2015年12月2日水曜日

ファン必携! スヌーピーが3Dに生まれ変わるまでの軌跡

「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!

邦訳アメコミの新刊情報をお伝えしている当ブログ。毎週、ほぼスーパーヒーロー作品をご紹介していますが、今回はちょっと目先を変えてお届けしたいと思います。
映画「I LOVE スヌーピーTHE PEANUTS MOVIE」の世界
ジェリー・シュミッツ [著] 富原まさ江 [訳] 定価:3,800円+税
今回、ご紹介したい書籍は映画『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』の完全ヴィジュアルガイド『映画「I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE」の世界』です。

チャールズ・M・シュルツが、新聞に『ピーナッツ』を連載し始めたのが1950年。それから実に65年にわたって世界中のファンを魅了してきました。スヌーピーやチャーリー・ブラウン、その他の愛すべき仲間たちが繰り広げる物語は、どなたでも一度はコミックやアニメを通して触れたことがあるのではないでしょうか?

その精神を忠実に落とし込みながら3DCGアニメにしたのが、映画『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』です。そして本書の著者ジェリー・シュミッツは、暖かみのあるシュルツの描線が、CGとして生まれ変わる過程を詳細に追いかけます。ここから、おおまかに3つにわけて本書の内容をご紹介していこうと思います。


 ①コミックの雰囲気を損なわずにCG化されたキャラクターたち
本作を手がけたクリエイターたちが、まず頭を悩ませたのはキャラクター造形でした。監督スティーブ・マーティノは、もともと2次元のキャラクターたちを3DCGアニメにする際に生まれる立体感が、違和感になることを危惧していました。彼はコミックの雰囲気がそのままスクリーンに投影されることを望んでいたのです。
▲チャーリー・ブラウンのキャラクター造形解説ページ。CGモデリングから髪型のディティールまで詳細に解説。
本書p30~31より



キャラクターデザインチームは、この監督の要望に応えます。彼らは、連載開始から現在にいたるまで変化しながら普遍的にあるデザインのエッセンスを抽出することに注力し、やがてその答えにたどり着きます。

そのキーワードは、“いつの時代のチャーリー・ブラウンを選べばいいか”。

難問はそれだけではありませんでした。ピーナッツのアイコンになっているスヌーピー。彼をただCGで再現すると、違和感が生まれてしまうのです。その原因はコミックで描かれていたスヌーピーは両目が片側に寄っていたからでした。

あくまで平面だから成立するこの特徴を、立体である3DCGにどのように落とし込むのか。本書ではその制作過程を詳細に解き明かしていきます。


②過去の名作を生かしてアニメーション化
さて、そのようにして生まれたキャラクターたちが、アニメーション、つまり動画になるにはどのような過程を経たのでしょうか? 

アニメーター・チームは、コミックの雰囲気を壊さずに絵を動かすために、コミックを精読していきます。しかし、そこからキャラクターの動きを正確に推し量ることは困難を極めました。

そこで彼らが参考にしたのが、ビル・メレンデスとリー・メンデルソンが制作した特別アニメ番組でした。1965年に初作品クリスマスだよ、チャーリー・ブラウンが制作されてからエミー賞を4度受賞し、コミックと並ぶ名エピソードを生み出してきたのが、この特別アニメ番組です。

キャラクターのポーズや身振りなどはコミックを参照しつつ、そこから生まれる仕草などの動きを生み出す上では、メレンデスとメンデルソンのアニメが残した功績が大きな役割を果たしました。


③3D、その他の特殊効果について
本作では、3Dが“スヌーピーのファンタジー世界”を再現するために効果的に使われています。
▲ステレオ3Dの解説ページ。デプス・スクリプト(奥行き台本)などを引用して、3Dができていく過程を紹介。
本書p169より

空想上の出来事であることを強調するために、3Dチームはセットを小さく描くことで独特の距離感を生みだしました。そのことによって、スヌーピーが空を飛び回るシーンでは、アコーディオン効果(物体がジグザグに伸縮する効果)による錯覚が生まれ、この場面に夢を見ているような効果を与えることができたのです。

 「映画の冒頭シーンで自分が一ファンとして見たいと思ったのは――きっと観客も同じだと思うが――“大丈夫、きっとうまくいくさ”という、あのお馴染みの雰囲気だった」
(本書p174より抜粋)

監督マーティノがこう語るように、他にも原作の質感や暖かみを再現するために、様々な工夫が凝らされています。

すっきりとしたシンプルなデザインの構築、衣服や肌の質感、季節や時間によって変化するライティング、『ピーナッツ』独自のコミカル表現(ピッグペンの土埃など)をデジタル表現のなかに落とし込むための工夫など、シュルツの描線を3DCGに落とし込むために繰り返された試行錯誤は枚挙にいとまがありません。
▲ライティングの解説ページ。室内、屋外、昼夜、季節などによって、またその組み合わせによって変化する照明設計。
本書p181より
ここまで、『映画「I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE」の世界』の内容をかいつまんでお伝えしてきました。後は実際に本書を手に取っていただいて、より深く掘り下げられたディティール、より豊かに語られる制作の裏側、クリエイターたちの映画化に向けた想いをくみ取ってください。きっと、『ピーナッツ』の歴史の記念碑になるであろう『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』の世界に没入できるハズです。


(文責・山口大介)