2015年10月7日水曜日

「アイズナー賞」「ハーベイ賞」って何?



皆様、こんにちは!

小社より日本版を発売しているコミック『サーガ』が、先日アメリカで発表されたハーベイ賞で、なんと3を獲得しました! ということで今回は、アメコミ界隈でよく名前を聞く2大賞である“アイズナー賞”“ハーベイ賞”について簡単に説明しつつ、先月日本でも発売された『サーガ3をご紹介させていただきたいと思います。

アイズナー賞ハーベイ賞は、もともと一つの賞でした。マーベル・コミックスで数多くのスーパーヒーローを共同考案したことで知られる、コミック界の偉人ジャック・カービーの名前を冠して、1985から始まった“カービー賞”です。ところが、3年ほど続いたところで体制に変化が生じて、その結果1988からアイズナー賞ハーベイ賞という二つの、似たようなコンセプトの賞が始まることになったのです。ちなみに、どちらもコミック業界人による投票で決められています。

●アイズナー賞フランク・ミラーが映画化した『ザ・スピリット』で知られるアメコミ界のパイオニア、ウィル・アイズナーの名前を冠する。毎年7に行われるサンディエゴ・コミコンにて発表。 

『サーガ』の受賞は……
2015年→2「コンティニュイング・シリーズ」「アーティスト/ペンシラー/インカー」
2014年→3「コンティニュイング・シリーズ」「ペインター/マルチメディア・アーティスト」「ライター」
2013年→3「ニュー・シリーズ」「コンティニュイング・シリーズ」「ライター」

●ハーベイ賞アメリカを代表するユーモア誌『マッド』での活躍などで知られるカートゥニスト、ハーベイ・カーツマンの名前を冠する。ここ10年ほどは毎年89に開催されるバルチモア・コミコンにて発表。

『サーガ』の受賞は…… 
2015年→3「コンティニュイング/リミテッド・シリーズ」「アーティスト/ペンシラー」「カバーアーティスト」 
2014年→4「コンティニュイング/リミテッド・シリーズ」「アーティスト/ペンシラー」「カバーアーティスト」「ライター」
2013年→6「ニュー・シリーズ」「コンティニュイング/リミテッド・シリーズ」「シングル・イシュー/ストーリー」「アーティスト/ペンシラー」「ライター」「カラー」

ちなみに小社関連では、以下の作品/作家も今年のハーベイ賞を受賞しています!・「インカー」→ダニー・ミキ『バットマン:ゼロイヤー』を担当)
『バットマン:
ゼロイヤー 陰謀の街』
定価:本体2,000円+税
●好評発売中!●
・「グラフィック・アルバム・プレビアスリー・パブリッシュド
(※描きおろしではない、再録単行本)

 『マウスガード:ボールドウィン・ザ・ブレイブ&アザー・テイルズ』(未邦訳のシリーズ最新短編集)
『マウスガード 1152年 秋』
定価:本体3,000円+税
●好評発売中!●

・「バイオグラフィカル/ヒストリカル/
 ジャーナリスティック・プレゼンテーション(※コミック関連の出版物等)」→『タートルズ大全』
『ミュータント タートルズ大全』
定価:本体3900円+税●好評発売中!●
以前はアイズナー賞→メインストリーム寄りハーベイ賞→いわゆるオルタナティブ・コミック寄り、といった印象がありましたが、近年ではそういうジャンル分けもあまり意味をなさなくなったからか、それぞれの違いや傾向は見えづらくなっているようです。とはいえ、2012に創刊して以来これだけ毎年両賞の制覇が続く『サーガ』、やっぱりスゴい作品なんだなあと。それでは、そろそろ3のご紹介をさせていただきます。

宇宙を二分する“羽人”“角人”両方の種族からの逃避行を続けるアラーナ一家。それを聞きつけ、これは特ダネになるとふんだゴシップ紙の記者コンビ、アップシャードフが関係者に取材を始める。その一方で、賞金稼ぎザ・ウィルとその一行も、着々とアラーナたちに迫っていた。そうとも知らず、アラーナたちは二人が結ばれるきっかけになった小説の作者、オズワルドと交流を深める。賞金稼ぎプリンス元婚約者……さらにマスコミまで動き出すなか、宇宙のお尋ね者となったアラーナたちと追手との対決の時が迫る!

本巻の見どころの一つとして、新たに登場した記者コンビの動きがあります。羽人の支配圏にいる種族なのですが、記者として真実をつかもうとアラーナ周辺の人々に聞き込みをすることで、読んでいる側も自然に作品世界の一端が垣間見られる仕組みになっています。さらに小説家オズワルドとのやりとりから人々の内面的な部分を描いて、一見途方もない世界に思わせつつも、そのなかに住んでいるのは間違いなく“人”なんだと感じさせ、ますますこの世界についてもっと知りたい!物語の先が気になる!と思わせてくれます。

数多くの賞を獲得しているのも、たぶん単純に“おもしろいコミック”だからなのではないかと……ということで、まだお読みになっていない皆様にも、ぜひご一読をお願いしたい作品です!
ではでは、今日はこんなところで失礼します。


(文責:中沢俊介)