2017年5月30日火曜日

仲間を大増員! ハーレイ・クイン第4弾!



「アメコミ魂」をご覧のみなさま、こんにちは!

短い春は早くも終わりに差しかかり、あっという間に初夏の気配ですね。

梅雨に入ってしまうまで、外遊びも楽しい季節ではありますが、新刊のアメコミも逃さずチェックしてください。

今回ご紹介するのは『ハーレイ・クイン:コール・トゥ・アームズ』。

ハーレイ・クイン:コール・トゥ・アームズ
アマンダ・コナー&ジミー・パルミオッティ[作]
チャド・ハーディン[画]
定価:本体2,300円+税
◆好評発売中◆
「The New 52!」シリーズとして『ホット・イン・ザ・シティ』から続くハーレイ・クイン主演作の第4弾です。これから手にとってみようという方は、既刊作品を以下の順番でお読みください。


ハーレイ・クイン:ホット・イン・ザ・シティ
シリーズを通してレギュラーとなるキャラクターたちも登場。なぜハーレイが常に金欠なのかなどもわかる、この単独主演作の幕開けとなった一冊です。

ハーレイ・クイン:ホット・イン・ザ・シティ
アマンダ・コナー&ジミー・パルミオッティ[作]
チャド・ハーディン[画]
定価:本体2,200円+税
◆好評発売中◆


ハーレイ・クイン:パワー・アウテイジ
南海の孤島から宇宙、果てはコミコン会場まで、ハーレイがTPOをわきまえず大暴れ! パワーガールとのチームアップも楽しめます。

ハーレイ・クイン:パワー・アウテイジ
アマンダ・コナー&ジミー・パルミオッティ[作]
チャド・ハーディン[画]
定価:本体2,200円+税
◆好評発売中◆


ハーレイ・クイン:キス・キス・バン・スタブ
親友ポイズン・アイビーの助言もあり、忙しすぎるハーレイはワークライフバランスの改善を図ることに。急募! ハーレイのアシスタント!

ハーレイ・クイン:キス・キス・バン・スタブ
アマンダ・コナー&ジミー・パルミオッティ[作]
チャド・ハーディン[画]
定価:本体2,400円+税
◆好評発売中◆


そして最新作『ハーレイ・クイン:コール・トゥ・アームズ』のあらすじはこちら。

ハーレイとギャング・オブ・ハーレイズは、報酬をもらうために活動を開始する。しかし、少々手に余る仕事が舞い込むことも。単なる行方不明者捜索のはずが、“凶暴化した船長と対決する”ハメになるなんて――誰に予想できただろう?
さらにハーレイはハリウッドへ。賞金稼ぎのビジネスにも手を広げた彼女だったが、やがてそれがヒーロー稼業より危険な仕事だと思い知ることになる。なぜなら、ハーレイはデッドショットの標的を横取りしようとしていたのだから……!


本作では、前号の『キス・キス・バン・スタブ』で募集したハーレイの助手集団「ギャング・オブ・ハーレイズ」が本格始動します。彼女たちのおこなう活動は、意外なほどに人の役に立つことばかり。街のコソ泥をやっつけたり、悪徳市長をこらしめたりしています。そのやり方がちょっと過激でメチャクチャで、高確率で流血沙汰になってしまったりするのですが、そこがハーレイらしくて楽しいところですね。


個性豊かな12人のメンバーについてもコードネームが与えられ、詳しく紹介されているので、こちらの小ネタもお楽しみください。

ハーレイ・クイン:コール・トゥ・アームズ』本編より

ここで挙がっているのは、DCのコミックに登場したヒロインたちの名前です。アメコミ好きならみんながわかるものから、どっぷり詳しい方がクスッと笑えるコアなものまで。
たとえば「エラスティ・ガール」は『ジャスティス・リーグ:インジャスティス・リーグ』に登場したドゥーム・パトロールの一員です。身体の大きさを変えられるというインパクトの強さで、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。

ジャスティス・リーグ:インジャスティス・リーグ
ジェフ・ジョーンズ[作]
ダグ・マーンキ他[画]
定価:本体2,700円+税
◆好評発売中◆


ほかにも、不朽の名作『ウォッチメン』に登場しているキャラクターの名前もあるのですが、おわかりになるでしょうか?(答えは文末に記載しています!)

ウォッチメン
アラン・ムーア[作]
デイブ・ギボンズ[画]
定価:本体3,400円+税
◆好評発売中◆


毎回いろいろなゲストが登場するのも本シリーズの魅力ですが、今回はスーサイド・スクワッドでハーレイとともに任務をこなす凄腕ガンマン、デッドショットことフロイド・ロートンが出演しています。

自殺部隊では非道なリーダー的存在ですが、素顔は人の子であり人の親であるデッドショット。彼については単独主演作も刊行されています。気になる方はこちらの記事も併せてご覧ください。

スーサイド・スクワッド:デッドショット
ブライアン・ブッチェラート[作]
ビクトル・ボグダノビッチ[画]
定価:本体2,000円+税
◆好評発売中◆


基本的に、本シリーズでのハーレイは弱きを助け強きをくじく勧善懲悪タイプ(あくまでハーレイ目線の善悪ですが)。ジョーカーの恋人として狂気の限りを尽くしていた頃とは違い、現在のハーレイの行動原理になっているのは生活苦だといえるでしょう。本業の精神科医とギャング・オブ・ハーレイズの活動をもってしても、あがないきれない生活費。大所帯のギャングを雇ったことで、負担は増えている気がしますが……。

とかくお金を稼ぐため、高額の報酬に釣られて慣れない仕事を引き受けたハーレイですが、実はその仕事、もともとはデッドショットが依頼を受けたものだったのです。思いがけず、デッドショットと単身対決することになったハーレイの運命やいかに! そしてそもそもの目的、彼女が手にするはずだった報酬の行方も気になるところです。

また、『キス・キス・バン・スタブ』から登場しているハーレイの恋人候補、メイソンとの関係がどう進展していくのかも見逃せません。

前作では思わぬすれ違いが生まれてヤキモキしたものの、無事に誤解をとくことができたハーレイでしたが、今回はさらに深刻な障害がふたりの間に立ちはだかります。市長の息子を殺害したとしてメイソンが逮捕されてしまい、彼に会うことすらままならなくなってしまいました。この先、いったいどうなってしまうのでしょうか。

ハーレイ・クイン:コール・トゥ・アームズ』本編より。
連行されるメイソンと引き離されるハーレイ


親友であるポイズン・アイビーとの仲良しぶりはもちろんのこと、キャットウーマンも加わっての女子旅エピソードも収録されています。

キャットウーマンはバットマンと付き合いの長いキャラクターで、盗みのプロ。今回も女子旅のついでとばかりに、敵対関係にあるヴィラン、ダークウルフの獲物を掠め取ろうとしています。

3人3様の魅力が描かれていますが、とくにハーレイの天真爛漫ぶりがとってもかわいらしいですよ。

すでにお知らせしていますが、このハーレイ・クインシリーズはこのあともスピード感をもって続刊が発売される予定です。普通の幸せ、そしてお金を追求して奮闘するハーレイは、その願いをかなえることができるのか? 完結まで、どうぞ目を離さずにお付き合いください。


忘れるところでした。

前述のクイズ(?)の回答をお知らせしておきましょう。

ギャング・オブ・ハーレイズにディスられてしまった、『ウォッチメン』に登場するヒロインの名前はシルク・スペクター。初代の娘にあたるローリーが二代目を継いでおり、Dr.マンハッタンの恋人でもある重要な役どころですが、ここではひどい言われようでした。

ウォッチメン本編より。
左の女性がシルク・スペクター

きれいですけどね!

それではまた。 来週の更新もお楽しみに!

(文責:鈴木)


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2017年5月23日火曜日

解説『バットマン:スーパーヘヴィ』



アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!

今週ご紹介するのは、先々週発売されたばかりの新刊『バットマン:スーパーヘヴィ』です。

バットマン:スーパーヘヴィ
スコット・スナイダー[作]グレッグ・カプロ[画]
定価:本体2,200円+税
◆好評発売中◆

本書は、2015年5月に発表された序章的な短編の『DCスニークピーク:バットマン』#1と、続いて6月から10月にかけて刊行された『バットマン』#41-45を発売順に収めた単行本の日本版です。じつは当時DCコミックスでは大型イベント“コンバージェンス”が展開されていたため、前巻『バットマン:エンドゲーム』(小社刊)の最終話にあたる#40から本書の#41までには、1ヶ月半近いブランクがありました。

“コンバージェンス”は、4月から5月にかけて仕掛られました。その間、週刊のミニシリーズで主軸となる物語が進む一方で、レギュラー雑誌は中断し、代わりに2号完結の雑誌が40(つまり合計80冊)も刊行されました。

このイベントでは、2011年にニュー52が始まったことで整理されてしまった旧設定の一時的な回復です。シリーズ各作品2号で、DCユニバースのさまざまな時間軸、設定、都市からキャラクターが集められ、戦いを繰り広げられました。

ちなみに、同シリーズのなかでバットマンが主役のタイトルは以下の通りになります。

●『バットマン&ロビン』
⇒フラッシュポイント直前のバットマン、ロビン(ダミアン・ウェイン)、レッドフード(ジェイソン・トッド)が、1990年代のヴィランのチーム、エクストリミスツと対決。

●『バットマン:シャドウ・オブ・バット』

⇒ベインによる半身不随から復帰した頃のブルース・ウェインとジャン・ポール・バレーという二人のバットマンが、ワイルドストーム・ユニバースのチームであるウェットワークスと対決。

●『バットマン&アウトサイダーズ』

⇒1980年代のクライシス前の同チームが、1970年代版のオマック(バディ・ブランク)と対決。

●『ディテクティブコミックス』

⇒1980年代のクライシス前のアース2のディック・グレイソンとハントレス(ヘレナ・ウェイン)が、『スーパーマン:レッド・サン』(小社刊)のスーパーマンと対決。


そして、“コンバージェンス”が終了すると、“DCユー”と銘打ってラインナップの刷新が図られました。20を超える新雑誌が立ち上げられ、定期刊行誌の総数も変化しました。世界観は引き継がれましたが、このタイミングで“ニュー52”というブランド名は使われなくなりました。この時期に創刊されたバットマンタイトルには、次のものがあります。

●『バットマン・ビヨンド』
⇒別の時間軸のティム・ドレイクがテリー・マクギニスの後継者になる。

●『ロビン:サン・オブ・バットマン』

⇒復活したダミアン・ウェインが主役。

●『ウィ・アー・ロビン』

⇒本書にも登場したデューク・トーマスが、ゴッサムシティの少年少女による自警団を結成。


以上のような状況のなかで、本シリーズは再開されました。上述の他にも、『ゴッサム・アカデミー』『グレイソン』『バットガール』(いずれも小社刊)など、当時のバットマン系列には新鮮で意欲的な作品が多く、そのことがライターのスコット・スナイダーに刺激を与えたと、本人もインタビューで語っています。それもあってか、本書に登場する“ロボバットバニー”版の新バットスーツのイラストは、“DCユー”を全体を象徴するイメージの一つに選ばれてました

ブルース・ウェインの兄弟、オリジンの再定義、ジョーカーの正体……シリーズの幕開け以来、一貫してバットマンの本質に関わる大胆なテーマに挑み、質の高い仕事で成功を収めてきたスナイダー/カプロのコンビ。翌年の“リバース”を前に敢行された“バットマンの代替わり”という最大の挑戦は、どのような結末を迎えるのでしょうか?

ということで、ここからは気になる本書のあらすじをご紹介したいと思います。

ジョーカーとの決戦後、バットマンは姿を消した――。ヒーロー不在のゴッサムシティで、ダークナイトの再臨を望む声が高まるなか、ジム・ゴードン本部長はダークナイトの遺志を引き継ぎ、新たなバットマンとなることを決意する。しかし、パワーズ・インターナショナルが作り上げた最新型高機能バットスーツを身にまとい、ゴッサム市警と連携しながら街をパトロールするが、その力はオリジナルには遠く及ばない。新バットマンの苦闘が続くなか、ゴッサムの闇には新たな悪が胎動していた。犯罪者たちに特殊な能力を与えるヴィラン、Mr.ブルームが、その魔手を着実にゴッサム全域に広げつつあるのだ。果たしてコウモリの翼は、再びゴッサムの闇に舞い降りるのか?

本書の主役はそう、ゴッサムシティの良心にしてバットマンの良き理解者のひとり、ジム・ゴードン市警本部長です。新たなヒーローを望む市民の声に応え、新たなバットマンになるという苦渋の決断をします。


トレードマークのメガネ、髭、くわえタバコをやめ、
海兵隊時代の髪型にしたジム・ゴードン。
そして新型バットスーツを開発した
パワーズ・インターナショナルのCEO、ジェリ・パワーズ。

バットマンというあまりに偉大すぎるヒーローの名を継ぐ重圧のなか奮闘するゴードン。しかしゴッサムの犯罪はジムを待ってはくれません。日々、悪と戦ううちに、ジムはあることに気がつきます。突然増加したメタヒューマンたちに共通する物証が出てきたのです。

元はチャイニーズマフィアだったはずのジー・ジー・フンは、
石や建材を操る能力を得ていました。

犯罪者の遺骸から見つかった謎の物体“シード”。

メタヒューマン増加の背後にいるヴィランの存在が
徐々に明らかになります。その名はMr.ブルーム。

果たして新生バットマンことジム・ゴードンは、Mr.ブルームの魔の手からゴッサムを救うことができるのか? そして、行方不明のブルース・ウェインは、ゴッサムに帰還するのか? 本書、そして次巻『バットマン:ブルーム』によって、ニュー52から続いてきた時系列のエピソードは、フィナーレを迎えます(この時系列の番外篇的エピソードを集めた『バットマン:エピローグ』も刊行予定です)。これまでバットマンを読み続けてきた人にとっては、まさに必読の書といえるでしょう。また、本書そして次巻と続く一連のエピソードを担当したのは、スコット・スナイダーとグレッグ・カプロの黄金コンビ。これだけ読んでも読み応え充分です。

これから控えている「DCリバース」を迎える前に、ぜひこの大団円的エピソードを楽しんでください。

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう。

(文責:山口)


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2017年5月16日火曜日

デッドプール、チームアップ作品の最新作!

「アメコミ魂」読者のみなさん、こんにちは!

長いゴールデンウィークもあっという間に終わり、ちょっとユーウツ・・・なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。いえいえ、お楽しみはこれからです! ということで、そんな落ち込み気分を吹き飛ばすべく、今週もアメコミの最新情報をご紹介していきます。

ゴールデンウィークといえば、私は、いま東京・六本木で開催中の「マーベル展」に行ってきました。連休中とあって大盛況! 日本初のマーベル総合展ということで、いくつかのテーマによる展示で構成され、ライトなアメコミファンから熱狂的ファンまで幅広い方々が楽しめる内容になっていました。個人的に最も興味深かったのは、1930年~60年代の貴重な原画とアートが見られたこと。いま見ても全然古くさくない。というか、何十年たった今でも斬新でクールなその絵づくりに改めて感銘を受けました。

そして、先週末12日(金)には、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』が公開されました。大ヒット作の第2弾とあって注目されていますが、この個性豊かなキャラクターたちは発売中のコミック『ガーディアンズ:チームアップ2』でも登場していますので、こちらもぜひお楽しみください。

さて、そんなマーベルの中でも最近とくに人気の高いキャラクターが、デッドプール。昨年からいくつものタイトルを刊行していますが、その最新作『デッドプール VS. ガンビット』が発売中です。他のシリーズ作との関連性は低いので、本書からスタートしてもすんなりとストーリーが理解できます。

『デッドプール VS. ガンビット』
ベン・アッカー&ベン・ブラッカー[作]
ダニーロ・ベイルース[画]
定価:本体1,800円+税
●好評発売中●


本作ではタイトルにあるとおり、マーベルファンにお馴染みのデッドプールとガンビットのコンビが活躍します。
デッドプールについては、みなさんの多くにはもはや説明は不要かもしれませんが、ガンビットとあわせて紹介します。

【デッドプール】
本名はウェイド・ウィルソン。傷ついても驚異的な再生能力で復活し、殺人を躊躇しない冷酷な性格の傭兵。初登場は1991年2月月号『ニューミュータンツ』#98で、善悪に偏らないトリックスターのようなキャラクター。

【ガンビット】
本名は、レミー・ルボー。世界的に暗躍する盗賊。トランプなど手にした物体にエネルギーをチャージすることができ、様々なアイテムを爆発させることができる特殊能力を持つ。

ガンビットは優男とあって外見がわりと一般人と変わりなく普通なので、存在感に乏しい、なんて思われがちですが、これがなかなかのクセモノ。
実はX-MENの一人で、最もハンサムな上に口が達者なミュータントなのです。この個性が遺憾なく発揮された時、彼の魅力が爆発することとなります。

彼の初登場は『アンキャニーX-MEN』#266(1990年8月)。90年代はローグの恋人として有名であり、とくに女性読者の間で人気が高かった。魔人アポカリプスやミスター・シニスターの部下となって、X-MENと戦ったこともある。
実写版としては、2009年の映画『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』では、テイラー・キッチュがガンビット役を演じていた。

※以上、翻訳者・高木亮さんによる本書解説から抜粋。


こんな“饒舌な傭兵”と“イケメン盗賊”が繰り広げる本書のあらすじを紹介します。

【あらすじ】
デッドプールとガンビット、実はこの二人、こっそり手を組んで詐欺をはたらいた“共犯者”だった。相容れない性格の二人がしぶしぶ手を結び、乗り出したのはドデカイ詐欺! 
正体不明でつかみどころのない怪しい紳士の雇い主から指令を受けた二人は、中国人の実業家からお宝を盗もうと画策する。こんなのいたって楽勝!の計画のはずが、そうは問屋が卸さない。実業家の思わぬ攻撃に合い、二人の息も合わず、そこにパワーを“かく乱する”能力をもつミュータント・スクランブラーも現れて・・・。はたして最悪の共犯者にして、マーベル最高の詐欺師二人は最高のタッグになれるのか?
 
本作の一番の見どころは、よくしゃべる二人の“迷コンビ”ぶりです。

「裏切られた!」と勝手に思い込んでは、相手への復讐心を燃やして街じゅうを巻き込んでの激しい戦いを繰り広げたかと思えば、共通の敵を倒すために連携プレーを試みたり。はたまた顔を突き合わせれば、お互いを罵り始めて・・・。こんな繰り返しが続いていきます。計画をともに遂行していくコンビとは思えないデコボコぶりが際立っていて、一体どうなることやらと、ハラハラさせられます。
 
本書ナレーションでも、「アクションシーンを期待してる?」。「悪いが、これは詐欺師の話だ。アクションシーンなんかない」とあるとおり、これはちょっと言い過ぎかもしれませんが、セリフの応酬が大きな魅力となっています。

例えば、
デッドプール:「さっきのタックルは痛かったぞ」
ガンビット:「我慢しろ」
ガンビット:「もっと痛くなるぞ」
デッドプール:「やめてくれよ。楽なヤツがいい」

というふうに、いつ終わるともしれない堂々めぐりの会話が続いては、それぞれがボケたりツッコんだりと、まるでベテラン漫才師の丁々発止のやりとりを見ているかのようです。そのスピード感、緊張感はクセになる面白さで、とても新鮮です。

もちろん、この迂回しがちなストーリー展開を支え面白くしているのは、やっぱりデッドプールのクソヒーローぶりで、今回も「オレちゃん」のデッドプール節が健在なのもうれしい限りです。

とは言っても、アクションシーンもきちんと充実しています。

デッドプールとガンビットそれぞれの能力を発揮するシーンはもちろん見せ場としてありますが、日本の少年マンガに登場するような「~拳」なる武術のワザがたっぷりと展開されます。「えっ! これ、アメコミ?」と驚きつつも、「これは痛そう!」と感じさせるアクションの数々はアメコミにはちょっと珍しく、ここが見どころの一つとなっています

このほかにも、『マトリックス』、『ファイトクラブ』、『ダーティ・ダンシング』など熱狂的なファンを持つ映画を意識したシーンやセリフがポンポン飛び出します。加えて、ガンビットとの戦闘中にデッドプールが楽しげにデスティニーズ・チャイルドの『サバイバー』を歌い続ける場面は、彼の趣味が全開。ヒーローの隠された一面を垣間見るようで個人的にツボにはまりました(笑)。こういったいろいろな作品からの引用や批評もデッドプール作品ならではの面白さです。

本書では、個性豊かなキャラクターを擁するマーベル作品をもっと広く知っていただきたい、との編集部の思いから、カンフーヒーローの活躍を描く『イモータル・アイアンフィスト』を13ページ分、試し読みできるよう特典として付いています。こちらもあわせてお楽しみください。

弊社では、デッドプールとのチームアップ作品をこれまでに4冊刊行しています。
この最近作が『デッドプール&ケーブル:スプリット・セカンド』です。





ケーブルというキャラクターについて簡単に紹介しておきます。
本名はネイサン(ネイト)・サマーズ。彼はX-MENのサイクロップスと、X-MENのジーン・グレイのクローンである、マデリーン・プライアーのあいだに生まれるが、アポカリプスによって特殊な病気に感染させられてしまう。
彼はその治療のために未来に送り出され、成長したのちに1991年3月号『ニューミュータンツ』#87でもとの世界に戻り、未来を守るために戦うミュータントとなる。

【あらすじ】
ある男の死によって引き起こされる恐るべき未来を予見したケーブル。ケーブルがその男を守ろうと決意する一方、同じ男を殺すために“ある男”が近づく・・・。デッドプールは果たして相棒なのか!? 活劇と時間旅行のトリックに満ちた大騒動の始まりだ!

そして、来月下旬には、デッドプールとエイリアン共生体との合体を描いた注目作品『デッドプール:バック・イン・ブラック』が発売予定です!

1984年の『マーベル・スーパーヒーローズ・シークレット・ウォーズ』において、デッドプールが遭遇したエイリアン共生体は、スパイダーマンの漆黒のコスチュームとなり、最終的にはヴェノムとなった。ところで、その共生体がエディ・ブロックと出会う前に、実はデッドプールと合体していた! ブラック・コスチュームのスパイダーマンまで現れて、驚きの大事件が起こる。

今後もデッドプール作品から目が離せません。こちらもぜひお楽しみに!

それでは、また来週お会いしましょう。

(文責:木川)

2017年5月9日火曜日

マーベル屈指の拳法の使い手、アイアンフィスト登場!

アメコミファンの皆さま、こんにちは。
4月から編集担当となりました小出と申します。
アメコミ初心者ですが、個性的なヒーローがたくさん登場するので張り切って勉強していきたいと思ってます。
こちらのアメコミ魂でも小社イチオシ新刊を月一で紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

早速ですが、今回ご紹介する書籍はコチラです。

マット・フラクション&エド・ブルベイカー[作]
デイビッド・アジャ他[画]
定価:本体2,200円+税
◆好評発売中◆

ネットフリックスでドラマ化になり話題のキャラクターですが、単独誌としては小社初刊行となります。



ドラマでは、浮浪者のような姿で15年ぶりにニューヨークに舞い戻ってきた主人公のダニー・ランドが、父の遺産であるランド社を取り戻そうと奮闘する姿がドラマチックに描かれてますが、コミックでは、既に会社を取り戻した後から物語がスタートします。

まずは簡単に、アイアンフィストのあらすじをご紹介します。
主人公のダニエル(ダニー)・ランドは、伝説の都市”クン=ルン”で格闘技を学び、不死の龍の力を手に入れ、”気”の力で必殺の拳を放つアイアンフィストとなった後、アメリカに戻り大企業を相続し誰もが羨む地位とお金を手にするものの、彼がアイアンフィストであるがゆえに様々な過酷な戦いに巻き込まれていく・・・というストーリーです。

大筋の設定はドラマ版もコミック版も同じですが、例えばドラマ版でダニーの恋人となるコリーン・ウィングが、コミック版では友人という設定だったり、コミック版ではアイアンフィストであるダニーはヒーロースーツを着ていたり、といった違いがあります。

実はこのアイアンフィストのスーツが、個性的でカッコいい!
緑のスーツに黄色いバンダナ風マスクとブーツがアクセントになっていて、超クールなんです。残念ながらドラマ版ではこのスーツが出てこないので、ぜひ本書で堪能してください。


(※アーティストのデイビット・アジャは本書において、アイアンフィストの定番イメージ、衿が立って胸をはだけたデザインを思い切って刷新した結果、より現代的なキャラクターに生まれ変わらせることに成功しました。本書巻末では、デイビット・アジャによる貴重なキャラクターデザイン集が載っていて、そのデザインの変遷は大変見応えがあります。)

ドラマ版に出てこないコミック版のもう一つの見どころが、歴代のアイアンフィストについて全編に渡って丁寧に触れられている点です。ダニー以外の、国も時代も性別も違う様々なアイアンフィストの存在(歴史上、66人の男女がアイアンフィストを名乗ったそうです!)により、そのキャラクターに一層の深みが与えられています。
ここで、ダニー以外の歴代のアイアンフィスト達を一部ご紹介します。

●1227年のアイアンフィスト
クン=ルンの山岳地帯に住むベイ・ミン=シャンは、モンゴル軍に襲われた村を守るため一人立ち向かう。
(※1227年はモンゴル帝国の初代皇帝チンギス・カンが死んだ年です。この事件は、実はアイアンフィストがチンギス・カンを倒したことを暗示しているのではないでしょうか・・・)


●1545年のアイアンフィスト
中国広東省、平海港の支配権をめぐって倭寇に戦いを挑む女アイアンフィストのウー・アオ=シ。
(※1545年といえば種子島の鉄砲伝来で大きな役割を果たした中国人倭寇・王直が、倭寇最大の頭目に成りあがった年です。倭寇の権力闘争にアイアンフィストが影響を及ぼした可能性を暗示してます・・・)


●1916年6月23日のアイアンフィスト
死傷者70万人を出した第一次世界大戦最大の激戦地であるヴェルダンで、毒ガスや火炎放射器といったドイツの最新兵器に一人立ち向かうフランス兵アイアンフィストのランドール。
フランス軍にとって防戦一方で最も過酷なこの時期を耐えきった後、8月にフランス軍は反転攻勢を開始します。


●1860年のアイアンフィスト
英仏と清の第2次アヘン戦争において、アイアンフィストのベイ・バン=ウェンが指揮する清軍部隊は、イギリス軍の上陸を許し、自らも拳を剣に突き刺される。この年、清軍の降伏で第2次アヘン戦争が終結したのは、アイアンフィストの戦死による結果であろうか・・・。


本書はこのように、人類の歴史の重要なシーンにアイアンフィストが関与していたことを仄めかすことで、アイアンフィストがただのアメコミヒーロー以上の存在なのだと読者に気付かせてくれます。

しかし、ダニー以外のアイアンフィストは皆、過去の存在なのでしょうか?

ダニーは会社の道場で訓練中、突然右手に痛みを感じ、倒れ込みます・・・。誰かがダニーの”気”、すなわちのアイアンフィストの能力の源である不死の龍ショウ=ラオの力を使ったことを、はっきり自覚するのです。

・・・誰がダニーの力を使ったのか?この後、ダニーとアイアンフィストの更なる宿命の扉が開かれます。

ここから先はぜひ本書を手に取って、お楽しみください。
ダニーの父宿敵ヒドラ、ランド社の大口顧客である中国企業の秘密、そしてクン=ルンに運命を翻弄された者たち・・・多くの因縁が複雑に絡み合う、濃厚な世界観を存分に楽しめることでしょう。

この辺りで今回の記事を締めさせて頂きます。最後までお読み頂きありがとうございました。それではまた来月!
(文責・小出)


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