2014年8月11日月曜日

先読み!『ジョーカー:喪われた絆〈上〉』

みなさん、こんにちは!

アメリカでは、先月24日から27日までコミコンが開催されました。DCコミックス関連のニュースとしては、噂されていた“制作予定の映画タイトル一挙発表”こそなかったものの、『ゴッサム』『フラッシュ』『ARROW/アロー』といった話題のドラマの新情報が開示されたり、バットマン75周年のパネルがあったりと、大いに盛り上がったようです。

さらにコミコン後、米ワーナーは2020年までに全部で10本のDC映画を公開すると発表し(そのうちの二つは“イベント・フィルム”と……!)、ファンの度肝を抜きました。

残念ながら最初の1作となるべき、『バットマンvスーパーマン』の公開は2016年に延期されてしまいましたが、マーベル/ディズニーに負けないよう、ぜひ老舗の意地を見せてほしいですね。

さて、日本では、今年の夏はジョーカー祭りです!

先月発売しました『バットマン:喪われた絆』に続いて、『ジョーカー:喪われた絆』上下巻2ヶ月連続で刊行して、ジョーカーのニュー52ユニバースへの本格復帰を三部作で祝いたいと思います! 
▲『ジョーカー:喪われた絆〈上〉』
定価:2,200円+税
●8月27日発売予定●
アメリカにおいて“喪われた絆Death of the Familyクロスオーバー・イベントとして展開していたので、バットマン系列各誌に関連エピソードが並行して連載されました。そして、それらを編集して1冊にまとめたのがThe Joker: Death of the Family450ページを超える原書を、日本では『ジョーカー:喪われた絆』上下巻として、2冊に分けて発売させていただくことになりました。

今月27日発売予定『ジョーカー:喪われた絆〈上〉』では、以下のキャラクターのエピソードがフィーチャーされています。

バットマン……ジョーカーの帰還によって、混迷するゴッサムシティ。雨後の筍のごとく現れたジョーカーを信奉する犯罪者集団に、バットマンが立ち向かう!(掲載誌:『ディテクティブコミックス』

キャットウーマン……『バットマン:喪われた絆』には登場しなかったキャットウーマン。しかし、ヤツは彼女にも近づいていた。果たしてその目的は……?(掲載誌:『キャットウーマン』

ハーレイ・クイン……『バットマン:喪われた絆』ではジョーカーに手を貸した彼女だったが、じつは、その前後には身の毛もよだつ再会劇があった!(掲載誌:『スーサイド・スクワッド』

バットガール……ジョーカーの復活をまだ知らないバットガール。だが、ヤツの魔の手は容赦なく迫る。母親を誘拐された彼女は、謎の声に導かれて監禁場所に向かうが……。(掲載誌:『バットガール』

普段、日本ではなかなかご紹介できないキャラクターが活躍するのもクロスオーバーの醍醐味の一つ。なかでも今回は、ハーレイ・クインバットガール(バーバラ・ゴードン)という、ニュー52を経て大きく様変わりした二人に要注目です!

ハーレイ・クインは以前のコミカルなキャラクターとはずいぶん外見も変わって、毒々しい雰囲気が増し、いまやDCヴィランからなる決死部隊“スーサイド・スクワッド”の一員になっています。

一方、バットガールのほうは“梟”三部作ですでにお目見えしていますが、なんといっても今回の敵はジョーカー『バットマン:キリングジョーク』での半身不随からは回復しているものの、因縁浅からぬ相手です。さらに、『バットマン:ブラックミラー』に登場した“あのキャラクター”も登場して、否が応でも盛り上がる展開になっています!

事件の前日譚、後日談、余波などを描いて、イベントの全貌がより深く理解できる内容となっている『ジョーカー:喪われた絆』。さまざまなアーティストによって描かれるジョーカー像(とくにあのマスク)とともに、ぜひ楽しんでいただければと思います。

▲『バットマン:喪われた絆』
●好評発売中!●

来月三部作がいよいよ完結!ということで『ジョーカー:喪われた絆〈下〉』が発売予定となっております。しかし、それと同時に、バットマン史に燦然と輝く名シリーズの日本版刊行が、ついにスタートします。そう、『バットマン:ノーマンズ・ランド』です! こちらはかなり長大なシリーズで、1冊ごとのページ数も多くなるので、全4巻をじっくり出していきたいと考えています。9月刊行のラインナップもお楽しみに!

▲『ジョーカー:喪われた絆〈下〉』
●9月26日発売予定●

▲『バットマン:ノーマンズ・ランド1』
●9月26日発売予定●
※原書イメージ

ところで、小社ではアメコミBDをはじめ、さまざまな国のコミックを刊行させていただいていますが、そもそも“絵の連なりによって物語をつづる”という手法――故ウィル・アイズナー言うところの“シークエンシャル・アート”――は、どのようにして確立されたのでしょうか?


そんな奥深い謎に迫る講演が9月6日(土)千代田区立日比谷図書文化館にて開催されます。題して『ストーリーマンガ時代のはじまり 日本・アメリカ・フランスの1930年代』。講師の佐々木果さんは、“ササキバラ・ゴウ”名義でも活躍されているまんが史研究家です。1930年代といえば日本では『のらくろ』が、アメリカでは『スーパーマン』が生まれた頃。我々が知っている“マンガ的なもの”がどうやって生まれたのか……たしかに気になりますね。お近くにお住いの方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。

ではでは、今日はこのへんで。


(文責:中沢俊介)

2014年8月4日月曜日

アメコミ初心者が『ウルヴァリン:エネミー・オブ・ステイト』を読む

「アメコミ魂」読者のみなさま、はじめまして。

新しくメンバー入りしました、渡辺と申します。 

約2年間、フランスパリにあるグループ会社へ出向のため海外赴任しており、出向任期満了に伴い、先週帰国しました。

「日本は暑い……」

フランスも夏ですが、日本と違い湿気が無いためカラッとした爽やかな暑さです。2年という時間が、日本の夏への耐性をリセットしてしまったのでしょうか。アイスマンストームの力で涼しくしてほしい!!

実は私、幼少の頃にアメリカに住んでいたことから、アメコミは身近に触れることができた存在であり、スパイダーマンX-MENは自分にとって、日本のどのヒーローよりも、スーパーヒーローでした。特に、X-MENウルヴァリンは大好きなキャラクター。本書の中でも出てきますが、例の“バナナ色の派手なコスチュームはやっぱりカッコイイ! それまでX-MEN達は黒のレザー風のコスチュームを着用していましたが、本書以降、ウルヴァリンは従来の黄色と青のコスチュームに戻っています。

『ウルヴァリン:エネミー・オブ・ステイト』
マーク・ミラー[作]

ジョン・ロミータJr.[画]
定価:本体3,200円+税
●小社より絶賛発売中●
今回はそのX-MENから、ウルヴァリンをフューチャーしたこの1冊を選んでご紹介します!

『ウルヴァリン:エネミー・オブ・ステイト』

本書はマーク・ミラーが脚本を担当した月刊誌『ウルヴァリン』#20-32(200412月~200511)をまとめた単行本の日本語版。

まず、本書のタイトルにドキッとしました。なぜなら、『ウルヴァリン:エネミー・オブ・ステイト』ですからね……。

自分の中でX-MENは、自分たちミュータントを忌み嫌う人間たちを守るため戦い続けているヒーロー集団。なんとそのヒーローであるウルヴァリンが合衆国の敵になってしまうのです。

暗殺者集団ハンドとテロリスト組織ヒドラが仕掛けた巧妙な罠により、ウルヴァリンが暗殺者として洗脳され、殺戮と破壊を繰り返しながら米国の機密情報を奪い、逃走してしまう。国家を重大な危機に陥れたウルヴァリンは、さらにファンタスティック・フォーデアデビルといった仲間だったはずのヒーローたちをも次々と襲撃していく――。

といったイントロダクションとなりますが、あのウルヴァリンが敵に回ってしまうことにより引き起こされる惨事はありつつも、その過程でのファンタスティック・フォーデアデビルとの戦いは、読み応えバッチリです。洗脳されているとはいえ、仲間であることに間違いはなく、暴走するウルヴァリンに対してあくまでも抑止しようとするヒーローたち。その優しさがウルヴァリン世界最硬度の金属アダマンチウムでコーティングされた鋭いクロー()の餌食を次々に増やしてしまうことに……。

単なるパワー戦ではなく、ミスター・ファンタスティックは交渉に持ち込もうとしたり、シングとは一種のケンカ友達であることを思い出させる台詞があったりと、各ヒーローの特性や関係性も描かれています。

一方のウルヴァリン自身も、“暴行犯を殺害して、被害女性を助ける映像がATMの防犯カメラに残っていた”、“数多くの凶行とわずかな善行”といったように、心のなかの善人が悪の洗脳と戦い激しく葛藤します。優等生的なヒーロー像とは一線を画す、荒くれた性格や言動が特徴的なキャラクターであっても、本書では「心の葛藤」というとても人間くさいところをウルヴァリンというヒーローに当てはめてドラマチックに描写しています。ヒーローという憧れの存在であっても、自分たちと共通する部分があると知って、今まで以上に親近感を持つことができたような気がします。

ということで、小学生ではじめてアメコミを手にしたときは、まさか将来的にアメコミに携わるなんて夢にも思わなかったわけですが、こうしてまた大人になってから数十年振りにアメコミを読んでみると、ストーリーだけでなく、そのアートワークもまた興味深く、違った楽しみ方に触れることができました。

本書はウルヴァリンという、今ではマーベル・ユニバースを代表する顔である人気キャラクターにスポットを当てており、複雑なキャラクターの歴史を知らなくても十分に楽しめる内容です。往年ファンの読者のみなさまはもちろん、2013年公開の映画『ウルヴァリン:SAMURAIではじめて知った! という新規読者の方にもぜひお手に取っていただきたい作品となっております。

さらにX-MENは、5月末に公開された映画X-MEN:フューチャー&パスト』でその過去のストーリーに興味を持たれた方もいるのではないでしょうか。 

ShoPro Books8月新刊にラインナップしているX-MEN/スパイダーマンは、そんなX-MENと我らがスパイダーマンの秘められた過去を、新たなストーリーとして描いています。
X-MEN/スパイダーマン
クリストス・ゲージ[作]
マリオ・アルベルティ[画]

定価:本体1,850円+税
●8月27日発売予定●
マーベルが誇る2大キャラクターがコミック上で初めて顔を合わせた1966年のストーリーも収録! お見逃し無く!

それではまた次回に。


(文責:渡辺直