2018年6月12日火曜日

日本が世界に放つ!『ニンジャバットマン』の魅力



アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは。
6月に入ってじめじめした天気が続き、気分もすっかり滅入ってしまいますね。
しかしアメコミファンにとっては、6月は『デッドプール2』(6月1日公開)、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(6月29日公開)と痛快な映画が続くので、楽しみにしている方も多いでしょう。

ところで皆さん、6月はもう一本、『ニンジャバットマン』(6月15日公開)という痛快アメコミ映画があるのをお忘れじゃあないですか?

実は私、ワーナーの試写にお邪魔して一足先に拝見させていただいたんですが、いやー最高!あなたたちスゴイよ!という出来映えでした。
一流の職人さん達による、細部まで手の込んだ伝統工芸を心ゆくまで堪能させていただいた、そんな気分です。

今日はそんな『ニンジャバットマン』の魅力を、ワーナーさんの情報解禁ポリシーにしたがって、ネタバレなしにご紹介させていただこうと思います。

BATMAN and all related characters and elements © & ™ DC Comics.
© 2018 Warner Bros. Entertainment All rights reserved.


『ニンジャバットマン』企画のなりたち


そもそも『ニンジャバットマン』を製作したワーナーは、ハリウッドスタジオの中でも各国の文化や特性にあった作品を作ることで定評があります。

そんな中、ワーナーグループ(バットマンの版元であるDCコミックスもその傘下です)のプロパティを使って、日本が世界に誇るアニメーションで表現しようということから本作の企画がスタートしました。

そしてDCキャラクターと日本カルチャーをミックスしたときに、どんな組み合わせが世界中のファンを熱狂させる最高の化学反応を引き起こすか検討する中で、"忍者×バットマン"という、今までありそうでなかった目から鱗のコンセプトが生まれたのです。

この前代未聞の企画を成功させるため、キャラクターデザインに『アフロサムライ』の岡崎能士氏、脚本に『天元突破グレンラガン』の劇団☆新幹線の中島かずき氏、そして映像には『ジョジョの奇妙な冒険』OP映像で世界の度肝を抜いた水﨑淳平監督率いる神風動画という、まさに侍ジャパン!ともいうべきクリエイター陣がここに集結したのです。

日本を代表するアニメクリエイター達がバットマンをどう料理するのか?

日本のみならず世界中のバットマンファンが関心を持つところです。
バットマンといえば、クリストファー・ノーラン監督のダークナイト トリロジーをはじめ「暗い」「重い」といったイメージがどうしてもありますが、本作はエンターテイメント方向に思いっきり舵を切った「奇想天外で」「驚きに満ちた」全く新しいバットマン世界となってます。

もしかしたら「こんなのバットマンじゃねぇ」と思う人もいるかもしれませんが、逆にこれまでのバットマンと同じものを作るのであれば、わざわざ日本のアニメクリエイター陣が手掛ける必要はないともいえるでしょう。

ぜひ頭を空っぽにして劇場に足を運んでいただいたら、この夏一番の痛快エンターテイメントを満喫できると思いますよ!


 ヴィラン達が日本の戦国大名に


本作は、2Dタッチの3Dでほぼ作られていて、2Dの味わいと3Dの奥行き感が絶妙にミックスされ、また細部まで描きこまれた映像のクオリティは必見です。特に、温帯湿潤気候の日本らしい複雑な空の色彩と雲の形が美しいなぁと思いました。

しかし個人的には、それより何より本作の一番の魅力は、設定だと思います。

時は戦国、最強の愉快犯<ジョーカー>による歴史改変を阻止するため、<バットマン>はすべての武器を失い、それでもなお立ち向かう――。

ゴッサムシティのヴィランたちが戦国時代の日本にタイムスリップした。
現代テクノロジーから切り離されたバットマンは、戦国大名となって群雄割拠するヴィランたちの歴史改変を阻止できるのか?
日本と世界の歴史を賭け、時空を超えた壮大な戦が幕を開ける!

この設定だけでも「この映画絶対面白い!」と思ってしまいます。

特に、ヴィラン達が日本の戦国大名になる、というアイデアが面白いと思いました。誰が誰になっているのか簡単に見てみましょう!

■ジョーカー=織田信長
"第六天魔王"と呼ばれ安土城天守にいるジョーカーは、天下統一間近の織田信長という設定になってます。"狂気の道化師"であるジョーカーは、南蛮渡来のマントをはおって時に残忍な行動をとった織田信長と共通するところがありますね。

■ペンギン=武田信玄
甲斐領主であり、"はやきこと鳥の如く"wwと本物のペンギン達を部下にして戦うペンギンは、武田信玄です。ペンギンと武田信玄の共通点は「太っている」「大物感」ぐらいしか思いつきませんが……。

■ポイズン・アイビー=上杉謙信
越後の領主ポイズン・アイビーは上杉謙信です。二人の共通点として、実は「上杉謙信女性説」というのがあります。男性を好み、婦人病を患っていたというのが根拠です。毘沙門天という宗教のために戦争する上杉謙信は今でいう「テロリスト」であり、「エコテロリスト」ポイズン・アイビーと似てるといえば似てますね。

■デスストローク=伊達政宗
隻眼のヒットマンであるデスストロークは、同じく隻眼で、大阪夏の陣で騎馬鉄砲隊で活躍した伊達政宗となってます。作中でデスストロークは、伊達政宗の三日月形の前立ての付いた兜を被ってます。

■ゴリラ・グロッド=豊臣秀吉
両方"サル"だからでしょう。
作中でゴリラ・グロッドは、豊臣秀吉と同じ、日輪が放射状に広がる飾りの付いた兜を被ります。

■トゥーフェイス=石田光成or浅井長政
近江領主トゥーフェイスは、「元検事=インテリ」という点でいえば、優秀な官僚で近江・佐和山城主の石田三成、または「二面性」ということでいえば、織田信長を裏切った近江・小谷城主の浅井長政でしょうか。

……他にも○○が虚無僧に扮してたり、バットケイブが○○だったり、バットマン世界が日本の戦国時代にどう放り込まれてるか、注意して見ていただけたら楽しいと思いますよ!


おすすめ!バットマン・コミックス


最後に、『ニンジャバットマン』を見てバットマンに興味を持った人にお薦めしたい邦訳バットマン・コミックスをご紹介します。

『バットマン:ノーマンズ・ランド』

ペンギン、トゥーフェイス、ジョーカーらヴィラン達が群雄割拠して縄張り争いを繰り広げるという設定が面白かった方には、バットマンを代表する一大巨編『バットマン:ノーマンズ・ランド』がお薦めです。

ボブ・ゲイル他[作]
アレックス・マリーブ他[画]
定価:本体4,200円+税
●好評発売中●

1999年の作品で、無法地帯となったゴッサムシティを舞台にヴィラン達、バットマンとその仲間達、元ゴッサム市警が三つ巴となって血で血を洗う抗争を繰り広げる物語となっていて、これを読めばあなたもバットマン博士になれる!と言えるぐらい読み応えのある作品です。

『バットマン:ノーマンズ・ランド』については、先週の「アメコミ魂」でも詳しく取り上げたので良かったらご覧ください。


『バットマン:キリングジョーク完全版

ジョーカーのサイコパスな魅力に惹かれた方は、ジョーカー誕生譚を描いた『バットマン:キリングジョーク』がお薦めです。

アラン・ムーア[作]
ブライアン・ボランド[画]
定価:本体1,800円+税
●好評発売中●

「ジョーカーは最初からジョーカーだったわけではない。」

ジョーカーの「過去」の悲哀を知ると、「現在」の狂気が物悲しく見えたりもします。

作家陣は、『ウォッチメン』や『Vフォー・ヴェンデッタ』などアメコミ界に数々の金字塔を打ち立てた巨匠アラン・ムーアと、イギリスを代表するコミック・アーティストのブライアン・ボランドのコンビで、1988年に発表された本作はバットマンを代表する作品の一つとなってます。


『バットマン:アイ・アム・ゴッサム』

どうせならバットマンの最新シリーズを読みたいという方には、2016年に発表されたDCリバース版バットマンの第1巻『バットマン:アイ・アム・ゴッサム』がお薦めです。

トム・キング、スコット・スナイダー他[作]
デイビッド・フィンチ、マイク・ジャニン他[画]
定価:本体2,300円+税
●好評発売中●

最近制作されたシリーズなので、先の2作品に比べ絵柄が緻密でコマ割りも動きがあり、全体的に今風な画になっていて読みやすいです。

また、バットマンの魅力の一つといえば、ブルース・ウェインが金に物言わせて揃えた最新テクの数々ですが、『ニンジャバットマン』同様、本作でもバットモービル(自動車)、バットポット(バイク)、バットウィング(飛行機)が緻密な絵柄で登場し楽しませてくれます。


……以上、今週の「アメコミ魂」は6/15公開の『ニンジャバットマン』とバットマン関連コミックスについて書かせていただきました。では来週もお会いしましょう!

(文責:小出)

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