2016年2月15日月曜日

『クァンタム&ウッディ』第2巻、ホントに出します!

「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!

DCコミックスマーベル・コミックスの二強による寡占状態が続いているアメリカンコミックですが、ダークホース・コミックスイメージ・コミックスブーム!スタジオなどの中堅出版社からもユニークなコミックが刊行されています。

今回は、そのなかでも新興出版社バリアント・エンターテインメントから刊行されている『クァンタム&ウッディ』をご紹介します。一昨年、小社から『クァンタム&ウッディ:世界最悪のスーパーヒーロー』を刊行しました。

ちなみに原題には「THE WORLD’S WORST SUPERHERO TEAM」という副題がついています。アメコミファンのなかには、この文言にピンと来た人がいるかもしれませんが、これはアベンジャーズの「THE WORLD’S MIGHTIEST SUPERHERO TEAM」をもじったもの。名は体を表すという言葉どおり、従来のヒーローコミックの定石をことごとく外したアクションコメディ作品です。

もともとは90年代にアクレイム・コミックから出版されていたシリーズなのですが、同社の倒産にともない、シリーズは打ち切りの憂き目に遭います。コミック自体も絶版状態になり、なかば伝説化した作品だったのですが、一部のコミックファンの間でカルトな人気を集めていて、21世紀に入り再び版権が復活。新シリーズのスタートへと結びつきます。

さて、この『クァンタム&ウッディ』、もともとはどういうお話かというと、元のシリーズでライターを務めたクリストファー・J・プリーストと、アーティストのM.D.ブライトは、どちらもアフリカ系アメリカ人。作り手の出自もあり、主人公コンビのひとりは黒人に設定されました。裕福で堅物の黒人エリックと、ホワイトトラッシュ(白人貧困層)のウッディ、幼なじみの2人が互いの父の真相を探るうちにスーパーパワーを手に入れ、ヒーローになるのが当時の設定です。

ちなみにウッディの名前の由来は、俳優ウディ・ハレルソンにちなんでいて、ヴィジュアルも彼からインスパイアを受けていることがうかがえます。ハレルソンといえば『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994年公開)での怪演で注目を集めた後、多くのカルト作に出演しているベテラン俳優。やさぐれた演技に定評がある実力派です。いわゆるヒーロー像とはかけ離れた印象は、コミックのウッディ像にもぴったりはまります。

さて、これが新シリーズになると、ウッディはエリックの父デレクの養子になり、2人は義理の兄弟という関係に設定が変更されました。2人の関係性がより緊密になったことで、鬱陶しいのに離れることができない(離れられない理由は他にもありますが…)、いざというときにはガッチリとした信頼関係で結ばれるバディ物としての面白み、カタルシスが強化され、さらにコメディ要素も多くなり、よりエンターテインメント色が強くなったといえるでしょう。

それだけでなく、キャラクターの人種など、現代アメリカの世相をしっかりと反映し、設定面でもブラッシュアップが図られています。

カルトな旧シリーズ、それを引き継いだ新シリーズどちらもアメリカでは熱狂的なファンがいる作品ですが、それはここ日本でも同じです。

一昨年に『クァンタム&ウッディ:世界最悪のスーパーヒーロー』を刊行したところ、コアなアメコミファンの方々から熱狂的な支持を受けました。その後、続刊を希望する声が多く寄せられてきたのですが、他の作品との兼ね合いもあり、1年以上も音沙汰なしの状態でした。しかし皆さん、お喜びください。この度、3月9日頃からに第2巻『クァンタム&ウッディ:あぶないヒーロー、荒野に散る!?』が順次発売されます!
クァンタム&ウッディ: あぶないヒーロー、荒野に散る!?
ジェームス・アスムス[作] ミン・ドイル他[画]
定価:1,800円+税
◆2016年3月9日頃発売!◆
今回は、エリックが長年勤めた民間軍事会社で昇進したことにより、事件が勃発します。なぜ閑職に回されていたエリックが昇進したのか。そこにはとある計画が隠されていました。

2巻では、コメディ要素、とりわけ政治ギャグ、社会風刺が山盛りで詰め込まれています。現代アメリカの社会事情に詳しい方なら、思わずニヤリとしてしまうネタのオンパレードです。

もちろん、そうではない方を置いてきぼりにはしません。前巻に引き続き翻訳を務められた光岡三ツ子さんによるツボを押さえた用語解説と併せて読めば、どなたでもきっと本作の魅力のトリコになるハズです。

DCマーベルの堂々たるヒーローコミックももちろん魅力的ですが、たまにはこんな一風変わった作品を読んでみてはいかがでしょうか?

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!


(文責・山口侘助)