2016年3月28日月曜日

「バットマンVS.スーパーマン」特集第二弾!

「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!

先週金曜日、とうとう『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』が公開されましたね。皆さまはもうご覧になられましたか? ちなみに筆者は、先に見たボスに盛大にネタバレされたまま、おあずけ状態です。

さて先週から引き続き、今回はバットマン&スーパーマン特集の第二弾です。今回も翻訳家・中沢俊介さんのご協力いただき、この2人のヒーローの歴史を解説します。


【特集④】
二大ヒーローの歩み

闇の騎士/ダークナイト
バットマン 

○誕生
バットマンはスーパーマンの成功を追って、1939年の『ディテクティブコミックス』#27に初登場した。ボブ・ケインのアイディアにビル・フィンガーが肉付けして生まれたキャラクターだ。


さまざまなパルプ小説、新聞連載コミック、映画などの影響を消化した“世界最高の探偵”はすぐに人気を獲得し、翌年には彼を主役にした雑誌『バットマン』が創刊した。さらに、DCコミックスの二枚看板としての地位を確立したスーパーマンとバットマンのため、二人の作品を掲載する雑誌『ワールズ・ファイネスト・コミックス』が創刊され(創刊時の誌名は『ワールズ・ベスト・コミックス』)、やがて同誌は二人の共演が売りものになった。

○バットマンの物語

ブルース・ウェインはゴッサムシティの名門ウェイン家の御曹司だったが、ある晩、両親が目の前で強盗に撃ち殺されてしまう。この事件が幼い彼の運命を決めた。残りの人生をかけて犯罪と戦うことを誓ったブルースは、犯罪者の心に恐怖を叩きこむための象徴としてコウモリを選び、“バットマン”となる。こうして表向きは裕福なプレイボーイとして振る舞いながら、夜はビジランテとして悪を根絶するために密かに戦う日々が始まった。


さまざまな道具を内蔵した万能ベルト、バットモービルやバットプレーン(またはバットウィング)といったマシン、そして秘密基地のバットケイブ……莫大な資産を元手に開発した驚くべき装備を誇るバットマン。だが、彼の最大の武器はあらゆる事態を予測できる並外れた頭脳と、最高レベルに鍛え上げた肉体だ。


とはいえ、彼は一人ではない。ウェイン家に古くから仕える執事アルフレッドや、サイドキック(相棒)のロビンが常に彼を支えている。また、あくまでも法の埒外で戦う彼にとって、ゴッサム市警のゴードン本部長は心強い協力者といえる。


ゴッサムシティに巣食う数多くの悪党のなかでも、最も厄介な宿敵がジョーカーだ。バットマンに異様な執着を見せる彼は何度捕えられ、精神科病院アーカム・アサイラムに送りこまれても懲りずに、予測不能な犯罪でバットマンに挑戦している。ちなみに、善悪の狭間を揺れるキャットウーマンも、ジョーカーと同じく1940年の『バットマン』#1で初登場を飾った古参キャラである。


○コミックでの展開
バットマンのコミックで、時代による移り変わりが目立つものといえばロビンの正体だろう。1940年に初登場して以来キャラクターとしてはずっと傍らにいるものの、代替わりを繰り返し、直近のロビンは(メインの物語のなかでは)5代目にあたる。


さらに、過去の“ロビン”たちの多くも別の名を名乗って犯罪との戦いを続け、バットガールをはじめとする他の仲間たちと一種の共同体“バットファミリー”を形成している。また、バットマン自身も1993年の『ナイトフォール』、2008年の『ファイナル・クライシス』といったイベントで活動不能になった際には、他のキャラクターが一時的に代役を務めていた。


鋼鉄の男/マン・オブ・スティール
スーパーマン

○誕生
スーパーマンは1938年の『アクションコミックス』#1で初登場した。世界初の、いわゆる“スーパーヒーロー”であり、いわゆる“アメコミ”のイメージを決定づけたキャラクターである。


彼を考案したのはジェリー・シーゲルとジョー・シャスターという二人の若者だ。高校の同級生だった彼らは一緒にSFのファンジンを作る仲で、“スーパーマン”という名前のキャラクターも、その頃には思いついていた。とはいえ、1933年に挿絵付き短編小説としてファンジンに掲載した最初の“スーパーマン”は、超能力を持った禿頭の悪人だった。それ以来、黎明期のコミックブック業界でさまざまな作品を手がけながらキャラクターを練り直し、ついに現在我々が知っている“スーパーマン”が世に出ることになったのだ。


『アクションコミックス』#1はさまざまなキャラクターの短編が掲載された雑誌だったが、スーパーマンの人気は高く、翌年には彼を主役にした雑誌『スーパーマン』も創刊された。


○スーパーマンの物語
彼は高度な文明を持った惑星クリプトンで、科学者ジョー=エルとその妻ララの息子カル=エルとして生まれた。しかし、クリプトンは崩壊の危機に瀕しており、息子だけでも助けようとした両親は、彼を宇宙船に乗せて送り出す。


宇宙船のたどり着いた先は、カンザス州の片田舎スモールビルだった。そしてジョナサンとマーサのケント夫妻に発見された彼は、クラーク・ケントと名づけられ、育てられた。しかしクリプトンとは異なる地球の環境は、普通の人間をはるかに超えた力を彼に与えることになる。


自分の力を人間のために役立てようと決心した彼は、成長すると大都市メトロポリスに上京し、新聞社デイリー・プラネットの記者になった。そこで出会ったのが女性記者ロイス・レーン、カメラマンのジミー・オルセンといった同僚、そして編集長のペリー・ホワイトだ。こうして普段は温厚な記者として正体を隠しながら、スーパーマンに変身して人々を救うという、彼の二重生活が始まった。


おもな敵としては天才的な頭脳を持ったレックス・ルーサー、異星の知性体ブレイニアック、スーパーマンの真逆の存在であるビザロなどがいる。


○コミックでの展開

誕生以来いつも変わらぬ印象があるスーパーマンだが、じつは時代を経るにつれて細かい設定の変更や更新が行われている。たとえば弱点として有名な宇宙鉱石クリプトナイトは、もともと1940年代のラジオ番組から導入されたものだった。他にも少年ヒーローのスーパーボーイやいとこであるスーパーガールの存在、育ての親であるケント夫妻の生死などが時期に応じて変化している。


また1992年の“スーパーマンの死”や、1996年のロイス・レーンとの結婚も大きな転機になった。とはいえ、こうした設定や積み重ねられた歴史も、1985年の『クライシス・オン・インフィニット・アース』や2011年の“ニュー52”立ち上げといったタイミングで、大幅な見直しが図られた。


数いるDCコミックスのヒーローの中でも、とくに長い歴史を持つ二大ヒーローだけに、ここで改めて基本設定などを抑えておくといいかもしれませんね。さて、2週に渡ってお送りした「バットマンVS.スーパーマン」特集ですが、最後に二大ヒーローのメディア展開の歴史を年表で振り返りたいと思います。



【特集⑤】

バットマン/スーパーマン メディア展開略年表

バットマン
1939 『ディテクティブコミックス』#27に登場。
1940 独立誌『バットマン』創刊。
1943 連続活劇映画が公開。主演ルイス・ウィルソン。
1949 連続活劇第2弾『バットマン・アンド・ロビン』公開。主演ロバート・ロワリー。
1966 テレビドラマ放送開始(~68)。主演アダム・ウェスト。
    同年に劇場映画も公開。
    日本では『怪鳥人間バットマン』として知られている。
1973 ハンナ・バーベラ製作のテレビアニメ『スーパーフレンズ』放送開始。
    ジャスティス・リーグをテーマにし、タイトルを変えながら
    1986年まで新作が作られる。
1977 テレビアニメ『ニュー・アドベンチャーズ・オブ・バットマン』放送。
     フィルメーション製作
    日本では『電光石火バットマン』として後年放送された。
1989 映画『バットマン』公開。主演マイケル・キートン。
1992 映画『バットマン リターンズ』公開。主演マイケル・キートン。
1992 ワーナー・ブラザーズ製作のテレビアニメ放送開始(~1995)。
    ここから2006年まで同じ世界観でスーパーマンや
    ジャスティス・リーグ等の番組が作られる
    それ以降も2014年までコンセプトを変えながら新作が作られた。
1995 映画『バットマン フォーエヴァー』公開。主演ヴァル・キルマー。
1993 アニメ映画『バットマン/マスク・オブ・ファンタズム』公開。
1997 映画『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』公開。主演ジョージ・クルーニー。
2002 テレビドラマ『ゴッサム・シティ・エンジェル』放送開始(~03)。
    バットマンのヒロインチーム“バーズ・オブ・プレイ”をテーマにしている。
2004 映画『キャットウーマン』公開。主演ハル・ベリー。
2005 映画『バットマン ビギンズ』公開。主演クリスチャン・ベール。
2008 映画『ダークナイト』公開。主演クリスチャン・ベール。
2009 ゲーム『バットマン アーカム・アサイラム』発売。
    『バットマン:アーカム』シリーズ開始。
2012 映画『ダークナイト ライジング』公開。主演クリスチャン・ベール。
2014 テレビドラマ『GOTHAM/ゴッサム』放送開始。
2016 映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』公開。


スーパーマン
1938 『アクションコミックス』#1に登場。
1939 独立誌『スーパーマン』創刊。
1939 新聞連載コミックになる(~66)。
1940 ラジオ番組が放送開始(~51)。AoS
1941 短編アニメ映画が公開開始(~43)。
    フライシャー・スタジオ(9作品)とフェイマス・スタジオ(8作品)による。
1948 連続活劇映画が公開。カーク・アリン主演。
1950 連続活劇第2弾『アトム・マンvsスーパーマン』公開。主演カーク・アリン。
1952 テレビドラマ放送開始(~58)。主演ジョージ・リーヴズ。AoS
1966 『イッツ・ア・バード…イッツ・ア・プレーン…イッツ・スーパーマン』公演。
    (ブロードウェイミュージカル)
1966 テレビアニメ『ニュー・アドベンチャーズ・オブ・スーパーマン』放送開始。
    (フィルメーション製作
    ※スーパーボーイ、アクアマン、バットマンのエピソードを加えながら
    1969年まで新作が作られる。
1973 ハンナ・バーベラ製作のテレビアニメ『スーパーフレンズ』放送開始。
    ジャスティス・リーグをテーマにし、タイトルを変えながら1986年まで新作製作。
1978 映画『スーパーマン』公開。主演クリストファー・リーヴ。
1980 映画『スーパーマンII/冒険編』公開。主演クリストファー・リーヴ。
1983 映画『スーパーマンIII/電子の要塞』公開。主演クリストファー・リーヴ。
1984 映画『スーパーガール』公開。主演ヘレン・スレイター。
1987 映画『スーパーマンIV/最強の敵』公開。主演クリストファー・リーヴ。
1988 テレビドラマ『スーパーボーイ』放送開始(~92)。
    主演ジョン・ヘイムズ・ニュートン(第1シーズン)、
    ジェラルド・クリストファー(第2~4シーズン)
1988 ルビー=スピアーズ製作によるテレビアニメ放送。
1993 テレビドラマ『新スーパーマン』放送開始(~97)。
    主演ディーン・ケイン。『ロイス&クラーク』としても知られている。
1996 ワーナー・ブラザーズ製作によるテレビアニメ放送開始(~00)。
2001 テレビドラマ『ヤング・スーパーマン』放送開始(~11)。
    主演トム・ウェリング。『スモールビル』としても知られている。
2006 映画『スーパーマン リターンズ』公開。主演ブランドン・ラウス。
2013 映画『マン・オブ・スティール』公開。主演ヘンリー・カヴィル。
2015 テレビドラマ『スーパーガール』放送開始。主演メリッサ・ブノワ。
2016 映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』公開。

ここまでお伝えしてきた情報をおさえておけば、さらに『バットマンVS.スーパーマン:ベストバウト』も読んでおくと、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』をもっと楽しめるはずです。

バットマンVS.スーパーマン:ベストバウト
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さて、ShoPro Books公式ツイッターでもアナウンスされましたが、筆者がホストを務め、翻訳家・中沢俊介さんをゲストにアメコミ映画を語り尽くすイベント『山口侘助prsents 「アメコミ魂」出張版! 白熱トークライブ「これからのアメコミ映画の話をしよう」with 中沢俊介』が422日に開催されます。続報は当ブログやShoPro Books公式ツイッターなどお知らせしていきますので、ぜひチェックしてください。

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう! 


(協力:中沢俊介/文責:山口侘助)