官として常に冷静に戦局を判断している。
マイスター(ジャズ)エージェント。高い戦闘力を持ち、同胞からの信頼も厚い。
アイアンハイド警備員。コンボイの旧友で、ボディガード的な存在。 
バンブル(バンブルビー)情報員。小柄ながら勇敢で、人間にも好意的。 
チャー(カップ)戦士。長い戦いを生き抜いた、経験豊かな歴戦の勇者。

デストロン軍団(ディセプティコン) 
メガトロン破壊大帝。全宇宙を支配するデストロン帝国の建造を目指す。
スタースクリーム航空参謀。軍団のナンバー2だが、常にメガトロンの座を狙っている野心家。
サウンドウェーブ情報参謀カセットロン部隊を操り、メガトロンの信頼も厚い忠臣。
アストロトレイン輸送参謀SLとスペースシャトルに変形するトリプルチェンジャー
ボンブシェル心理工作兵。底知れぬ邪悪さを秘めた、インセクトロン(インセクティコンズ)の一員。
デバスター(デバステーター)ビルドロン部隊(コンストラクティコンズ)6体が合体した巨人兵。圧倒的な破壊力を持つ。
……これでも、ごくごくほんの一部!

たとえば、2014年の映画『トランスフォーマー/ロストエイジ』に登場し、俳優の渡辺謙が声を担当した侍トランスフォーマー、ドリフトも本書が初登場となるのでお見逃しなく。また、映画版とG1アニメ版どちらのファンにもおなじみ“ウィトウィッキー”姓を名乗る人間が、それらとは違った立場で物語にからんでくるのも要注目です。

アメコミとしてのトランスフォーマーは、まずあのマーベル・コミックスにて、トイやアニメと同じ1984に始まりました。その後、カナダの出版社ドリームウェーブ・プロダクションズで新たなシリーズが2002に立ち上げられたのですが、会社の倒産によって3年足らずで中断。そこで宙に浮いたコミック化権を得たIDWパブリッシングが、2005からトランスフォーマー・コミックの出版を開始しました。

そして創刊から3年ほど経った2008IDW版は一つの転機を迎えます。それまでのストーリー展開をひと段落させ、新規読者を呼び込むために物語の仕切り直しを図ったのです。こうして生まれたのが『オール・ヘイル・メガトロン』――ということで、まさにアメコミ版トランスフォーマーへの新たな入口にピッタリ! 総ページ数500ページに及ぶ本書は、本編はもちろん、外伝も収録した完全版となっています。

現在も『モア・ザン・ミーツ・ジ・アイ』『トランスフォーマーズ』(最近『ロボッツ・イン・ディスガイズ』から誌名変更)という二つの雑誌を中心に、順調に続いているIDW版トランスフォーマー。すでに10年近い歴史を持ち、G1系の他にも映画版、G1以外のアニメ版を元にしたコミック、そして他社作品のリイシューなど、魅力的なタイトルはまだまだあります。本書が、豊かな広がりを持つトランスフォーマー・アメコミの日本での新たな出発点になれるように、応援のほど何卒よろしくお願いいたします!

それでは、今日はこんなところで。


(文責:中沢俊介)

2015年3月16日月曜日

短編集『デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション』

「アメコミ魂」読者のみなさま、こんばんは!

『デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション
ジェイソン・アーロン、マイク・ベンソン他[作]
カイル・ベイカー、ロブ・ライフェルド他[画]
定価:本体2,400円+税
●好評発売中!●
今月は新刊タイトルがたくさんありますが、その中から今回ご紹介するタイトルは『デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション』です!

「アメコミ魂」の読者さんはご存知かもしれませんが、あらためて“デッドプール”を紹介しますと、本名はウェイド・ウィルソン

極秘の超人兵士計画「ウェポンX」の参加者であり、X-メンのウルヴァリンから抽出されたヒーリング・ファクターを注射されたことで超回復能力を取得した、まさに「再生可能で更正不可能な男」デッドプールです。

彼は、金次第ではヒーローにもヴィランにもなるクレイジーな傭兵で、通常の人格の他に二つの人格を持つ多重人格者です。

過去、弊社はデッドプールに関しては単独誌初邦訳『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』、パニッシャーやデアデビル、スパイダーマンといった強力なゲスト出演キャラクターとのやりとりが超ご機嫌な『デッドプール:スーサイド・キングス』を刊行してきまして、第3弾の本書は、なんと傑作短編集となっております!

収録されている作品はどれも読み切りで、レギュラーシリーズにおけるストーリー展開とはリンクしていないため予備知識なしで、気軽にデッドプールを楽しむことができます。

また、さまざまなライターやアーティストがデッドプールをいろんな角度から表現している点も、短編集ならではの楽しみ方ができると思います。

それでは、収録作品を簡単にご紹介したいと思います。

・『デッドプール』#900

まず#900というナンバリングに驚く本作は、いきなりデッドプールがUFOに拉致され、エイリアンお得意の身体検査の危機に直面するという展開で幕を開けます。

さらには、豪華客船でのクルーズ中にあのドクター・オクトパスと卓球勝負を挑む話も見逃せません。人工触手による複数のラケットさばきを前に、デッドプールはどのように立ち向かうのか!?
その勝負の行方は、ぜひご自身の目でご確認ください!

後半は、さまざまなマーベル・キャラクターとの共演を果たしている『デッドプール・チームアップ』というシリーズも併録されています。

物語の舞台は日本! しかもデッドプールの過去を振り返るストーリーなのですが、な、なんと! 相撲部屋に入門し“千代の酒”という四股名を与えられた力士だったということが発覚します……。

・『デッドプール』#1000

こちらは、全編描き下ろしの11話からなる特大号の収録になります。どのエピソードもデッドプールの魅力が満載ですが、個人的には『デッドプールが多すぎる』に是非ご注目いただければと思います。

デッドプールの尿から捕獲したDNAから、さまざまなデッドプールが製造されるという内容です。どんなデッドプールが登場するかは、ぜひお楽しみに!
他のページとは、全く違うコミカルな作画も含めてきっとお気に入りになることでしょう!?

・『キャプテン・アメリカ:フー・ウォント・ウィールド・ザ・シールド(シールドを持たないのは誰か)?』

『キャプテン・アメリカ・リボーン』のエピローグにあたる、『キャプテン・アメリカ:フー・ウィル・ウィールド・ザ・シールド(誰がシールドを持つのか)?』のパロディとのことですが、ストーリーの関連性は限りなく低いそうです(笑)。

・『デッドプール:メリー・フリーキン・クリスマス!!』

マーベル公式サイトで公開された、デジタルコミックです。
なんと、デッドプールがサンタクロースを暗殺するため北極に潜入するというストーリー。デッドプール VS サンタクロースのバトルに、スノーマンも侵入して大混乱。
クリスマスは一体どうなっちゃうのでしょうか!?

いろんなバラエティに富んだデップーな物語をたくさん収録した本書は、まさにデッドプールワールド全開です!

また、本書の特徴はもう一つあります。
それは、デッドプール本人曰く“1,000冊の歴史のなかから俺ちゃんの超カッコいいアートを厳選した”(1,000冊はもちろん、ジョークです!)という巻末のバリアントカバー・ギャラリーです。

スパイダーマンやソー、キャプテン・アメリカにデアデビル。さらにはファンタスティック・フォー、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー、ハルクやアイアンマンなどのマーベルキャラクターの面々をパロディ化したアートの数々は必見です!

もっと、今以上にデッドプールが好きになるはずです。

デッドプールという、マーベルユニバースのなかでも一風変わった超人気キャラクター
彼の魅力を存分に楽しめる『デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション』は好評発売中です!

これからデッドプールに触れる方も、すでにデップデプな往年ファンもぜひ手に取っていただき、“俺ちゃん”物語を楽しんでいただければと思います。

本書を通じて、デッドプールの魅力にノックアウトされてしまった読者のみなさん、ぜひ既刊の『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』『デッドプール:スーサイド・キングス』もチェックしてみてください!

期待を裏切らない、“俺ちゃん”がそこにいます。

それではまた次回に。


(文責:渡辺直経)

2015年3月9日月曜日

『フラッシュ:新たなる挑戦』から始める“ニュー52”

こんばんは!

ShoPro Booksアメコミ新刊、今月は刊行タイトルがいろいろと盛りだくさんです。期待の1冊はもうお手元に届きましたか? 今週のアメコミ魂は、その中から『フラッシュ:新たなる挑戦』をご紹介します!

▲『フラッシュ:新たなる挑戦(NEW 52!)』
フランシス・マナプル[作・画]
ブライアン・ブッチェラート[作・画]
定価:本体2,000円+税
●好評発売中!●
世界最速の男“フラッシュ”

セントラルシティ警察の科学捜査官バリー・アレンは、ある嵐の晩に稲妻と化学薬品を浴びたことで超高速移動の能力を身につけた。異次元のエネルギー「スピードフォース」を使いながら、彼はスーパーヒーロー“フラッシュ”として悪と戦っている……。

日本ではまだそれほどまでは知名度の高くない“フラッシュ”ですが、DCコミックスでは1940年に登場した歴史あるヒーローです。

当然アメリカでの人気は高く、これまでにも何度かのドラマ化&映画化されており、最近では2014年最新テレビドラマが放送されたほか、まだ少し先ですが2018年には新作映画も公開予定になっています。

そんな、いま話題沸騰中のDCヒーロー“フラッシュ”

本書『フラッシュ:新たなる挑戦』は、DCコミックスの最新シリーズ“ニュー52”のひとつとして、2011年9月に創刊された『フラッシュ』第4シリーズの#1~8を収録しています。

主人公のバリー・アレンは、“フラッシュ”としては二代目。これまでに4人のキャラクター“フラッシュ”として活躍していますが、ファンからの根強い人気を受けて、ニュー52ではバリーが活躍することになりました。

アメコミの作画というと「ちょっと太めの線濃いめの彩色」というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、『フラッシュ:新たなる挑戦』では、筆先のような強弱を付けた繊細なラインにふんわりとやさしいタッチの彩色、さらに大胆に2ページを見開きで使用したコマ割り、などと意表を突かれたような感じでした。本書を読み進めるうち次第に、バリーの正義感やその繊細な心情を感じたり、登場するヴィランたちの「凶悪」というよりも「どこか人間臭い」感じがにじみ出ているようです。

そんな本書の作画は、アーティストがフランシス・マナプル、カラリストがブライアン・ブッチェラートというコンビ。2人の作画コンビはニュー52以前のシリーズでも『フラッシュ』を担当しており、ニュー52からは脚本も2人の共作となりました。
イラストにも定評のあるコンビが綴る『フラッシュ』、本作では「いいひと」という印象のバリーですが、今後さらに活躍するストーリーや、これまでに登場したヴィランたちがどのように関わってくるか、などなど今後の展開から目が離せません!

“ニュー52”スタートのきっかけとなる出来事「フラッシュポイント」も、フラッシュが大きな役割を果たしています。

DCコミックス入門編の1冊として、もしくは今後のニュー52の行く先を知るための1冊として、アメコミ初心者の方からコアファンの方までみなさんにもっと知って欲しいヒーローコミックが誕生しました!

ところでこの『フラッシュ:新たなる挑戦』、もちろん1冊で楽しめる内容ですが、“ニュー52”の他のヒーローたちとの関連を知るとより面白くなること間違いナシです。
『ジャスティス・リーグ:
誕生(THE NEW 52!)』
ジェフ・ジョーンズ[作]
ジム・リー[画]

定価:本体2,000円+税
●好評発売中●

ヒーローチーム“ジャスティスリーグ”の結成秘話を描いた、小社刊『ジャスティスリーグ:誕生』の表紙をよく見てみてください。左下に……そう、フラッシュがいるんです!

店頭だと帯に隠れて目立たないかもしれませんが、ここにいることを思い出してからこの本をめくると、P1からあの深紅のスピードスターがいることに気づきます。

セントラルシティ警察の科学捜査官という立場から慎重な態度や、高速移動の能力でスーパーマンと渡り合う姿はなかなかの存在感。ぜひ応援してください。

▲『ジャスティス・リーグ:
魔性の旅路(THE NEW 52!)』
ジェフ・ジョーンズ[作
ジム・リー[画]
定価:本体2,000円+税
●好評発売中●
この『ジャスティスリーグ:誕生』は“ニュー52”の中でも「5年前」にあたる出来事。

それから5年後、という時間軸で起きている出来事がニュー52のストーリーにおける現代です。

小社刊行の作品では、『ジャスティスリーグ:誕生』を起点に、『ジャスティスリーグ:魔性の旅路』『ジャスティスリーグ:アトランティスの進撃』といった続編と平行して、『バットマン』梟三部作や先月発売の『シャザム!:魔法の守護者』、そして今回の『フラッシュ:新たなる挑戦』が、みな同じ時期に起こっていると考えてください!

そう思って『ジャスティスリーグ:魔性の旅路』を読み直してみると……バリーの同僚、パティ・スピボットの名前が出てきたり、『バットマン:梟の法廷』で語られる暗殺者 タロンとの戦いのワンシーンも登場。

▲『ジャスティス・リーグ:
アトランティスの進撃(THE NEW 52!)』
ジェフ・ジョーンズ他[作]
アイヴァン・リース他[画]

定価:本体2,000円+税
●好評発売中●
続く『ジャスティスリーグ:アトランティスの進撃』では登場シーンはないものの、連絡がつかないフラッシュについて「今、ゴリラと戦っている」なんてセリフも。改めて、ヒーローたちの繋がりを見つけることができます。

『ジャスティスリーグ』の三部作について、もっと内容が気になる方は、2014年のアメコミ魂「『JL:アトランティスの進撃』で今後のDC映画祭りを予習」もあわせてお読みください!

DCコミックス奥深い世界観に触れる最初の一歩に、『フラッシュ:新たなる挑戦』オススメします!

そうそう、ニュー52では各作品に姿を見せている謎の女性「パンドラ」がいます。『フラッシュ:新たなる挑戦』ではどこに登場しているのでしょうか……? 見つけられますか?

これまで「ShoProのアメコミは『バットマン』ばかり……」という印象がありましたが、ニュー52のタイトルもだんだんと増えてきました。好みのタイトルは見つかりました?

刊行されているDCタイトル全て網羅!とまでではまだまだありませんが、今後もどしどしラインナップを充実させていけたら、と考えています。

邦訳希望のタイトルその他ご要望などありましたら、ぜひご意見メールTwitterでのメンションなどいただけたら嬉しいです!

それでは今週はこのへんで!


(文責:石割太郎)

2015年3月2日月曜日

世界最悪の新ヒーロー?『クァンタム&ウッディ』登場

みなさん、こんにちは!

ただいま一部で熱狂的な支持を集めている注目作が、待望の日本上陸!……ということで、今回は『クァンタム&ウッディ:世界最悪のスーパーヒーロー』(以下『Q&W』)をご紹介させていただきます。
▲『クァンタム&ウッディ:
世界最悪のスーパーヒーロー』
ジェームズ・アスムス[作]
トム・ファウラー[画]
定価:本体1,800円+税
●好評発売中!●
本作の主人公は、血のつながっていない二人の兄弟

エリック(カバーイラスト向かって:真面目な性格のアフリカ系アメリカ人。元軍人。現在は民間軍事会社の警備員。
ウッディ(カバーイラスト向かって:おちゃらけた性格の白人男性。幼い頃、エリックの父に養護施設から引き取られた。家を飛び出して以来、定職にもつかずにブラブラしている。
このように何から何まで正反対の二人。ある日、天才科学者だったエリックの父が何者かに殺され、葬式で久しぶりに顔を合わせても、さっそくケンカを始める始末です。しかし、事件の真相を究明しようと父親の研究所に忍び込んだ二人は、アクシデントに見舞われ、スーパーパワーを手に入れてしまいます。

エリック(ヒーロー名:クァンタム→量子エネルギーで防御バリアを作る。
ウッディ→指先からエネルギー・ブラストを発射。
研究所でひと騒動巻き起こした二人は、父親殺しの容疑者にされ、しかも、父親の研究の秘密を狙う組織にも目をつけられる羽目に。謎を追いながらも追われる身になった二人の運命やいかに?

かたやカタブツ、かたやトラブルメーカー――そんな二人の凸凹コンビぶりが本作の最大の魅力。破たんしているように見えながらも、ますます結び付けられてしまう関係性、ふだんはいがみ合いながらも、不思議と噛み合ってしまう相性のよさ――まさに“バディもの”の醍醐味を満喫できます。あと、ひょんなことから二人についてくることになる“ヤギ”カバーイラスト下にもご注目を。
翻訳を担当されたのは光岡三ツ子さん。じつは、本作は1997から2000にかけて刊行されていたカルト・コミックのリ・イマジネーション版なのですが、そんな旧シリーズからのファンだった光岡さんによる解説も含め、ぜひお楽しみください!

さて、Q&WDCでもマーベルでもない出版社――バリアント・エンターテインメントからのアメコミです。同社は2012から新作コミックの刊行を始めた新興の出版社ですが、“バリアント”という名前のコミック会社は過去にも存在しました。1980年代末期、マーベル・コミックスの元編集長を中心に立ち上げられたバリアント・コミックス(以下、旧バリアント)です。

1991からスーパーヒーロー系のコミックを出版するようになった旧バリアントは、大人びた内容と斬新な販売戦略で、間もなくDC/マーベルに次ぐ勢力として頭角を現し、翌年出版を開始した『スポーン』『ワイルドキャッツ』のイメージ・コミックスとともに、1990年代を象徴するコミック会社として一時代を築いたのです。90年代半ばにはコミック業界のバブル崩壊もあって失速してしまいましたが(一時期、ゲーム会社の傘下に入ってアクレイム・コミックスと改名)2000年代に入って、キャラクターの権利を買い取ったバリアント・エンターテインメントが再び新作コミックの出版に乗り出しました。Q&Wもそんな作品の一つです。では、バリアントには他にどんな作品があるかというと……

X-Oマノウォー』1600年前、宇宙人にさらわれた西ゴート族の戦士が、謎のアーマーを手に入れて現代の地球に帰還する。

『ハービンジャー』:世界征服を企む超能力者トーヨー・ハラダの施設から逃げ出した少年たちが、トーヨーの野望を阻止するために戦いを挑む!

『ブラッドショット』ナノマシンを注射されて超人的な戦士となった男。失われた記憶を求める彼を待ち受ける、戦いに次ぐ戦い……。

『アーチャー&アームストロング』:秘密結社に育てられた少年アーチャー。彼の使命は、メソポタミア文明の時代から生き続ける男アームストロングの抹殺だったが……?

そしてバリアントの作品は、すべて一つのユニバース内で展開しています。つまり、Q&Wも、じつは上記の作品群と同じ世界の出来事なのです!

これらの作品を皮切りに、バリアント・ユニバースにはシャドウマンエターナル・ウォリアーライといったキャラクターが加わり、2013年の“ハービンジャー・ウォーズ”2014年の“アーマー・ハンターズ”といったクロスオーバー・イベントを経ながら、順調に成長しています。圧倒的な歴史を抱えた大手2社とは対照的な、バリアントの“今、生まれつつあるユニバース”の動向は、アメリカのメインストリームでは、新旧どちらのファンにとっても見逃せないものになっています。

ところで、“大手2社のものでない”“バディもの”のアメコミといえば、小社からはR.I.P.D.アール・アイ・ピー・ディー』(ダークホース・コミックス)2ガンズ』(ブーム・スタジオ)が出ています。どちらも映画化作品。そういえば、まだ具体的な話はないようですが、Q&Wもドラマか映画になったら面白そうだなあ……なんて思ったりして。
ではでは、今日はこんなところで失礼します。


(文責:中沢俊介)