2018年8月14日火曜日

ジェダイへの復讐譚『スター・ウォーズ:ダース・モール』

アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!
今週ご紹介する書籍は、来週発売の『スター・ウォーズ:ダース・モール』です。

カレン・バン[作]
ルーク・ロス[画]
定価:本体1,800円+税
●2018年8月23日頃発売●

本書は、『エピソード1/ファントム・メナス』で登場するや瞬く間にシリーズ屈指の人気キャラクターになったシスの暗黒卿ダース・モールを主人公とした単独コミックスで、時系列的には32BBY(Before Battle of Yavin)以前の出来事を描いた正史作品です。

本書底本となる原書は、2017年2月から7月まで米国で刊行された全5章のミニ・シリーズ『ダース・モール』と、同じく2017年2月に刊行された読み切り短編『プローブ・ドロイド・プロブレム』からなります。

まずは簡単にダース・モールの略歴をご紹介します。


ダース・モールの略歴


ダース・モールは、頭の角と顔の入れ墨が特徴的なダソミリアン・ザブラク(※惑星ダソミアに住むザブラク種族で、別称ナイトブラザー)です。
魔女マザー・タルジンの息子として生まれ、幼い頃ダース・シディアスに才能を見出され彼のアプレンティス(弟子)となります。

エピソード1では、ジェダイ・オーダーを抹殺するというダース・シディアスの壮大な復讐計画の実行部隊として活躍するも、最後オビ=ワン・ケノービとのライトセーバーの戦いで胴体を真っ二つに割られ、惑星ナブーの反応炉シャフトの底へ落下して死んだと思われました。

しかしモールは、腰から下を失った状態でなんとか生き延び、アウター・リムの惑星ロソ・マイナーに棄てられ、廃棄物でできた6本脚の下半身を手に入れ、怒りと復讐心でほとんど正気を失った状態で10年以上生きていました。

そしてクローン戦争期の20BBY、マザー・タルジンの命令でモールを探しに来た弟サヴァージ・オプレスに発見され、故郷ダソミアに連れ戻され、タルジンの魔法で正気を取り戻します。

その後、モールは闇社会の勢力をまとめたシャドウ・コレクティヴを組織し、クローン戦争の第3勢力として暗躍するとともに、オビ=ワン・ケノービへの復讐を開始することとなります。

……モールというと、ジェダイへの"強烈な怒り"という印象が強いですが、本書ではそのルーツが語られます。
それでは、本書の粗筋を注目ポイントとともにを見ていきましょう。


『スター・ウォーズ:ダース・モール』粗筋


シスは既に死に絶えた、と長く思われていた時代。シス・オーダーはジェダイに気づかれることなく1000年以上脈々と受け継がれていました。
そして32BBY、ついにシスが動き出します。

ダース・モールの抑圧された怒り

物語は、熱帯雨林の惑星トゥオン・ケテイでダース・モールがラスター狩りをする場面から始まります。


ラスターといえば、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で初登場した捕食クリーチャーですが、非常に獰猛で捕獲が難しいことから希少価値が高く、収集家にとって垂涎の的となってます。"トリリアの虐殺"を引き起こしたことでも有名です(その詳細は現時点では不明)。

"恐れ""怒り""憎しみ"……。
そんな感情のはけ口として、モールは次々とラスターを倒していきますが、ラスターを倒してもモールの怒りの感情は慰められません。

続いてのシーンは、銀河共和国の首都惑星コルサント。
ダース・モールは暗闇から、ジェダイ・ナイトのカト・キインとそのパダワンに憎しみの視線を向けます。

しかしジェダイと戦うことはマスター・シディアスに禁じられているため、その抑圧された怒りが晴れることはありません。

シディアスはジェダイ・オーダーを抹殺するための深淵な復讐計画を持っており、モール個人の怒りの感情でシスの存在をジェダイに知られることは決して許せることではありません。

「もしお前が余の施した準備と作戦を危機に陥れることがあれば…、ジェダイ以外の者がお前を始末すると知れ」

シディアスは、決して弟子に優しいタイプのマスターではありません。一方のモールもまた、師に従順なアプレンティスではありません。

先の話ですが、クローン大戦期以降モールの怒りの矛先は元師であるダース・シディアスにも向けられますが、その兆候がすでに本書で垣間見ることができます。

キャド・ベインとオーラ・シング

シディアスが危惧したように、モールの怒りの感情は定期的にガス抜きしないと計画を台無しにする危険があるため、シディアスはモールに新たな任務を授けます。

シディアスの手駒の一つである通商連合の協力者が、ケラックス星系で海賊に軟禁されているのを助けるよう命じられたモールは、その救出作戦の過程で、ある機密情報を偶然知ることとなります。

ジェダイ・パダワンが犯罪カルテルに捉えられていて、なんとオークションにかけられるというのです。

シディアスに知られることなくジェダイ(パダワンですが…)を殺す絶好の機会と捉えたモールは、シディアスには内緒でオークション会場への潜入を試みようとします。

ここでモールは、ある大物賞金稼ぎ達を雇います。

…キャド・ベインとオーラ・シングです。

キャド・ベイン:
クローン戦争期に活躍した惑星デュロ出身の賞金稼ぎです。共和国軍クローン軍団の遺伝子提供者としても有名な賞金稼ぎジャンゴ・フェットがジオノーシスの戦いで死んだ後、銀河一有能な賞金稼ぎと目されました。
後にドュークー伯爵やダース・シディアス、ハット大評議会の仕事も請け負い、特殊能力はないもののその武器と知恵でジェダイとも堂々と渡り合う実力者です。パルパティーン最高議長誘拐計画にも参加しました。
その活躍は、主にTVシリーズ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』で描かれます。

オーラ・シング:
衛星ナー・シャッダ出身の女性賞金稼ぎ。銀河で最も恐れられる殺し屋の一人で、スキンヘッドに突き出たアンテナが特徴的。
クローン戦争中、父親ジャンゴ・フェットを亡くした幼いボバ・フェットを訓練しました。
また、ズィロ・ザ・ハットの依頼を請けて、惑星オルデランでパドメ・アミダラ元老院議員暗殺未遂事件を引き起こしたこともあります。
その最期は、映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の作中、ソロの師匠トバイアス・ベケットによって殺されたと噂されました。

……本書を通じてキャド・ベインとオーラ・シングはモールと行動を共にします。二人の活躍も本書注目ポイントの一つです。

ダース・モールの怒りの理由

「天の高みか、地の底か どこへ我らは落ちてゆくか かつての巨人はかくも小さくなりにけり…」

これは作中度々出てくるマントラで、かつて何千人もの古代シスがマラコアの大戦でジェダイによって虐殺された恨みを忘れぬようにモールが唱えるものです。

作中モールのヴィジョンの中で、幼い頃シディアスに連れて行かれて見た惑星マラコアが記憶として蘇ります。
荒廃したシス・テンプル、戦いに敗れ石と化したシスの先人達、自分達の自由のためにシスの自由を無慈悲に奪ったジェダイ……、若きシスにとってジェダイへの復讐心を掻き立てるに十分な光景がヴィジョンとして展開されます。

殺戮者ジェダイによるシス大虐殺の歴史……それがモールの憎しみが癒えぬ理由なのです!


なお、その際ジェダイによって使用された武器がクロスガード型ライトセーバーで、ファースト・オーダー=レジスタンス紛争期に、ダークサイドの戦士カイロ・レンのライトセーバーのデザインに取り入れられました。

TVシリーズ『スター・ウォーズ/反乱者たち』では、ジェダイ・ナイトのケイナン・ジャラス、その弟子エズラ・ブリッジャー、元ジェダイのアソーカ・タノがマラコアを訪れ、モールが見たのと同じ悲惨なマラコアの光景を目にしました。

エルドラ・カイティスとの接触

まんまとジェダイ・パダワンのオークション会場に潜入したモールは、ついに念願のジェダイ(パダワンですが…)と一対一で対面し、ライトセーバーを抜きます。

ジェダイとシスが対峙する1000年ぶりの出来事です。

ジェダイとシスの1000年ぶりの対決といえば、『エピソード1/ファントム・メナス』で、ダース・モールとクワイ=ガン・ジンがライトセーバーで戦ったタトゥイーンの対決が有名ですが、実はその前に1000年ぶりの対決(?)が実現していたのです。

エルドラ・カイティスは、美人と名高いトワイレックの女性パダワンです。
トワイレックのジェダイといえば、オーダー66で死亡したアイラ・セキュラが有名ですが、カイティスもセキュラに負けず劣らずの美人かつフォースの実力者です。

果たしてモールの復讐は完遂するのでしょうか?

以上、簡単ですが『スター・ウォーズ:ダース・モール』第2章までの粗筋をご紹介しました。ここまでは本書のほんの触りです。ここから先は来週ぜひ本書を手に取ってお楽しみください。

今週のアメコミ魂はこの辺りとさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました!
(文責:小出)

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2018年8月7日火曜日

期待の新シリーズ『スーパーサンズ』が満を持して登場!


「さあ、やるぞ!ロビンとスーパーボーイ、反撃開始だ!」
「なんで君の名前が先なの?」
「年が上だから」
「身長は?」
「黙れ」

いよいよ今月23日頃に邦訳本が刊行される『スーパーサンズ』
2016年にはじまったDCリバースの中でも、DC期待のニューホープ、スーパーボーイことジョナサン・ケントと、ロビンことダミアン・ウェインの活躍を描く本シリーズは、看板タイトルの一つといってよいでしょう。
本日のアメコミ魂では一足先に『スーパーサンズ』の見どころをご紹介したいと思います。

ピーター・J・トマシ[作]
ホルヘ・ヒメネス[画]
定価:本体2,300円+税
●2018年8月23日頃発売●


『スーパーサンズ』人気の秘密


本国アメリカでは、『Super Sons』は2017年2月に創刊され、2018年5月に#16および1 Annualをもってファースト・シーズンが一旦終了となってますが、今月8月1日に続編の『Adventures of the Super Sons』がミニシリーズとして始まっています。

日本でも池袋ヴァースコミックスさんはじめ原書の売行きが上々らしく、前評判が高いといって良いでしょう。

クリエイター陣は、本書のプレリュード(序章)ともいうべき『スーパーマン:トライアルズ・オブ・スーパーサンズ』やニュー52で『バットマン&ロビン』を執筆した脚本家のピーター・J・トマシと、『ドラゴンボール』の鳥山明や『NARUTO』の岸本斉史の影響を受けたと語るスペイン人アーティスト、ホルヘ・ヒメネスのコンビです。

ホルヘ・ヒメネスは日本の読者には馴染みやすい絵柄で、愛くるしいジョンや意地悪なダミアンの仕草や表情を描くのにうってつけのアーティストといえます。
赤いスニーカーに破れたジーンズ、Sマークのジップアップパーカー姿というジョナサン・ケント扮するスーパーボーイのデザインは、ホルヘ・ヒメネスの手によるものです。

一方、作家として過去ダミアンとジョンのどちらにも深く関わってきたピーター・J・トマシは、本シリーズの根幹ともいうべき作家です。
特にアメコミ界の鬼才グラント・モリソンから『バットマン&ロビン』のバトンを見事に引き継いだように、ロビンことダミアンについて現在彼の右に出るライターはいないでしょう。

またDCリバース『スーパーマン』シリーズについても、ライター兼アーティストのパトリック・グリーソンとともに担当しており、将来DC全体を牽引する人気キャラクターになるポテンシャルを秘めたスーパーボーイを、現在進行形で育てているといっても過言ではありません。

アメリカでの人気の高さ

アメリカでは『スーパーサンズ』は大変人気があり、子どもたちがジョナサンやダミアンの格好をしたり、親子でコスプレを楽しむ人もいるそうです。
また、ファースト・シリーズが#16で終了した際には、惜しむ声がネットを中心に多く聞かれたそうです。

なぜこのように人気が高いのでしょうか?

これについてピーター・J・トマシがインタビュー記事で語っており、その理由として、(たとえスーパーパワーを持っていたとしても)子どもが等身大の子どもらしく描かれている一方、ストーリーは子どもから大人まで楽しめる作りとなっているからだろうと推測しています。

また、本シリーズを楽しむのに、DCユニバース全体の世界観を知っている必要がない点も、多くの世代に受け入れられた要因だと語っています。

一方、子どもを主人公とする漫画として、表現が残酷になり過ぎないよう少年漫画特有の配慮もしたそうです。

いずれにしても、『DCスーパーヒーロー・ガールズ』『DCインク』『DCズーム』レーベルの創刊など、新たな若い読者層を獲得するためのDCコミックスの近年の経営方針を考えると、おのずとDCの本作への期待の高さが伺い知れます。


ジョナサン・ケントとダミアン・ウェインのプロフィール


二人のプロフィールを簡単にご紹介しておきます。

まず二人の共通点として、非常に有名かつ偉大な父を持つ点です。
『スーパーサンズ』では、ジョンとダミアン二人の関係性のみならず、偉大な父親達との関係性も見どころの一つです。

ロビン

本名ダミアン・ウェイン。13才。5代目ロビン。
その能力は、卓越した武術、武器のエキスパート、格闘戦術、身体能力です。超人的なスーパーパワーは持っていません。
コミックス史的な初登場は、『Batman』#655(2006年)です。

バットマン(ブルース・ウェイン)と彼の宿敵ラーズ・アル・グールの娘タリアの間に生まれ、幼少期は母方で暗殺者として育てられました。
その結果、13才にしてDCユニバースにおける偉大な戦士達の多くを遥かに超える能力を備える一方、ひどく生意気でひねくれた性格を持つようになりました。

DCリバースでは、若手ヒーローチームである「ティーン・タイタンズ」を結成し、中心メンバーとして活躍します。こちらは小社『ティーン・タイタンズ:ダミアン・ノウズ・ベスト』で描かれています。
その他、ニュー52期には『バットマン・インコーポレイテッド:ゴッサムの黄昏』(小社刊)で一度戦死しますが、その後ニュー52版『バットマン&ロビン』で復活し、主演雑誌『ロビン:サン・オブ・バットマン』で1年ほど活躍し後にDCリバースを迎えました。

スーパーボーイ

本名ジョナサン(ジョン)・ケント。10才。
能力は父親同様(それよりかなり未熟ながら)、高い耐久力と怪力とスピード、飛行能力、透視能力、ヒートビジョン、スーパーブレスといったスーパーパワーを持ちます。
コミックス史的には『Convergence: Superman』#2(2015年)で初登場と、かなり最近のキャラクターです。

父親はDCリバース版スーパーマンです。
すなわち、ニュー52で活躍したスーパーマンではなく、それより前の『クライシス・オン・インフィニット・アース』(1985年)後に登場し、ニュー52版スーパーマンからその立場を引き継いだ者です。
なお、ニュー52版スーパーマンは2016年『ファイナル・デイズ・オブ・スーパーマン』で死亡しました。
母親は元「デイリー・プラネット」敏腕記者のロイス・レーンです。

彼の特徴は何といっても、クリプト人と人間の両方の血を受け継ぐ点です。
その結果、単なる"スーパーマンⅡ世"ではなく、スーパーマンの能力とロイスの活発な性格を持ち合わせた、人間味あふれる魅力的なキャラクターとなるポテンシャルを秘めています。

子どもらしい素直さと可愛らしさを持ち、誰もが愛さずにいられない性格の持ち主です。

先述の『コンバージェンス』で誕生したジョンは、『スーパーマン:ロイス&クラーク』で幼少期が描かれた後、『スーパーマン:サン・オブ・スーパーマン』『スーパーマン:トライアルズ・オブ・スーパーサン』(いずれも小社刊)などで登場した後、本書でいよいよ本格的に活躍を始めることなります。

本シリーズの見どころ

ジョンとダミアンという、共通点より相違点の方が多い二人の少年の関係性と成長が、本シリーズ一番の見どころでしょう。

ダミアンは、優れた知性を持ちながらその頭脳を悪巧みに使うような少年で、常に大人に反抗する悪ガキです。
一方のジョンは素直でまっすぐな性格の持ち主で、周りへの気遣いもできる心優しい少年です。自己中心的なダミアンのことを嫌ってます。

DCは本シリーズの宣伝で、「世界を救うかもしれない永遠の好敵手、ただし先にお互い殺し合わなければ…」と表現しました。そんな二人がどう力を合わせて成長していくか、ハラハラしながら見守るのも本書読者の楽しみ方の一つでしょう。


本書のチラ見せ


最後に少しだけ本書の内容をご紹介します。(※ネタバレなし)

▲冒頭紹介のシーンがコチラ

冒頭からスーパーボーイとロビンのクローン?達に囲まれ、絶対絶命のピンチを迎えるジョンとダミアン。
なぜこんな状況になってしまったのかというと……、

事の発端は、レックスコープ系列施設で侵入やハッキングが頻発しているとの情報を掴んだダミアンが、ジョンを巻き込んで調査に乗り出したことです。

向かった先はメトロポリスにあるレックスコープのビル。

ビルをよじ登っているところをレックス・ルーサーに見つかってしまう二人ですが、ジョンを犠牲にして(^^;)ダミアンは一人ビルに侵入します。

ダミアンはハッキングした監視カメラの映像から、アマゾ・ウィルスに感染したレジー・マイヤーという少年の存在を突き止めます。

やがてレジーの恐るべき性格と能力を知ったダミアンは、父親の力を借りることなくジョンと二人で危機に対処しようとしますが、果たしてうまくいくのでしょうか……。

ダミアンの計画(悪巧み?)にいやいやながら付き合わされるジョン、そして貧乏くじを引くのもいつもジョンというお決まりのパターンが、見ていて微笑ましい限りです(;´∀`)・・・うわぁ・・・

……DCのみならずShoPro Booksも期待を込めてお送りする推しの一冊、再来週の発売をぜひ心待ちにしてください!

今週のアメコミ魂はこのあたりとさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました!
(文責:小出)

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2018年7月24日火曜日

見どころ満載!『バットマン:アイ・アム・ベイン』

アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!
本日ご紹介するコミックは、見どころ満載の一冊です。『アイ・アム・ゴッサム』『アイ・アム・スーサイド』と続いた"アイ・アム三部作"の最終巻となる『バットマン:アイ・アム・ベイン』です。

トム・キング[作]
デイビッド・フィンチ他[画]
定価:本体2,300円+税
●2018年7月19日頃発売●

収録作品は、表題作"I AM BANE"(邦題:「ベイン襲来」)に加え、バットマンがキャットウーマンにプロポーズする、バットマン史に残るロマンチックな一章"EVERY EPILOGUE IS A PRELUDE"(邦題:「終章、そして序章」)、2017年アイズナー短編部門受賞の珠玉の一篇「忠犬」、そして古典的ホラー・ヒーロー、スワンプシングの嘆傷を描いた「勇者と沃土」と、いずれも好編揃いとなってます。

どのエピソードも面白く、さらにお値段の割にページ数も多く、バットマン好きもそうでない人にもぜひお薦めしたい一冊です。

ではさっそく内容を見ていきましょう!


『バットマン:アイ・アム・ベイン』の見どころ


本書は、スコット・スナイダー[作]とグレッグ・カプロ[画]のコンビで"名作"といわれたTHE NEW 52!バットマンの続編といえるシリーズ(DC REBIRTHシリーズ)作品です。

担当作家は、元CIA対テロ・センター勤務という異色経歴の持ち主で気鋭脚本家のトム・キングと、『フォーエバー・イービル』(小社刊)など重厚な絵柄に定評のあるデイビット・フィンチで、DCリバースの中でも旗艦と位置付けられる本シリーズを任されるだけあって、期待に違わぬ出色となっています。

特にデイビット・フィンチのアートは躍動感と重量感を併せ持ち、バトルシーンの多い本書にふさわしい筆致を披露していると思います。べインの血管の浮き出た隆々とした筋肉、殴ったときの血しぶき、ヴェノムを脳に注入した瞬間の筋肉が膨張する様など、バットマン誌にふさわしいクオリティといえます。

ストーリー的には、本書はTHE NEW 52!の続編とはいえ、特にTHE NEW 52!シリーズを読んでなくても理解できる内容になっています。

しかし、DC REBIRTHシリーズ第1巻となる『アイ・アム・ゴッサム』、第2巻『アイ・アム・スーサイド』の内容は知っていると、本書をより楽しめると思います。
そこで、簡単に前二巻の粗筋をご紹介しておきます。

『アイ・アム・ゴッサム』


デューク・トーマスを新たなサイドキックに従え、ゴッサムの守護者として活動を続けるバットマンの前に、彼に憧れヒーロー活動を始めたメタヒューマン、ゴッサムとゴッサムガールの兄妹が現れた。

驚異的な身体能力、不死身の肉体、超視力を持つ彼らを、バットマンは自らの後継者として育てていくことを考え始めた矢先、神の正気すら奪うことのできるサイコ・パイレートと、彼を操るヒューゴ・ストレンジによって、ゴッサムとゴッサムガールの精神は破壊され、怒りの感情に支配されたゴッサムは暴走を始めた。

相手に応じて自らの力の限界を制御することができるゴッサムを、出動したジャスティス・リーグですら止められない中、ゴッサムガールがゴッサムを殺すことで終止符を打つのだった。

兄を殺したことで完全に精神に異常を来したゴッサムガールを治療するには、サイコ・パイレートの力が必要だ。
バットマンは彼女を救うため、サイコ・パイレートがいるベインの独裁国家サンタ・プリスカ島への潜入を決意した。

『アイ・アム・スーサイド』


バットマンは、政府機関タスクフォースXの長官アマンダ・ウォラーと手を組み、自らのスーサイド・スクワッドを結成した。

選ばれたメンバーは、格闘技の達人ブロンズタイガー、もう一つの人格スカーフェイスの支配下にあるベントリロクイスト、かつてベインの元から脱出したことのあるパンチ、パンチの恋人ジュエリー、そして危険な怪盗キャットウーマンの5人だ。

単身空からサンタ・プリスカに侵入したバットマンは一度はベインに捕まり、かつてベインが17年間を過ごした地下牢に叩き込まれるが、容易く抜け出し、ベントリロクイストとキャットウーマンを裏門から招き入れた。
一方ブロンズタイガーとパンチとジュエリーの三人は、ベインへの面会と称して正門から堂々と施設内部に侵入した。

奮闘の末、洗脳が効かないベントリロクイストの特性を利用して、最終的にバットマンはベインからサイコ・パイレートを奪還することに成功するのだった。

「ベイン襲来」

続いて本書本編のストーリーをご紹介します。

ゴッサムを襲撃したベインは、ディック・グレイソン、ジェイソン・トッド、ダミアン・ウェインの三人をバットケイブに吊るし、キャットウーマン、ブロンズタイガー、デューク・トーマス、ゴードン本部長を誘拐し、バットマンに対しサイコ・パイレートとの交換取引を持ち掛けた。

しかしバットマンとキャットウーマンの計略で、逆に腹心の部下トロッグ、ゾンビ、バードを倒されてしまう。

万策尽きたベインは、サイコ・パイレートを取り戻すために、彼が収監されるアーカム・アサイラムに単身侵入することを余儀なくされる。

しかしこれもバットマンの計画の一部だった…!

アーカム・アサイラムで待っていたのは、バットマンに協力するマクシー・ゼウス、トゥーフェイス、ソロモン・グランディ、アミグダラ、スケアクロウ、ミスター・フリーズ、ファイヤーフライ、ブラックスパイダー、フラミンゴ、マンバット、ザーズ、マッドハッター、ドクター・フォスフォラス、ハッシュ、カッパーヘッド、そしてリドラーといった凶悪ヴィラン達だったのだ。

ベインがサイコ・パイレートとバットマンがいる部屋に辿り着くには、立ちはだかるヴィラン全てを倒さなければならない…!!

…そう、バットマンはヴェノムで増強されたベインと直接戦う不利を考え、アーカム・アサイラムのヴィラン達とベインを戦わせることで、ベインを消耗させて戦いを有利に運ぼうと考えたのです。

この作戦を聞いて、ピンとくる方もいらしゃるでしょう。

1993年に発表された『Knightfall』でベインがバットマンを倒したときに取った作戦への意趣返しです。

『Knightfall』でベインは、バットマンと直接戦っても負けると考え、ジョーカー、スケアクロウ、リドラー、ポイズン・アイビー、マッドハッター、ベントリロクイスト、ファイヤーフライ、ザーズ、アミグダラといったアーカム・アサイラムのヴィラン達を解き放ちバットマンに対処させることで、バットマンを精神的にも肉体的にも弱らせ、最後ベイン自らウェイン邸に乗り込みバットマンの背骨をへし折ったのです。

このようにバットマンを唯一倒した男であるベインの優れた点は、単に強靭な肉体と戦闘力を持つだけでなく、知性も非常に優れている点にあります。

そこで今回、バットマンは入念な準備をした上でベインと対峙することにしたのです。
その結末がどうなったかは、ぜひ本書を手に取ってご覧ください。

"アイ・アム~"に込められた意味

本シリーズの特徴の一つは、その印象的なサブ・タイトルです。

vol1が『アイ・アム・ゴッサム』、vol2が『アイ・アム・スーサイド』、そして本書vol3が『アイ・アム・べイン』です。
このタイトルに込められた意味は何でしょうか。

字面を見れば、それはバットマン以外の実在するキャラクター(ゴッサム、スーサイド・スクワッド、べイン)を指しています。しかし、バットマン誌のタイトルである以上、これらは逆にバットマン自身を指していると考えてよいでしょう。

つまり、まず"ゴッサム"は、THE NEW 52!から続くテーマである"バットマン=ゴッサム、ゴッサム=バットマン"、まさにバットマンのオルターエゴ(分身)であり、アイデンティティ(行動原理)を指すと思います。

続いて"スーサイド"(自殺)は、バットマンの戦い方です。つまり、墜落する飛行機からゴッサムシティと乗客を守るために飛行機の屋根に飛び乗って操縦したり、ゴッサムガールを救うために独裁国家サンタ・プリスカに侵入したりと、まさに命を捨てるかのようなバットマンの戦い方を指していると思います。

そして"べイン"とは、バットマンの生き方を指すと思います。
本書において、"べインの人生=バットマンの人生"を明確に示すシーンがあります。
雨のゴッサムシティで二人が最初に対決するシーンです。母親を失った二人の少年が苦難を乗り越え、仲間を作り、やがて最強のライバルの存在を知るまでの二十数年が、走馬燈のように対比して描かれます。
一見全く違う人生を歩む二人ですが、まさに瓜二つです。

しかし、本質は瓜二つですが、環境においては大きな断絶があります。
片や裕福なお坊ちゃん、片や文字通り地獄の底から這いあがった男。その大きすぎる環境の違いにより、二人が相容れることはやはり不可能なのでしょう。
本書において似たもの同士の二人は、不可避的に決定的な対決の場に引き寄せられるのです。

「終章、そして序章」

このように、"アイ・アム三部作"における裏テーマは、"バットマン=ゴッサム""バットマン=スーサイド""バットマン=べイン"です。そしてそのテーマにおいて描写されるのは、祝福でなく悲劇です。

その哀しい現実は、「ベイン襲来」における戦いのクライマックスで叙述されるブルース・ウェインの母マーサ・ウェインの語り、および全てが終わった後、「終章、そして序章」で描かれる、正気を取り戻したゴッサムガールとバットマンの会話において描かれます。

ここでバットマンは、はっきりと「好きでバットマンをやっているわけじゃない」「バットマンとしての生き方は、私にとって幸せじゃない」と述べます。

なぜ幸せじゃないのか?それはバットマンが「恐れを抱いている」からです。

それに対しゴッサムガールは、「わたしたちは恐怖と戦える」「あなたは何がしたいの?」とバットマンに問いかけます。

この重要な問いかけが、バットマンの何かを吹っ切らせたのでしょう。

この後、ブルース・ウェインはバットマン史に残るであろう重要な行動に出ます。

キャットウーマンへのプロポーズです。

あらゆるバットマンファンに届けたいこの感動的なシーンを見るだけでも、本書は一読の価値があります。


その他の見どころ


バットバーガー

本書冒頭でブルース・ウェインが歴代ロビンたちとランチ・ミーティングをする場所が、なんと「バットバーガー」なるファーストフード・ショップです。

どうやら最近ゴッサムシティにできたバーガーショップらしく、店員はバットマンやワンダーウーマンのコスチュームを着て、メニューは「NIGHT-WINDS(ナイトウィングの手羽先)」「KGBLT(KGビーストのBLTサンド)」、チキンナゲットならぬ「ROBIN NUGGET」、シーザーサラダならぬ「IVY SALAD NOT POISON(毒なし)」、内装もバットマンにちなんだデザインになっていて、おそらく脚本家のトム・キング一流の遊び心だと思われます。

さらにポテトは「Jokerize(ジョーカー化)」できるらしく、緑と赤と白のフレーバーを加えられるそうです。

それにしても、執事に育てられた堅物のブルース・ウェインは、ファーストフード店には超絶場違いで、完全に浮いてます。
ブルース・ウェインがナイフとフォークでハンバーガーを食べようとする様子は、本書冒頭の見どころの一つ(?)ですので、ぜひお楽しみに!

アイズナー賞短編部門受賞作「忠犬」

巻末に収録されている二つの読み切り短編の一つ「忠犬」は、私が特に好きな作品ですが、最初読んだときはお恥ずかしながら意味が分かりませんでした。

簡単に粗筋を紹介すると、ジョーカーが棄てたエースという名の狂犬を、アルフレッドが引き取って、躾(しつけ)するという内容です。

わずか8ページの作品で、最初何が面白いのか分からなかったのですが、最後のページの最終コマでようやく意味が分かり、今では読み返すたびにニヤニヤしてしまいます。

脚本家は本編同様トム・キングです。
上で紹介した「バットバーガー」メニューの小ネタだったり、次にご紹介する「勇者と沃土」の原題が2008年から2011年までカートゥーンネットワークで放送されたバットマンのアニメシリーズ「The Brave and the Bold」をもじった「The Brave and the Mold」であることを考え合わせると、おそらくトム・キングという作家は大変ウィットに富んだ人物なのでしょう。

もしかしたら、彼はバットマン誌にユーモアの要素を持ち込んで、これまでと少し違ったバットマン像を作り上げてくれるかもしれませんね。

「勇者と沃土」

本書最後の短編です。

主人公はスワンプシングという1971年にレン・ウェインとバーニー・ライトソンによって生み出されたキャラクターです。
不朽の名作『ウォッチメン』のアラン・ムーアのアメリカ・デビュー作として描かれたことがあり、また1982年に『怪人スワンプシング/影のヒーロー』、1989年に『怪人スワンプシング』と2度も映画化された往年のカルトホラー・ヒーローです。

スワンプシングの上記の特徴を意識してか、この作品も演出の面で色々と工夫が施されています。

古いサイレント映画のようなクラシックなチャプタータイトルのロゴ、『ウォッチメン』を想起させる均等な9分割のコマ割りと、バナー状の横長5コマのコマ割りを整然と並べて見せることで、作品全体がレガシーな雰囲気を帯びています。

また本章は、本章がUSで発表される2か月前(2017年4月)に他界したバーニー・ライトソンに捧げる作品ともなってます。

古典的キャラであるスワンプシングという主題と相まって、本書の最後を飾るにふさわしい重厚な作品といえるでしょう。


…以上、長文になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。見どころ満載の本書の魅力が伝われば幸いです。
今週のアメコミ魂はこのあたりで。また来週お会いしましょう!
(文責:小出)

▼お気に入りの記事がありましたら、ぜひ皆様のSNS等でご紹介してください。ただし、画像の無断転載はご遠慮ください。

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2018年7月17日火曜日

今週発売『スペクタキュラー・スパイダーマン:イントゥ・ザ・トワイライト』

アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!
毎日うだるような暑さで体調など崩されていないでしょうか?
こんな日は街の上をクモ糸でスイングできたらさぞ気持ちいいでしょうね。

今日取り上げるコミックスは、ニューヨークの街を軽やかにスイングする"親愛なる隣人"スパイダーマン個人誌です。

チップ・ズダースキー[作]
アダム・キュバート他[画]
定価:本体2,300円+税
●2018年07月19日●


アメリカで大好評の「スペクタキュラー・スパイダーマン」シリーズ


スパイダーマン個人誌といえば「アメイジング・スパイダーマン」が主要誌ですが、本誌は2017年8月からスタートしたセカンド・タイトル、「ピーター・パーカー:スペクタキュラー・スパイダーマン」#1-6(プラス#0)をまとめたシリーズとなります。

久々の"スペクタキュラー~"誌となる本シリーズは、2017年5月にフリーコミックブックデイ(※)でマーベルが配布した「特別号」に10Pにわたって収録されたイントロダクション(#0)に始まり、創刊号は23万部以上を売り上げ月間ランキング1位(年間ランキング4位)を獲得するなど、本国アメリカで大いに盛り上がりを見せているシリーズとなっています。

※フリーコミックブックデイとは…

毎年5月の第一土曜日に全世界のアメコミショップで開催され、お店に行くだけでアメコミがタダで何冊も貰えるという、アメコミファンのお財布にやさしいイベントです。

元々は、アメコミファンの裾野を広げ、大人から子供までアメコミファンが年に一度地元のアメコミショップに集まって交流を深めようという目的で、DCコミックス、マーベル・コミックス、ダークホース・コミックス、IDWパブリッシング、BOOM!スタジオ、ダイナマイト・エンターテインメント、イメージ・コミックスなどメジャーからマイナーまでのアメコミ出版社と、アメリカ全土のコミックショップ2,300店以上が協力して実現した企画です。

日本・東京でも秋葉原のブリスターコミックスさんや池袋のヴァースコミックスさんが参加されてますので、来年の5月第一土曜日によかったら足を運んでみてはいかがでしょうか。


「スペクタキュラー・スパイダーマン」誌の歴史


スパイダーマンの"スペクタキュラー~"シリーズとしては、1976~1998年の第1期(#1~263)と、2003年~2005年の第2期(#1~27)に続く、今回が第3期になります。

(※なお、2017年に始まった第3期では当初#1からナンバリングされていましたが、第7号以降は、第1期・第2期と号数を通算し、#297~とナンバリングされており、本国アメリカでは2018年7月現在#307まで続いています。)

「アメイジング・スパイダーマン」以外のスパイダーマン誌としては、スパイダーマンとマーベルヒーロー達がチームアップする「Marvel Team-Up」というシリーズが1972年にありましたが、「スペクタキュラー・スパイダーマン」は3番目のスパイダーマン個人誌として登場しました。

創刊のきっかけですが、当時マーベル・コミックスの経営にも携わっていたスタン・リーが「スペクタキュラー・スパイダーマン」初代脚本家となるジェリー・コンウェイに、「アメイジング・スパイダーマン」の脚本を手掛けてほしいと打診しましたが、レギュラー脚本家としてレン・ウェインが既にいたことからジェリー・コンウェイは断りました。

そこでスタン・リーは、よりスパイダーマンのキャラクター性とピーターの日常生活にスポットを当てた新たなオンゴーイング・シリーズとして「スパクタキュラー・スパイダーマン」の創刊を決意したそうです。


2017年版「スペクタキュラー・スパイダーマン」のコンセプト


現在「アメイジング・スパイダーマン」誌においては、ピーター・パーカーはトニー・スタークばりに巨大IT企業パーカー産業のCEOを務める大金持ちとなっています。

しかし昔ながらのスパイダーマンファンにとっては、何をやっても誤解され、運に見放されたニューヨークの平凡な青年であるピーター・パーカーを懐かしむ気持ちもあります。

そんなファンの要望に応えるべく、"親愛なる隣人"であるスパイダーマン(ピーター・パーカー)への原点回帰を図ったのが、本書「スペクタキュラー・スパイダーマン」シリーズといえます。

本書において、設定自体は「アメイジング・スパイダーマン」と共通で、ピーター・パーカーはパーカー産業のCEOで、スパイダーマンは(表向き)ピーター・パーカーに雇われたボディーガードとなっています。

しかし、本書ではそういった面にあまり触れず、主に描かれるのは、何をやっても少し裏目に出る"パーカー・ラック"の持ち主で、善行をしても"公共の敵ナンバーワン"と誤解される一人の青年、そう我々にとって馴染み深い"親愛なる隣人"なのです。

初期設定に忠実な本シリーズは、昔ながらのスパイダーマンファンにとって親しみやすい内容である一方、スパイダーマンをまだよく知らない新しい読者がこれから入るのにも最適な一冊といえるでしょう。


ヒューマン・トーチ


本書の楽しみの一つとして、「Marvel Team-Up」ばりに様々なマーベルヒーローたちが出てくる点です。

本書を通じてスパイダーマンがコンビを組むのが、ファンタスティック・フォーのヒューマン・トーチです。
年齢が近い若者同士、一緒に映画を見る約束をしたり(結局すっぽかされますが…)、カフェでお茶したり(ピーターのデートをこっそり覗き見するためですが…)と、ピーター・パーカーを"普通の青年"として描くのに欠かせない役柄を演じています。

ヒューマン・トーチことジョニー・ストームは、ニューヨークで実姉のスー・ストームに育てられ、16才のときに、実姉とその婚約者、操縦士の4人で宇宙飛行をした際に超能力を手に入れ、ファンタスティック・フォーを結成しました。

主な能力は、飛行能力と自身の体を発火させ炎を操る能力で、「人間たいまつ」と呼ばれます。
性格はやんちゃなプレイボーイで、本書で披露するピーター・パーカーとの絶妙なコンビで読者を楽しませてくれてます。


他にも出てくる大物ヒーローたち


本書では他にも大物マーベルヒーローが続々と登場してきます。
しかも単なるカメオ出演ではなく、ある程度ストーリーにがっちりと組み込まれている点が読者には嬉しいところです。

アントマン

冒頭スパイダーマンがコソ泥を捕まえる際、ウェブフォームが壊れてピンチ(?)になったところを助けるのが、アントマンです。

アントマンといえば、8/31公開映画『アントマン&ワスプ』で今一番熱いマーベルヒーローですが、アントマンが登場する邦訳コミックスは意外と少ないので、どんなキャラクターか知るのに本書で予習してみるのは如何でしょう?

ブラックウィドウ

MCUで人気のロシア出身女性スパイです。
本書では、夜のビル屋上で突然スパイダーマンを狙撃して襲います。果たしてその理由は?

アイアンハート

本書時点でトニー・スタークに代わって活動する女性アイアンマンです。初登場は『インビンシブル・アイアンマン:ウォーマシン(仮)』で、小社から邦訳版が9/20頃発売予定ですので、もしお財布に余裕があればぜひ予約していただけたら嬉しいです。

▲※原書書影に掲載の女性はメリー・ジェーンで、アイアンハートではありません。

独力でアイアンマンのパワードスーツを開発してしまうほどの天才少女で、上記コミックスでは自分のヒーローネームを何にするか友達に相談する場面が大変微笑ましいです。

カルナク

成人の際テリジェンミストを浴びることで超人的な能力を獲得するインヒューマンズのロイヤルファミリーの一人。格闘術の達人であり、あらゆる人や物の弱点を見抜く目を持っています。

2018年3月に日本でも放送されたドラマ『インヒューマンズ』をご覧になった方は覚えていらっしゃることでしょう。

ドラマの原作ともいうべき1998年刊行のアイズナー賞受賞コミックス『インヒューマンズ』は、小社から同じく2018年3月に刊行され、その中でもカルナクは印象的な役割を演じてますので、こちらも良かったらチェックしてみてください。



デイリー・ビューグル誌元発行人ジェイムソンとの対決


本書では、キングピン、バルチャー、ティンカラーといったスパイダーマンファンにお馴染みの旧敵たちが登場します。
しかし中でもスパイダーマン最大の"天敵"といえば、デイリー・ビューグル誌発行人ジェイムソンではないでしょうか?

1963年の「アメイジング・スパイダーマン」#1から登場し、ことあるごとにスパイダーマンを目の敵にしてきた人物です。
一時ニューヨーク市長の座に就いたこともありましたが、現在は無職で「脅威と迷惑」というスパイダーマンの自警活動を非難する個人ブログを運営しています。

本書でスパイダーマンはついにジェイムソンと対決します!

…対決といっても決闘ではなく、60分一本勝負の独占インタビューにスパイダーマンが応じるのです。
双方の思惑が合致して実現する独占インタビューですが、その結末は要注目です。


以上、今週のアメコミ魂はこの辺りで。最後までお読みいただきありがとうございました。来週の更新もお楽しみに!
(文責:小出)

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2018年7月10日火曜日

邦訳『バットマン』シリーズを時系列で読む!



「アメコミ魂」読者のみなさん、こんにちは!

すでに小社の「海外コミックス カタログ 2017-2018」をお持ちの方や小社のTwitterFacebookをよくご覧になっている方はご存知かもしれませんが、今日は改めて邦訳『バットマン』レギュラー・シリーズの読む順番をお知らせしたいと思います。

来週19日木曜日には、リバースシリーズ“I am”三部作の第3巻『バットマン:アイ・アム・ベイン』が発売され、来月23日には、リバースシリーズにおけるバットマン誌のもう一つの冒険譚『オールスター・バットマン:エンド・オブ・アース』が発売されますので、このタイミングで時系列を整理しておきたいと思います。

邦訳アメコミは、ナンバリングされていないタイトルが多いので、どういう順番で読めばいいのかわからなくなってしまうことがあります。しかも、たくさん刊行されているシリーズであれば尚更ですよね。これから『バットマン』を読もうと思っている読者さんも、途中までは読んでくれていた読者さんも、このリストを活用していただければと思います!


『バットマン』シリーズを読む


現在、小社より刊行した邦訳版のバットマン関連誌は、約50タイトルございます。機会があれば、全体タイトルについて言及していきたいと思いますが、今回は、大型リランチとなった「ニュー52」から始まるレギュラー・シリーズを時系列で整理しておきましょう。



上記の流れになるのですが、文字が小さくて読みにくいかと思いますので、下記に転記します。

●ニュー52シリーズはここから始まるーー梟の法廷編
1)『バットマン:梟の法廷(THE NEW 52!)』
2)『バットマン:梟の街(THE NEW 52!)』
2-2)『バットマン:梟の夜(THE NEW 52!)』

●宿敵ジョーカー登場!ーー喪われた絆編
3)『バットマン:喪われた絆(THE NEW 52!)』
3-1)『ジョーカー:喪われた絆〈上〉(THE NEW 52!)』
3-2)『ジョーカー:喪われた絆〈下〉(THE NEW 52!)』

●バットマンの起源に迫る!ーーゼロイヤー編
4)『バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街(THE NEW 52!)』
5)『バットマン:ゼロイヤー 暗黒の街(THE NEW 52!)』

●ニュー52シリーズのクライマックス!
6)『バットマン:真夜中の事件簿(THE NEW 52!)』
#)『バットマン:エターナル〈上〉(THE NEW 52!)』
#)『バットマン:エターナル〈下〉(THE NEW 52!)』
7)『バットマン:エンドゲーム(THE NEW 52!)』
*#)はバットマン生誕75周年イベントの大型企画コミックになりますが、時系列的にはここに入ります。

●失踪したバットマン……物語は終幕へ
8)『バットマン:スーパーへヴィ』
9)『バットマン:ブルーム』
10)『バットマン:エピローグ』

●新章突入! 新たな冒険譚が始まるーーリバース編
11)『バットマン:アイ・アム・ゴッサム』
12)『バットマン:アイ・アム・スーサイド』
13)NEW『バットマン:アイ・アム・ベイン』(7月19日頃発売)

『バットマン:アイ・アム・ベイン』
トム・キング[作] デイビッド・フィンチ、ダニー・ミキ[画]
7月19日頃発売
定価:本体2,300円+税
 ●リバースシリーズのもう一つのバットマン誌『オールスター・バットマン』
『オールスター・バットマン:ワースト・エネミー』
NEW『オールスター・バットマン:エンド・オブ・アース』(8月23日発売)

『オールスター・バットマン:エンド・オブ・アース』
スコット・スナイダー[作] ジョック、フランチェスコ・フランカビラ他[画]
8月23日頃発売
定価:本体2,300円+税

小社のDCコミックスの邦訳コミックスは100タイトルを超えるのですが、その半分を占めているのがバットマン関連作品です。それだけ「バットマン」は日本の読者さんに受け入れられているんだなと感じます。今後もぜひバットマン作品を応援してくださいね!

最後に、来週19日(木)に『バットマン:アイ・アム・ベイン』と同時発売となるマーベル作品もお知らせします。こちらも人気作です! ぜひ2冊ともご一読ください。

『スペクタキュラー・スパイダーマン:イントゥ・ザ・トワイライト』
チップ・ズダースキー[作] アダム・キュバート[画]
7月19日頃発売
定価:2,300円+税


では、また来週!

(文責:田中太)


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2018年7月3日火曜日

2人のスパイダーマンって…誰と誰??

アメコミ魂をご覧の皆様、こんにちは!
本日ご紹介する書籍は、2人のスパイダーマンが次元を超えて初めて出会う物語『スパイダーメン』です。

ブライアン・マイケル・ベンディス[作]
サラ・ピチェッリ[画]
定価:本体2,100円+税
●2018年6月20日頃発売●


「2人のスパイダーマン??」「次元を超えて??」
……どういうこと?

「スパイダーマンといえば、ピーター・パーカーじゃないの?」「何この黒いコスチュームの人?」
……疑問だらけです。

これを理解するには、まずはマーベルの「アルティメット・ユニバース」から理解する必要があります。
……アルティメット・ユニバース?? もう訳分かりませんね^^;

ですが、ご安心ください。

この機会に「アルティメット・ユニバース」「アルティメット・スパイダーマン」について詳しく調べてみました。本書を読む前にこれだけ知っていれば、色々な疑問にくじけずに本書を最後まで読めることでしょう!

やや長文になりますが、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。


アルティメット・ユニバースとは?


マーベル多元宇宙について


マーベル・ユニバースは一つではありません。我々のよく知るマーベル・ヒーローが活躍するいわゆる"正史"と呼ばれるメイン・ストリーム(「アース616」)とは別に、スパイダー・グウェンがいる「アース65」、スパイダーハムがいる動物の世界「アース8311」、マーベル・シネマティック・ユニバースの世界「アース199999」などが存在し、多元宇宙(マルチバース)構造となってます。
ちなみに、私たちが住むこの現実世界は「アース1218」という設定です。

こういった多元宇宙の中でも、正史に次いで奥行きある幅広い世界を構築しているのが、本書の舞台になっているマイルズ・モラレス版スパイダーマンが活躍する「アルティメット・ユニバース」(「アース1610」)です。

アルティメット・ユニバースが生まれたわけ


なぜこのような多元宇宙が生まれたのでしょうか。

それは、1939年からマーベルの正史世界が何十年にもわたって脈々と積み重ねられた結果、一方で設定が複雑になりすぎて新規読者が入りずらくなり、一方で築き上げた設定に縛られストーリーがマンネリ化してきたことにより、90年代にコミック市場が大きく低迷したためです。

この状態を打破するため、マーベルは既存の正史世界を残しつつ、「マーベルのヒーローが実際に今、現実にいたらどうなるか」というテーマを突き詰め、よりリアリティのある娯楽性の高い作品レーベルとして世に送り出したのが「アルティメット・ユニバース」です。

この取り組みは成功を収め、特にそのリアリティのある世界観やビジュアル、深みのある人物描写、読者を飽きさせないテンポよい展開は、『アベンジャーズ』などのマーベル・シネマティック・ユニバースに多大な影響を与え、今日のマーベル人気への貢献度は大といえるでしょう。

そして、2000年に始まった「アルティメット」シリーズの第一弾としてリリースされたのが『アルティメット・スパイダーマン』です。


スパイダーマン史の概略


このアルティメット・スパイダーマンは、正史と同じくピーター・パーカーを主人公として始まりましたが、シリーズが進むにつれ少しずつ正史とは異なる歴史を辿っていくことになります。

それはおそらく、正史版スパイダーマンにおいてファンの共感を得られなかった出来事や、時代に合わない設定を刷新したためだと思われます。

アルティメット・スパイダーマンを理解するには、正史世界のスパイダーマン史の概略だけでも知っていると、その違いが分かりより楽しめます。

そこで、まずは正史スパイダーマンにおいて、いつどんな出来事が起こったのか、歴史を紐解いていきたいと思います。

正史世界(アース616)のスパイダーマン


●『アメイジング・ファンタジー』#15(1962年)
ニューヨーク・ミッドタウンで親戚のメイおばさんとベンおじさんに育てられた高校生のピーター・パーカーは、見学に行った研究所の実験中に特殊なクモに噛まれ、特殊な能力を得てスパイダーマンとなる。
さらに、自作の「ウェブ・シューター」とコスチュームを着て、テレビ出演して人気者になる。
しかし、たまたま見逃した強盗がベンおじさんを殺害したことにより、「大いなる力には大いなる責任が伴う」ことを学ぶ。
この記念すべきエピソードは、小社刊『ベスト・オブ・スパイダーマン』に掲載されてますので、機会がございましたらぜひご覧ください。


●『アメイジング・スパイダーマン』#2(1963年)
ピーターは、スパイダーマンの能力を生かしヴィランの写真を撮り、「デイリー・ビューグル」社に写真を売ってお金を稼ぎ始める。

●『アメイジング・スパイダーマン』#28(1965年)
ピーターがミッドタウン高校を卒業。

●『アメイジング・スパイダーマン』#31(1965年)
ピーターがエンパイア・ステート大学に入学。同級生のグウェン・ステイシーやハリー・オズボーン、マイルズ・ウォーレン教授らと知り合う。

●『アメイジング・スパイダーマン』#42(1966年)
ピーターがメリー・ジェーンと初めて顔を合わせる。

●『アメイジング・スパイダーマン』#90(1970年)
グウェンの父であるジョージ・ステイシー警部が、スパイダーマンとドクター・オクトパスの戦いに巻き込まれ殉職。

●『アメイジング・スパイダーマン』#121(1973年)
グウェン・ステイシーが、スパイダーマンとグリーン・ゴブリンの戦いの最中に首の骨を折って死亡。

●『アメイジング・スパイダーマン』#149(1975年)
グウェンを恋慕していたマイルズ・ウォーレン教授である怪人ジャッカルが、スパイダーマンのクローン体を作り本物と戦わせる。敗れたクローン体は消滅した(と思われた)。

●『アメイジング・スパイダーマン』#185(1978年)
ピーターがエンパイア・ステート大学を卒業。

●『アメイジング・スパイダーマン』#257(1984年)
メリー・ジェーンが、スパイダーマンの正体を昔から知っていたとピーターに告白。

●『アメイジング・スパイダーマン』#258(1984年)
スパイダーマンが別の惑星で手に入れた強力な黒いスーツが、エイリアン共生体「シンビオート」であることが判明し、決別する。裏切られたと感じたシンビオートはスパイダーマンに復讐を誓う。

●『アメイジング・スパイダーマン』#290-292(1987年)
ピーターはメリー・ジェーンにプロポーズし、最初ためらっていたMJも結婚を決意する。

●『アメイジング・スパイダーマン・アニュアル』#21(1987年)
ピーターとメリー・ジェーンが結婚。

●『アメイジング・スパイダーマン』#298(1988年)
スパイダーマンから離れたシンビオートが元新聞記者のエディ・ブロックと融合してヴェノムが誕生。

●『アメイジング・スパイダーマン』#344(1991年)
ヴェノム共生体の一部が連続殺人鬼クレタス・カサディと融合してカーネイジが誕生。

●『ウェブ・オブ・スパイダーマン』#118(1994年)
『アメイジング・スパイダーマン』#149で死んだと思われたクローン体、ベン・ライリーがピーターの前に現れ「スカーレット・スパイダー」としてヒーロー活動を開始する。以後2年に及ぶ「クローン・サーガ」開幕。

●『スペクタキュラー・スパイダーマン』#226(1995年)
実はベン・ライリーの方が本物で、ピーター・パーカーの方がクローン体だったと判明する!

●『スペクタキュラー・スパイダーマン』#229(1995年)
ピーターは引退を決意し、スパイダーマンの座をベンに譲る。

●『スパイダーマン』#75(1996年)
やはりピーターが本物でベンがクローン体だったという真実が明らかとなる。ベンはピーターをかばって死亡。「クローン・サーガ」完結。

●『ニューアベンジャーズ』#1(2005年)
スパイダーマンがアベンジャーズの正規メンバーとなる。トニー・スタークはピーターを自らの後継者として育てようと決意する。

●『シビル・ウォー』#2(2006年)
トニー派としてピーターは超人登録法に賛成し、政府側につく。15才からスパイダーマンをやっていたとマスコミの前で公表。
なお、この公表および後のトニー・スタークとの決裂によるMJとメイおばさんの警護解除を一因として、メイおばさんがキングピンが雇った殺し屋に狙撃され重傷を負う。

●『アメイジング・スパイダーマン』#544-545(2007-2008年)
大型クロスオーバー・イベント「ワン・モア・デイ」開始。メイおばさんを救うため、ピーターはMJとの「愛」と引き換えに大悪魔メフィストと取引をする。これによりMJとの結婚、メイおばさんの負傷、「世間に正体を明かしたこと」などの出来事が消滅する。
この一連の出来事は、邦訳版『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』(小社刊)で読むことができます。


●『アメイジング・スパイダーマン』#546(2008年)
世界中の人々はスパイダーマンの正体を知らない状態に戻った。ピーターは独身に戻りメイおばさんと暮らし始め、独身に戻ったMJも西海岸で一人暮らしを始める。
設定を変更した"新しい"スパイダーマンシリーズは、邦訳版『スパイダーマン:ブランニュー・デイ1~3』(小社刊)にまとめられてます。


●『スパイダーメン』#1-5(2012年)
異次元のスパイダーマンであるマイルズ・モラレスと出会う。(*本書)
正史世界であるアース616とアース1610が初めてクロスオーバーした歴史的事件となる。

●『アメイジング・スパイダーマン』#682-687(2012年)
ドクター・オクトパスが臨終の時を迎える。

●『アメイジング・スパイダーマン』#698-700(2012-2013年)
ピーターとオクトパスの肉体が入れ替わり、ピーターは末期状態のオクトパスの肉体のまま命を落とし、ピーターの体に入ったオクトパスが生き残るという結末を迎える。アメイジング・スパイダーマン誌一旦終了。

●『スペリオル・スパイダーマン』#1-31(2013年)
ピーターの体に入ったドクター・オクトパスが新たなスパイダーマンとして活動開始。様々な装備を開発し、パーカー・インダストリーズを設立。数々の戦いの後、ドクターオクトパスは自分よりピーター・パーカーこそスパイダーマンとして優れていると認め、肉体をピーターの精神に明け渡し消滅。

●『アメイジング・スパイダーマン』#1-18(2014-2015年)
新シリーズがリランチ。#9-15では、様々な次元のスパイダーマンが集結、共闘する「スパイダーバース」イベントが行われる。

●『アメイジング・スパイダーマン』#1-32(2015-2017年)
さらに新シリーズがリランチ。スパイダーバースから帰還したピーターは、パーカー・インダストリーズを巨大企業へと成長させ、ピーターとしてもスパイダーマンとしても大成功を収め今に至る。

……いかがでしょうか。50年に及ぶスパイダーマンの歴史のほんの概略ですが、私自身こうやって整理してみると、正史世界のスパイダーマンを大分理解できたように感じます。

続いてアルティメット・ユニバースのスパイダーマン史をご紹介します。

アルティメット・ユニバース(アース1610)のスパイダーマン


【初代スパイダーマン】

●『アルティメット・スパイダーマン』#1-7(2000-2001年)
15才のピーター・パーカーは、オズボーン産業が遺伝子改良を施したクモに噛まれ、クモに似た超能力を手に入れ、スパイダーマンとしての活動を始める。ベンおじさんが強盗に殺される。

●『アルティメット・スパイダーマン』#13(2001年)
ピーターは密かに恋心を抱くメリー・ジェーンに自分の正体を告白する。

●『アルティメット・スパイダーマン』#14(2001年)
ピーターが通う高校にグウェン・ステイシーが転校してくる。

●『アルティメット・スパイダーマン』#28-32(2002-2003年)
グウェンの父親ジョン・ステイシー警部が死亡。ジョンの元妻は娘を引き取ることを拒否したため、グウェンはパーカー家で居候を始める。

●『アルティメット・スパイダーマン』#33-39(2003年)
ピーターの父親が開発していた特殊スーツが、大学生のエディ・ブロックと融合してヴェノム誕生。

●『アルティメット・スパイダーマン』#54-59(2004年)
グウェンがスパイダーマンの正体に気づく。

●『アルティメット・スパイダーマン』#60-65(2004年)
カート・コナーズ博士がピーターのDNAを使ってカーネイジを作り出す。グウェンがカーネイジに生命力を吸い取られて死亡。

●『アルティメット・スパイダーマン・アニュアル』#1(2005年)
メリー・ジェーンと別れたピーターが、X-MENのキティ・プライドと交際開始。

●『アルティメット・スパイダーマン』#97-105(2006-2007年)
ドクターオクトパスがピーターのDNAを使って複数のクローン体を作り出す。グウェンとカーネイジのハイブリッド体がクローンとして復活。ピーターはメイおばさんに自分の正体を明かす。

●『アルティメット・スパイダーマン』#123-128(2008-2009年)
ヴェノムがカーネイジの共生体を吸収・融合。それによりグウェンは普通の人間に戻る。

●『アルティメット・スパイダーマン』#155(2011年)
ピーター16才の誕生日を迎える。

●『アルティメット・スパイダーマン』#156-160(2011年)
「アベンジャーズvs.ニュー・アルティメッツ」事件に巻き込まれ重傷を負ったスパイダーマンは、ゴブリンら宿敵たちに襲撃を受け、最後ゴブリンと相討ちになり、メイおばさんたちに見守られつつ息を引き取る。


【二代目スパイダーマン】

●『アルティメット・コミックス:オールニュー・スパイダーマン』#1-5(2011-2012年)
ピーター死亡の11か月前、マイルズ・モラレス少年はオズコープ研究所から盗み出された遺伝子改良されたクモに噛まれ、ピーターと同じ超能力を手に入れる。数か月後、ピーターが死亡する現場を目撃したマイルズは、彼の遺志を継いでスパイダーマンになることを決意する。シールドのニック・フューリー長官から黒いコスチュームを与えられる。

●『スパイダーメン』#1-5(2012年)
マイルズは異次元から来たピーター・パーカーと出会う(*本書)

●『アルティメット・コミックス:オールニュー・スパイダーマン』#13-18(2012-2013年)
マイルズはメイおばさんとグウェンから、ウェブ・シューターを手渡される。キャプテン・アメリカがアメリカ臨時大統領に就任するとともに、マイルズはアルティメッツ(アルティメット・ユニバース版アベンジャーズ)に加入する。

●『アルティメット・コミックス:オールニュー・スパイダーマン』#19-22(2013年)
マイルズとヴェノムの戦闘中、マイルズの母親リオが警官の放った流れ弾に当たって死亡する。マイルズはスパイダーマンとしての活動から引退する。

●『アルティメット・コミックス:オールニュー・スパイダーマン』#23-28(2013年)
母の死から1年、14才になったマイルズは再びスパイダーマンのコスチュームを着る決意をする。

●『マイルズ・モラレス:アルティメット・スパイダーマン』#1-7(2014-2015年)
死んだはずのピーター・パーカーが生きていることが発覚。ピーターはスパイダーマンの座をマイルズに託し、メリー・ジェーンとともに旅立っていく。

●『アメイジング・スパイダーマン』#9-14(2015年)
異世界のスパイダーマンが一同に会するクロスオーバー・イベント「スパイダーバース」にマイルズも参加。

●『マイルズ・モラレス:アルティメット・スパイダーマン』#8-12(2015年)
アース616の地球とアース1610の地球が衝突して、二つのユニバースが一時的に消滅する。この場面は『デッドプールVol8:オール・グッド・シングス』(小社刊)でも描かれていた。

●『シークレット・ウォーズ』#1-9(2015-2016年)
アース616の地球とアース1610の地球が衝突したことによって複数の異世界が融合して一つになる。これによりマイルズは正史世界の住人となり、正史世界に2人のスパイダーマンが存在することとなった。

●『スパイダーマン/デッドプール』#2(2016年)
正史世界でピーターとマイルズ(それとデップー)が共闘する。詳しくは『スパイダーマン/デッドプール:ブロマンス』(小社刊)をご覧ください。



……以上になります。ふぅ、膨大な歴史に目がくらみますね。調べる方もかなり大変でしたよ……。

というのは本当は嘘で、実はアルティメット・スパイダーマンの歴史については、訳者の高木亮氏による本書封入解説にこれ以上ないくらい詳しくまとめられていたんです。私はそこから抜粋しただけでした(๑≧౪≦)
(これでも、ほんの一部です。)

細かい文字で6ページに渡って、アルティメット・ユニバースからアルティメット・スパイダーマンの歴史まで網羅したこの解説書を読むだけでも、本書は一見の価値ありです。

以上、今週のアメコミ魂はここまでとさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました!来週またお会いしましょう。
(文責:小出)


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2018年6月26日火曜日

マーベル1キュートな生き物、デッドプール・ザ・ダック爆誕!

アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!
今日ご紹介するコミックは、巷で「何これ、超かわいい♥」と評判の『デッドプール・ザ・ダック』です。

いまやマーベルきっての人気者「デッドプール」と、マーベル1悩み多き「ハワード・ザ・ダック」のクロスオーバー作品(?)といえば、旦那さん、こりゃ見逃すわけにはいきませんぜ。

スチュアート・ムーア[作]
ヤコポ・カマーニ[画]
定価:本体2,000円+税
●2018年06月20日頃発売●

この作品は、アメリカで2017年1月から3月にかけて発売されたコミックの邦訳版で、作家はスチュアート・ムーア(作)とヤコポ・カマーニ(画)のコンビとなってます。

スチュアート・ムーアは、1996年にDCコミックス/バーティゴの編集者としてアイズナー賞を受賞し、作家としても『シビル・ウォー』の小説版を執筆するなど幅広く活躍する作家さんです。
一方のヤコポ・カパーニといえば、小社刊『ホークアイvs.デッドプール』の作画を担当していたのでお馴染みの読者さんもいらっしゃることでしょう。

物語の設定としては、2016年にはじまった「オールニュー・オールディファレント」シリーズ真っただ中で、デッドプールがアベンジャーズの一員となり、またスパイダーマンとも人気デュオを形成、さらには自分のチーム「マークス・フォー・マネー」を切り盛りして…と大活躍している頃のお話です。

そんな引っ張りだこのデップーさんが、片やハワードと合体してたなんて、いつの間に!?という感じです。

おっと、思わず口を滑らせてしまいましたが、そう、本書最大の見どころは、デッドプールとハワード・ザ・ダックが合体♥しちゃうことなんです。

合体といっても、違うことを想像した方はごめんさない。そっちじゃないんです。
…といっても、カバー表紙を見れば、誤解しないですね^^;
はい、文字通り二人の肉体が一つになっちゃうんです。

さあ、一体全体なんでそんなことになってしまったのか、見てみましょう。


ハワードさん、マジ半端ないっす


お話は、デッドプールがシールド・エージェントのメアリー捜査官から「とある名の知れた異星人」の捕獲を頼まれるところからスタートします。

メアリー捜査官は本書が初登場の人物ですが、それもそのはず、これまでシールドの受付担当で現場に縁がなかったからだそうです。
見た目もキャラもごくごくフツーですが、本書で彼女はなかなか良い味を出してるので要注目です。

さてページをめくると場面は一転、ハードボイルドな風貌の割にシニカルでペシミスティックなアヒル、ハワード・ザ・ダックの登場です。

「この世界のどんづまりで、俺は何やってんだ」と、世の男性が共感しそうな渋いセリフとともに登場するハワード・ザ・ダックは、この物語のもう一人の主人公です。

…はい、確かに彼は主人公…のはずです。

ですが、「どこに行こうと自分は脇役にすぎないんじゃないか」「だったら主役は誰だ」と、やたら自分が主人公かどうかに拘ります。この拘りは何でしょう?

続けて、「映画に出ても、興行収入や批評家受けがバッチリな奴なんて、…嫌いだ」と意味深なセリフ。

そうです、ハワード・ザ・ダックといえば、"映画史上最大の失敗作"と名高い(?)1986年映画『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』に触れないわけにはいかないでしょう。

あのSWシリーズやインディ・ジョーンズを手掛けたジョージ・ルーカス監督が製作総指揮をとったにも関わらず、最低の映画を選ぶゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)で最低作品賞・最低脚本賞・最低視覚効果賞・最低新人俳優賞(アヒルの着ぐるみを着て奮闘した6人の諸君)の4部門を見事受賞。当時、世の話題をかっさらた映画の主人公が、我らがハワード・ザ・ダックなんです。

…副題含めたタイトルだけ見てもB級映画感が「半端ないって!」て感じがします。
(検索エンジン対策で、流行語を入れてみました。)

お客さんのレビューを見ても、「ちゃちい特撮、ぬいぐるみ丸出しのダックの作り」「この主人公、可愛くない、むしろキモい」と散々な評判だったみたいです。

ハワードのガールフレンド、ビバリー・スウィッツラーの友人フィル役を演じたティム・ロビンスは、試写の最中に「嫌な汗が出てきた」と語ったほどだそうです。ハワード、まじ半端ないって!

ちなみに、一見不名誉な"ラジー賞4部門受賞"ですが、この賞自体が一種のユーモアで、本当につまらない映画だけじゃなく、出来は素晴らしいがマニアックすぎて一般受けしない作品に与えられることもあるそうです。
例えば、第1回最低主演男優賞を受賞したニール・ダイアモンドは同じ作品(『ジャズ・シンガー』)でラジー賞とゴールデングローブ賞を同時受賞したりしています。

さて、『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』はどっちなんでしょう?

そして、そんなハワード・ザ・ダックを、映画『デッドプール』シリーズが世界中で大ヒットしているデッドプールと共演させるなんて、マーベルもドSですね^^;


まだまだあるぞ、ハワードの痛いエピソード


そんな不憫なハワードですが、さらに詳しく見てみると、物語の中でも外でもトラブルに巻き込まれ、同情せずにはいられないキャラクターなことが分かってきます。

彼の初出は1973年にホラー雑誌『フィアー』#19で、沼地の怪人マンシングを主人公とした物語の「脇役」として登場しました。別の次元から人間の世界にやってきて、早くも次の号で足を滑らせて虚無の彼方に落ちていった……とホントどうでもいいぞんざいな扱われ方ですね、ありがとうございます。

現実世界でも、ディズニー社から「なんかドナルド・ダックにソックリじゃね?」と訴えられたりもしてます。「いやいや、アヒルのキャラ全部がドナルド・ダックに似てるって言われても…」と思ったのですが、1976年刊行の『ハワード・ザ・ダック』#1のカバーイラストを見たら、「そっくり…」と思わずつぶやきました。
ハワードさん、パネェっす…

All Marvel characters and the distinctive likeness(es) thereof are Trademarks & Copyright © 1976 Marvel Characters, Inc. ALL RIGHTS RESERVED.

さらに同時期、キャラクター考案に関わった作家のスティーブ・ガーバーとマーベルの間でハワードの著作権帰属をめぐって裁判になり、最終的にはマーベルに著作権が帰属するということで落ち着きました。

物語の中では、「ハワード=アヒル」ということで"丸焼きにされる"キャラになっていて、今年1月に発売された『デッドプール:トゥー・スーン?』(小社刊)では、夫デッドプールを励まそうとアヒル料理をふるまうためシクラーに丸焼きにされそうになったり、さらに『デッドプール/パニシャー・キルズ・マーベルユニバース』ではデッドプールに丸焼きにされちゃいます。

他にもアメリカ政府によるスーパーヒーロー活動を規制するシビル・ウォーでは、ハワードは超人登録法に従うことを選びますが、いざ登録しようとしたら、ヒーロー(超人)として認識されていなかったというまさかの残念なオチに直面します。

ちなみに、ハワードの主な能力はカンフーならぬクワック・フーを嗜むことです。その実力は、ハワードよりはるかに大きい相手にも対等に渡り合えるほど強いそう。

さらに多少の魔術も使え、かつてドクター・ストレンジからいくつかの呪文を教わり、さらに本格的なトレーニングの申し出も受けたことがありますが、断ったそうです。


楽しい掛け合いとキュートなキャラのオンパレード


……と、知れば知るほど興味深いハワード・ザ・ダックのキャラクターですが、『デッドプール・ザ・ダック』の紹介から大分話が逸れてしまいましたね、失礼しました。

どこまで話しましたっけ?
「とある名の知れた異星人」を捕まえるって話ですね。

その「名の知れた異星人」とは、ロケット・ラクーンです。

ロケット・ラクーンが「ラビーズ」と呼ばれる宇宙狂犬病にかかってしまい、暴れていたんです。

そして、ハワードの近くでデッドプールがロケット・ラクーンに噛まれたことで、冒頭紹介したデップーとハワードの「合体」が生じたのでした。

このように肉体はかわいく合体しましたが、その肉体に入った精神はデッドプールのものです。ハワードは守護霊獣として常にデッドプール・ザ・ダックの肩のあたりにいて、デッドプール・ザ・ダックの中にいるデッドプール(…ややこしい…)と可笑しな掛け合いを繰り広げます。

一つの体をめぐる、攻撃的でいい加減なデップーと悲観論者のハワードの会話の掛け合いが、本書を楽しむ一番のポイントでしょう。

さらにこの二人に絡むように、個性豊かで楽しいキャラたちが続々登場してきます。
冒頭紹介したメアリー捜査官をはじめ、マーベル・ユニバースでちょいちょい出てくる悪徳企業ロクソン社のバソルト警備長、掃除人ヤコフ、そしてもちろんロケット・ラクーン。

そして最後に黒幕として登場するヴィランが、本書をさらに楽しくキュートなものにしてくれてます。
その正体は、本書を手にしたときの楽しみとして取っておきましょう。

一つだけ予備知識としてご紹介しておくと、このヴィランはハワード・ザ・ダック最大の宿敵で、かなり惚れっぽい性格です。先ほど紹介したハワードのガールフレンドのビバリー・スウィッツラーに一目惚れして、無理やり結婚させた過去もあります。

そんな彼の行動と憎めない性格、その個性的な風貌にひっかけたデッドプール・ザ・ダックの駄洒落を楽しんでいただけたら、本書を紹介した私としても本望でございます。

以上、今週のアメコミ魂はこの辺りで。来週またお会いしましょう。

(文責:小出)

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2018年6月19日火曜日

シリーズ最高傑作『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』本日発売

アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!
今月29日にいよいよりSWスピン・オフ作品第2弾『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』が公開になります。

アメリカでは当初期待されていたほどの興行収入をあげられていないなどのネガティブな情報も入ってきていましたが、先週行われたジャパン・プレミアム&レッドカーペットに参加した人のTweetを見てると、「不安を吹き飛ばす内容だった」とかなり絶賛されているようなので安心しました。

個人的には、オールデン・エアエンライクがどんなハン・ソロを演じるのか、「ゲーム・オブ・スローンズ」でドラゴンの母・デナーリスを演じたエミリア・クラークの役回り、そして「結末がビックリらしい」と誰かが言っていたので、その辺りに注目して観たいと思います。

さて、ハン・ソロが待ち遠しいスター・ウォーズですが、SWスピン・オフ第1弾作品にして、いまだファンの間でSW史上最高傑作の呼び声が高いのが『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』です。

そんなローグ・ワンの待望のコミックがいよいよ発売されます!

ジョディ・ハウザー他[作]
エミリオ・レイソー他[画]
定価:本体2,200円+税
●2018年06月20日頃発売●


本日のアメコミ魂では、ローグ・ワンの人気の秘密を改めて考察するとともに、コミック版ならではの見どころをお伝えしたいと思います。


映画ローグ・ワンの魅力


「シリーズ最高傑作」「泣けるスター・ウォーズ」

映画が公開されたとき多くのファンが大絶賛しましたが、なぜあれほどまでにローグ・ワンは多くの人の気持ちを打ったのでしょうか。

SW作品にしてはそこまで派手なスペースバトルがあるわけでもなく、またジェダイとシスの超人的なバトルシーンもありません。

個人的にはローグ・ワンは2017年映画「ダンケルク」に近い、とても淡々とした印象を持ってます。

ルーカスフィルム・ストーリー部門のキリ・ハート氏も、「ローグ・ワンの最初のプロットを見たとき、第二次世界大戦にとても近い雰囲気を感じた」とインタビューで語っています。

二つの映画に共通する要素は何でしょうか。

それは"リアリティ"だと私は思います。

さらにその"リアリティ"の中身は、2つあると思います。

一つは、活躍するのが我々と同じ"普通の人間"であるということです。

確かに、我々一般人にない特殊能力を持ったスーパーヒーロー(ジェダイもそうです)の活躍は見ていてスカッとします。

しかし、人の心を打つのは「普通の人間が英雄的な行動をとったとき」だと思います。
普通の人が何かを犠牲にして頑張る、そこに人は尊さを感じ、感動するのではないでしょうか。

"リアリティ"の二つ目は、「反乱同盟軍はただ"善"ではなく、帝国軍もただ"悪"ではない」という点です。

ローグ・ワンで、ジンを騙して彼女の父であるゲイレン・アーソを殺すのは同盟軍の戦闘機です。
また、ヤヴィン4でローグ・ワンを結成する際にキャシアン・アンドーが語ったように、彼ら同盟軍情報将校達は、スパイ、破壊工作、暗殺など、反乱同盟軍のために数々の汚い仕事に手を染めてきました。

反乱同盟軍といえばレイア姫の持つ高潔なイメージが強いですが、その裏では数々の醜い現実があるのです。

一方帝国軍といえば、皇帝やダース・ベイダー、ターキン総督が持つ冷酷で非人間的な印象が強いです。
しかし本作で描かれた帝国軍兵士は、帝国に反旗を翻したゲイレン・アーソやボディー・ルックはもちろんのこと、帝国のためにデス・スター開発に邁進するオーソン・クレニックも、極めて人間くさい人物として描かれています。

善悪二元論で線引きできるほど世界は単純じゃない。
そんな"リアリティ"が、ローグ・ワンに人が共感する理由だと思います。


映画の魅力を見事に再現したコミック


このような映画の魅力は、コミックでも存分に発揮されてます。

例えば、主人公のジンが同盟軍最高司令部モン・モスマからソウ・ゲレロとの仲介役を頼まれるシーンで、父親が帝国の兵器開発をしていることについてどう思うか尋ねられた際、ジンは「政治的なことなんて考える余裕はなかった」と答えます。

また、ジンの同じ考え方が分かるシーンとして、ソウ・ゲレロから「帝国の旗が銀河全域にはためいてもいいのか?」と聞かれて「旗を見なければいいのよ」とにべもなく答える場面があります。

他のSWシリーズの主人公だったら、ルークにしても、アナキンにしても、レイにしても皆、自分の正義や主義主張を明確に持っていますが、ジンは政治的主張に無頓着です。

しかし、現実の私達の世界を見れば、むしろこちらの方が普通ではないでしょうか。

また、"普通の人"ということでいえば、バリバリの反乱軍情報将校であるキャシアン・アンドーですら同じです。

イードゥーでジンの父親であるゲイレン・アーソを殺そうとしたことをジンに詰られた際に、「いつどこで何をするか、誰もが自分で決められるわけじゃない」と反論します。

他のSWシリーズ、否それに留まらず多くの映画やコミックスやテレビドラマなど全般的に、登場人物は大抵自分の目的(それが善であれ悪であれ)を明確に持っていて、その目的に向けて行動します。

しかしこれも、私達の現実の世界を見ると、自分の目的を明確に持ってそのために行動する(できる)人の方が少数だと思います。

このようなリアルな人間らしい葛藤を抱えているのは帝国軍の人間も同じです。

デス・スターがジェダを破壊し見事テストに合格した際、開発責任者のオーソン・クレニックは「この成功は私の成功だ!あなたのじゃない!」とターキン総督に叫びます。

クレニック長官は自分の目的のためには大勢の命を何とも思わない冷酷で身勝手な人物です。
しかしそんな彼も見方を変えれば、デス・スター計画の現場責任者として、文字どおり自分の命を削って持てる能力と努力の全てを注ぎ込んできたといっても過言ではありません。

そんな彼だからこそ、その功績をターキン総督に横取りされそうになって思わず声をあげずにいられなかったのでしょう。
そこには善も悪もない、極めて人間らしい感情を持った普通の人間だけがいて、分かり易い"悪の権化"がいるわけではありません。


コミック・オリジナルシーン


このように映画の魅力を損なわず見事に再現しているコミック版ローグ・ワンですが、単なる映画のコピーではありません。

コミック版ならではの魅力としてまず、映画には描かれてない重要ないくつかのシーンがコミックには載っています。

例えば、冒頭、映画ではカットされたゲイレン・アーソがボディー・ルックにメッセージを託すシーンが描かれています。

また、イードゥーでボディー・ルックとK-2SOが帝国の貨物船を盗むため走っているシーンがあります。ここでボディー・ルックはK-2SOに「俺たちは同類だ。二人とも帝国の紋章付きだ。」と、二人のアイデンティティを端的に表現した重要なセリフを、象徴的なカットとともに語ります。

また、このやり取りを受けて、スカリフ上空でK-2SOがボディー・ルックに対し「再プログラムがうまくいってるなら、勇敢に戦えるはず」と励ますセリフは、ボディー・ルックだけでなくK-2SO自身にも当てはまる内容になってます。

他にもオリジナルシーンがいくつもあるので、映画と見比べて見ると面白いでしょう。


コミック版の演出


オリジナルシーン以外にも、コミックでは独自の演出が随所に施されていて、単なる映画アダプテーションを超えたコミック媒体ならではの作品として仕上がっています。

エピソードⅣオープニング・クロール

ローグ・ワンは、『スター・ウォーズ/新たなる希望』のたった数行のオープニング・クロールの文章からインスパイアされたという話は有名です。

コミック版ローグ・ワンでは、レイア姫がディスクを受け取った後、ページをめくると1ページまるまるエピソードⅣのオープニング・クロールが描かれて物語が終わってます。

この映画にはない演出で、ローグ・ワンとエピソードⅣが一続きの物語だと実感できます。


生死の問題

前半、ボーディー・ルックの亡命とデス・スター開発という極秘情報をもたらした内通者(ソウ・ゲレロの部下)をキャシアン・アンドーが殺して逃げる際、キャシアンは「まさに生死の問題だ」とつぶやくシーンがあります。

ここはコミックならではの演出が施されたシーンとなっています。

映画では、「内通者殺害」→「ボーディー・ルックの亡命」という順序になっていましたが、コミックでは「ボーディー・ルックの亡命」→「内通者殺害」と入れ替わってます。確かにこの流れの方が、時系列どおりで分かりやすいです。
また、ページを見返してみると、ボーディー・ルックがソウ・ゲレロの手下に捕まったシーンで、キャシアン・アンドーに情報をもたらした内通者が後ろの方にいることがはっきり確認できます。

また、キャシアンの「まさに生死の問題だ」というセリフは、投降の際ボーディー・ルックがソウ・ゲレロの手下に言った「これは(同盟軍全体の)生きるか死ぬかの問題だ」というセリフと符号させることで、内通者一人の命の問題と、同盟軍全体の命運がかかった問題を天秤にかけてます。

つまり、同盟軍全体のためなら人一人の命など何とも思わない、ということです。

このシーン(内通者を殺してキャシアンが壁を登って逃げるシーン)ですが、映画と違ってコミックでは、上から俯瞰した構図になっていて、手前のキャシアンは暗い影になっていて、光の当たる地上には、内通者とストームトルーパーが倒れている様子が描かれてます。

ここでコミック作家陣のジョディー・ハウザーとエミリオ・レイソーが示そうとした意図は、自分達の全体利益のためなら味方も敵も等しく殺す同盟軍は、決して善だけの存在ではない、という厳然たるリアリティだと思います。


爆撃に巻き込まれるクレニック長官を描いたコマ割り

イードゥーで、同盟軍の爆撃に巻き込まれクレニック長官が倒れるシーンは、同時にゲイレン・アーソが死ぬ場面でもあります。

ここで、爆撃で火の海となっている過酷な現実のシーンと、クレニック長官から見たゲイレン・アーソとの思い出を回想するシーンが、全く同じ長方形のコマ割りで交互に淡々と描かれます。

このシーン、映画ではゲイレン・アーソの死にスポットが当たっていましたが、コミックではむしろクレニックの心情に視線が向けられています。

面白いのは、映画でゲイレン・アーソから見たクレニックという人物は、自己中心的でゲイレン・アーソの人生を狂わせた悪人でしたが、クレニックから見ると、二人は良き同僚で良きビジネスパートナーだと考えていたことがコミックのこのシーンで分かります。

クレニックにとって、過去の二人は大変良好な関係で幸せな時代として映り、一方現在は、同盟軍の爆撃に巻き込まれ、またこの後すぐ報告のためダース・ベイダーのいるムスタファーへ移動しなければならないという慌ただしい身で、息をつく間もない過酷な状況です。

「なぜこんなことになってしまったのか……」
クレニック長官の悔恨、悲しみがひしひしと伝わってくる、そんな演出がこのコマ割りから感じられます。


ダース・ベイダーの登場シーンは"赤"

コミック独自の演出としてページのカラーリングがあります。基本、見開き単位またはページ単位で同系色でまとめることで、ページをぱっと開いた瞬間ごちゃごちゃした印象を与えず、また色彩の持つイメージ(色彩心理)からそのシーンの雰囲気を読者に伝えます。

例えば同じ宇宙船の船内でも、キャシアン・アンドーの船内は茶色を基調としてどこか温かみがあり(P30-31)、一方ページをめくったP32-33のターキン総督とクレニック長官が乗るスター・デストロイヤーの船内は寒色系を基調とした冷たく機械的な印象を読者に与えます。

そんなカラーリング演出が最大に効いているのがダース・ベイダーの登場シーンです。

ご存じの通り本作でダース・ベイダーの登場シーンは2回あります。ムスタファーでクレニック長官の報告を聞くシーンと、同盟軍の船に乗り込みライトセーバーで無双するラストのシーンです。

この両シーン、どちらも"赤"が基調です。

"赤"が持つ色彩イメージに「危険」「緊張」があります。
ダース・ベイダーの登場シーンを赤くすることで、クレニック長官、または同盟軍兵士から見たダース・ベイダーの圧倒的威圧感が表現されています。


ローグ・ワンにつながる重要短編も収録


本書は、本編『ローグ・ワン』とともに、本編につながる重要な前日譚となる『キャシアン&K-2SOスペシャル』の読み切り作品も同時収録されてます。

こちらは、キャシアン・アンドーとK-2SOの出会いを中心に描いており、ページ数も36Pと大変読み応えのある内容となってます。

K-2SOは「思ったことをすぐに口に出す」「悲観的な状況をパーセンテージで正確に言う」という性格が特徴的で、ローグ・ワンで一躍人気を博したドロイドです。
彼がどうしてこんな性格になったのか、本書でその原因の一端が読み解けます。

また本短編は、ローグ・ワンはもとよりSW全体に関わる重要な設定に少し関わってます。

「デス・スター開発の遅れ」というエピソードは、レジェンズ作品ではたびたび語られた題材です。ルーカス・フィルムのディズニー買収後、これらの設定がカノン(正史)でどう扱われるか不明でしたが、本書ローグ・ワンで、クレニック長官がターキン総督に対し「セキュリティ問題がデス・スターの開発を送らせている」ことに言及していることで、その設定がカノンでも生きていることが分かります。

本短編でキャシアンは、帝国のセキュリティ・プロトコルを入手するために辺境のコロニーズに訪れ、最終的に成功します。(※どのように成功したかは本書を読んで確かめてください。)
ここで語られた「セキュリティ・プロトコルの取得」が、「デス・スター開発の遅れ」の一因となり、ローグ・ワン本編で語られる「デス・スター設計図の奪取」につながり、最終的にエピソードⅣへと発展していくのです。

そう考えると、この短編の重要性が分かります。


……以上、見どころ満載の本書は、映画『ローグ・ワン』を観てない人はもちろん、観た人にも改めて読んでいただきたい作品です。
長文になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!
今週はこの辺りで。来週もまたお会いしましょう。

(文責:小出)

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2018年6月12日火曜日

日本が世界に放つ!『ニンジャバットマン』の魅力

アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは。
6月に入ってじめじめした天気が続き、気分もすっかり滅入ってしまいますね。
しかしアメコミファンにとっては、6月は『デッドプール2』(6月1日公開)、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(6月29日公開)と痛快な映画が続くので、楽しみにしている方も多いでしょう。

ところで皆さん、6月はもう一本、『ニンジャバットマン』(6月15日公開)という痛快アメコミ映画があるのをお忘れじゃあないですか?

実は私、ワーナーの試写にお邪魔して一足先に拝見させていただいたんですが、いやー最高!あなたたちスゴイよ!という出来映えでした。
一流の職人さん達による、細部まで手の込んだ伝統工芸を心ゆくまで堪能させていただいた、そんな気分です。

今日はそんな『ニンジャバットマン』の魅力を、ワーナーさんの情報解禁ポリシーにしたがって、ネタバレなしにご紹介させていただこうと思います。

BATMAN and all related characters and elements © & ™ DC Comics.
© 2018 Warner Bros. Entertainment All rights reserved.


『ニンジャバットマン』企画のなりたち


そもそも『ニンジャバットマン』を製作したワーナーは、ハリウッドスタジオの中でも各国の文化や特性にあった作品を作ることで定評があります。

そんな中、ワーナーグループ(バットマンの版元であるDCコミックスもその傘下です)のプロパティを使って、日本が世界に誇るアニメーションで表現しようということから本作の企画がスタートしました。

そしてDCキャラクターと日本カルチャーをミックスしたときに、どんな組み合わせが世界中のファンを熱狂させる最高の化学反応を引き起こすか検討する中で、"忍者×バットマン"という、今までありそうでなかった目から鱗のコンセプトが生まれたのです。

この前代未聞の企画を成功させるため、キャラクターデザインに『アフロサムライ』の岡崎能士氏、脚本に『天元突破グレンラガン』の劇団☆新幹線の中島かずき氏、そして映像には『ジョジョの奇妙な冒険』OP映像で世界の度肝を抜いた水﨑淳平監督率いる神風動画という、まさに侍ジャパン!ともいうべきクリエイター陣がここに集結したのです。

日本を代表するアニメクリエイター達がバットマンをどう料理するのか?

日本のみならず世界中のバットマンファンが関心を持つところです。
バットマンといえば、クリストファー・ノーラン監督のダークナイト トリロジーをはじめ「暗い」「重い」といったイメージがどうしてもありますが、本作はエンターテイメント方向に思いっきり舵を切った「奇想天外で」「驚きに満ちた」全く新しいバットマン世界となってます。

もしかしたら「こんなのバットマンじゃねぇ」と思う人もいるかもしれませんが、逆にこれまでのバットマンと同じものを作るのであれば、わざわざ日本のアニメクリエイター陣が手掛ける必要はないともいえるでしょう。

ぜひ頭を空っぽにして劇場に足を運んでいただいたら、この夏一番の痛快エンターテイメントを満喫できると思いますよ!


 ヴィラン達が日本の戦国大名に


本作は、2Dタッチの3Dでほぼ作られていて、2Dの味わいと3Dの奥行き感が絶妙にミックスされ、また細部まで描きこまれた映像のクオリティは必見です。特に、温帯湿潤気候の日本らしい複雑な空の色彩と雲の形が美しいなぁと思いました。

しかし個人的には、それより何より本作の一番の魅力は、設定だと思います。

時は戦国、最強の愉快犯<ジョーカー>による歴史改変を阻止するため、<バットマン>はすべての武器を失い、それでもなお立ち向かう――。

ゴッサムシティのヴィランたちが戦国時代の日本にタイムスリップした。
現代テクノロジーから切り離されたバットマンは、戦国大名となって群雄割拠するヴィランたちの歴史改変を阻止できるのか?
日本と世界の歴史を賭け、時空を超えた壮大な戦が幕を開ける!

この設定だけでも「この映画絶対面白い!」と思ってしまいます。

特に、ヴィラン達が日本の戦国大名になる、というアイデアが面白いと思いました。誰が誰になっているのか簡単に見てみましょう!

■ジョーカー=織田信長
"第六天魔王"と呼ばれ安土城天守にいるジョーカーは、天下統一間近の織田信長という設定になってます。"狂気の道化師"であるジョーカーは、南蛮渡来のマントをはおって時に残忍な行動をとった織田信長と共通するところがありますね。

■ペンギン=武田信玄
甲斐領主であり、"はやきこと鳥の如く"wwと本物のペンギン達を部下にして戦うペンギンは、武田信玄です。ペンギンと武田信玄の共通点は「太っている」「大物感」ぐらいしか思いつきませんが……。

■ポイズン・アイビー=上杉謙信
越後の領主ポイズン・アイビーは上杉謙信です。二人の共通点として、実は「上杉謙信女性説」というのがあります。男性を好み、婦人病を患っていたというのが根拠です。毘沙門天という宗教のために戦争する上杉謙信は今でいう「テロリスト」であり、「エコテロリスト」ポイズン・アイビーと似てるといえば似てますね。

■デスストローク=伊達政宗
隻眼のヒットマンであるデスストロークは、同じく隻眼で、大阪夏の陣で騎馬鉄砲隊で活躍した伊達政宗となってます。作中でデスストロークは、伊達政宗の三日月形の前立ての付いた兜を被ってます。

■ゴリラ・グロッド=豊臣秀吉
両方"サル"だからでしょう。
作中でゴリラ・グロッドは、豊臣秀吉と同じ、日輪が放射状に広がる飾りの付いた兜を被ります。

■トゥーフェイス=石田光成or浅井長政
近江領主トゥーフェイスは、「元検事=インテリ」という点でいえば、優秀な官僚で近江・佐和山城主の石田三成、または「二面性」ということでいえば、織田信長を裏切った近江・小谷城主の浅井長政でしょうか。

……他にも○○が虚無僧に扮してたり、バットケイブが○○だったり、バットマン世界が日本の戦国時代にどう放り込まれてるか、注意して見ていただけたら楽しいと思いますよ!


おすすめ!バットマン・コミックス


最後に、『ニンジャバットマン』を見てバットマンに興味を持った人にお薦めしたい邦訳バットマン・コミックスをご紹介します。

『バットマン:ノーマンズ・ランド』

ペンギン、トゥーフェイス、ジョーカーらヴィラン達が群雄割拠して縄張り争いを繰り広げるという設定が面白かった方には、バットマンを代表する一大巨編『バットマン:ノーマンズ・ランド』がお薦めです。

ボブ・ゲイル他[作]
アレックス・マリーブ他[画]
定価:本体4,200円+税
●好評発売中●

1999年の作品で、無法地帯となったゴッサムシティを舞台にヴィラン達、バットマンとその仲間達、元ゴッサム市警が三つ巴となって血で血を洗う抗争を繰り広げる物語となっていて、これを読めばあなたもバットマン博士になれる!と言えるぐらい読み応えのある作品です。

『バットマン:ノーマンズ・ランド』については、先週の「アメコミ魂」でも詳しく取り上げたので良かったらご覧ください。


『バットマン:キリングジョーク完全版

ジョーカーのサイコパスな魅力に惹かれた方は、ジョーカー誕生譚を描いた『バットマン:キリングジョーク』がお薦めです。

アラン・ムーア[作]
ブライアン・ボランド[画]
定価:本体1,800円+税
●好評発売中●

「ジョーカーは最初からジョーカーだったわけではない。」

ジョーカーの「過去」の悲哀を知ると、「現在」の狂気が物悲しく見えたりもします。

作家陣は、『ウォッチメン』や『Vフォー・ヴェンデッタ』などアメコミ界に数々の金字塔を打ち立てた巨匠アラン・ムーアと、イギリスを代表するコミック・アーティストのブライアン・ボランドのコンビで、1988年に発表された本作はバットマンを代表する作品の一つとなってます。


『バットマン:アイ・アム・ゴッサム』

どうせならバットマンの最新シリーズを読みたいという方には、2016年に発表されたDCリバース版バットマンの第1巻『バットマン:アイ・アム・ゴッサム』がお薦めです。

トム・キング、スコット・スナイダー他[作]
デイビッド・フィンチ、マイク・ジャニン他[画]
定価:本体2,300円+税
●好評発売中●

最近制作されたシリーズなので、先の2作品に比べ絵柄が緻密でコマ割りも動きがあり、全体的に今風な画になっていて読みやすいです。

また、バットマンの魅力の一つといえば、ブルース・ウェインが金に物言わせて揃えた最新テクの数々ですが、『ニンジャバットマン』同様、本作でもバットモービル(自動車)、バットポット(バイク)、バットウィング(飛行機)が緻密な絵柄で登場し楽しませてくれます。


……以上、今週の「アメコミ魂」は6/15公開の『ニンジャバットマン』とバットマン関連コミックスについて書かせていただきました。では来週もお会いしましょう!

(文責:小出)

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2018年6月5日火曜日

『バットマン:ノーマンズ・ランド全巻セット』でアメコミの醍醐味を味わおう!


“人は極限状況においてこそ、その真価を試される。平和な日常において、愛や正義や理想を語るのは簡単である。
けれど、日常の仮面が剥がれ落ち非日常へと変貌した時、人はどんな理想を語り、どんな行動をとるのか?

「ノーマンズ・ランド」は人間という存在の本質を我々に問いかけるドラマでもあるのだ。” ~『バットマン:ノーマンズ・ランド3』解説より抜粋(高木 亮)

「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!
新刊発売のない今週は、いつものアメコミ魂と趣向を変えて、ShoPro Books公式通販で販売している、『バットマン:ノーマンズ・ランド全巻セット』の魅力をまとめた記事(前編)をお届けします。


ところで、ShoPro Booksの通販サイト『ShoPro Books STORE』、皆さまご存じでしょうか?
この通販サイトでは各種アメコミ全巻セットを"ここでしか手に入らない"購入特典付きで販売しておりますが、これまで一番多く売れたセットが『バットマン:ノーマンズ・ランド全巻セット』なんです。
そこで本日はその魅力を深掘りしたいと思います。

(※なお、後編を含む記事全編は、『ShoPro Books STORE』ブログに掲載しております。)

魅力1 総ページ数2000P超!バットマン代表作の一つ


長い歴史を誇るバットマンには、フランク・ミラーの『バットマン: ダークナイト・リターンズ』(1986-87)や『バットマン:イヤーワン』 (1987)、アラン・ムーアの『バットマン:キリングジョーク』(1998)、チャック・ディクソン他の『Batman: Knightfall』(1993)など、名作と呼ばれる作品がいくつかあります。
(※『バットマン: ダークナイト・リターンズ』『バットマン:キリングジョーク』はShoPro Booksから邦訳本が出てますので、機会があればぜひお読みください。)

これ以外にもTHE NEW 52!シリーズなどバットマンには素晴らしいタイトルが数多くあり、正直どれから読んでいいか迷うところですが、グレッグ・ルッカらが手掛けたこの『ノーマンズ・ランド』もバットマン史を語る上で絶対に外せない一大巨編と言えるでしょう。

その概略を簡単に説明すると、『ノーマンズ・ランド』は複数のバットマン関連誌でおこなわれた大型クロスオーバー・イベントで、1999年1月から12月にかけて1年間かけて語られた長大なドラマです。
面白いのは、物語の中の時間軸も1999年の1年間(正確には、ノーマンズ・ランドが始まってから93日目に始まり、1999年12月31日まで)を描いている点ですが、そのほかにも本作はその最初の設定からして読者を惹きつけずにいられない要素が多数あり、思わず「上手いなー」と唸ってしまいます。

……始まりは"クレンチ"という伝染病により数十万のゴッサム市民の命が失われたことでした。続いてマグニチュード7.6の直下型地震が発生し、街は壊滅的被害を受けました。そして最後その息の根を止めたのは、ゴッサムシティに「再建不可能」のレッテルを貼り、ゴッサムとアメリカ本土をつなぐ橋を落とし、物理的にも法律的にもゴッサムをアメリカから切り離したアメリカ政府でした。
そしてライフラインを絶たれた凶悪犯収容施設アーカム・アサイラムで、人道的見地から所長が囚人を街に解き放ったことにより、冒頭述べたような究極の極限状態がゴッサムシティと残った住人に降りかかることとなったのです。

この設定は、名作と名高いクリストファー・ノーラン監督の2012年映画『ダークナイト ライジング』の元ネタになったことから、「本作は読んでないけど、何となく聞いたことあるよ」という方もいらっしゃるでしょう。

そして、無法地帯となったゴッサムをめぐって、アーカムから解放されたヴィランたち、バットマンとその仲間たち、ゴッサム市警の1年に及ぶ熾烈な争いを2000P超にわたって克明に描いたのが『ノーマンズ・ランド』全4巻というわけです。


魅力2 バットマンだけじゃない!主役級の助演キャラクターたち


バットマン作品の魅力は、バットマン以外にも個性豊かで深みのあるキャラクターが多数脇を固めている点にもあります。
ヒーローやサイドキック、ヴィランだけではなく、アルフレッドやゴードン本部長といった普通の人々が主役にもなり得るほど深みのある人物として描かれてます。

これだけ多くの魅力的なキャラクターが出てくる作品は、アメコミの中でもトップクラスなんじゃないでしょうか。

そして『ノーマンズ・ランド』では、そういったバットマンを代表するキャラクターたちがほぼ総出演しており、バットマン大辞典的な書にもなってます。

以下、本書に登場する主要キャラをご紹介します。
彼ら彼女らが極限状態のゴッサムで何を目的に、どのように行動するのか、ぜひ一人一人に注目してみてください。

※太字は、本書またはバットマン史において特に重要と思われるキャラクター。

<バットマンと仲間たち>


バットマン
本名ブルース・ウェイン。ゴッサムシティを守る闇の騎士。

アルフレッド
バットマンの活動を心身ともに支える執事。

ロビン
本名ティム・ドレイク。バットマンの相棒を務める少年。

ナイトウィング
本名ディック・グレイソン。初代ロビン。

アズラエル
聖デュマ騎士団が作り出した聖戦士。『ナイトフォール』事件でブルースが不在の間、バットマンを引き継いでいた。

オラクル
本名バーバラ・ゴードン。ジェームズ・ゴードンの娘。元バットガールで、現在は情報ブローカー。

ハントレス
マフィアのベルティネリ家に生まれたが、両親が殺されたことで、暗黒街の犯罪者達を憎む自警団員。

バットガール
ノーマンズ・ランドに現れた正体不明のヒロイン。

キャットウーマン
本名セリーナ・カイル。怪盗。

レスリー・トンプキンス
慈善クリニックを営む人道主義者の医師。

<ヴィランたち>


◆ペントリロクイスト&スカーフェイス
凶悪な人形を操る、二重人格の腹話術師。

◆スケアクロウ
自ら開発した幻覚ガスを武器に、各個人特有の恐怖症を発症させる。

◆ペンギン
本名オズワルド・コブルポット。ゴッサムシティの暗黒街を牛耳るフィクサー。

◆トゥーフェイス
本名ハービー・デント。顔の左半分が焼け爛れた犯罪者。かつては優秀な地方検事だった。

◇ブラックマスク
ゴッサムの暗黒街を支配するギャングのボスの一人。

◆ポイズン・アイビー
植物性の毒やフェロモンを作り出し、植物を操る環境テロリスト。

◇ニコラス・スクラッチ
カリスマ的な人気を誇るロック・ミュージシャンであり、50万人の信者を抱える新興宗教の教祖。

◇マッドハッタ―
本名ジャービス・テック。『不思議の国のアリス』のキャラクターをモチーフにした悪人で、催眠術の達人。

◇クレイフェイス
泥状の肉体をした怪人。あらゆる形状に姿かたちを変えられる力を持つ。

◇KGビースト
元KGBでロシア最高の暗殺者。バットマンに捕まりそうになった際、自ら左手首を切り落として逃走した。

◇ロックアップ
悪人を逮捕し私設刑務所に投獄する、自称"正義の味方"。

◇ミス・ホワイト
謎の女性。

◇マクシー・ゼウス
ギャングのボスで、カルト教団の教祖。自分をギリシア神話の神ゼウスの化身と信じる誇大妄想狂。

◆ミスター・フリーズ
本名ビクター・フリーズ。低体温を維持する特殊なスーツに身を包み、あらゆるものを凍らせる冷凍銃で戦う。

◆キラークロック
特殊な皮膚病のため爬虫類のような外見をした怪人。

◆べイン
『ナイトフォール』事件でバットマンの背中を折った男。

◇ギアヘッド
全身のほとんどを機械化したサイボーグ。

◇トミー・マングレス
ゴードン本部長に深い恨みを抱く凶悪な殺人鬼。

◇ラットキャッチャ―
ネズミを操ることができる。

◇リンクス
中国系の殺し屋で、霊龍団の元リーダー。

◆ジョーカー
犯罪界の道化王子。

◆ハーレイ・クイン
ジョーカーの相棒。本書は、1999年10月に初登場したハーレイが"二度目"に登場したコミックスである。

◇ツァスツ
人を殺すたびに自分の体に傷をつけるサイコパス殺人鬼。

◇ゴリラ・グロッド
高度な知性を持った類人猿

◇タリア
バットマンの宿敵ラーズ・アル・グールの娘。

◆レックス・ルーサー
世界で最も優秀な頭脳を持ち、最も有名なヴィランのひとり。

<ゴッサム市警(GCPD)>


◆ジェームズ・ゴードン
本部長。

◇サラ・エッセン
ゴードンの妻。

◇ハービー・ブロック
巡査部長。

◆レニー・モントーヤ
巡査。

◆ウィリアム(ビリー)・ペティット
SWATチームの隊長。

◇マッケンジー・"ハードバック"・ボック
刑事。

◇クラレンス・フォーリー
刑事。


……以上、『バットマン:ノーマンズ・ランド全巻セット』の魅力をまとめた記事(前編)をお届けしました。
後編を含む記事全編は、『ShoPro Books STORE』ブログに掲載してますので、こちらもぜひチェックしていただけたら小躍りして喜びます。
(ソチラのブログで初投稿になります!)

今週はこの辺りで!また来週お会いしましょう。

(文責:小出)

▼お気に入りの記事がありましたら、ぜひ皆様のSNS等でご紹介してください。ただし、画像の無断転載はご遠慮ください。

▼ご意見・ご感想・ご指摘・邦訳希望・翻訳者希望・持ち込み企画などは、本ブログの下段にある「メッセージを送る」を押していただき、指定の送信フォームからお送りください(携帯からはウェブバージョンにてご対応ください)。

2018年5月29日火曜日

『デッドプール2』映画公開!最新コミックもみんなで見てね♥


★☆☆☆☆
Oh My God! このコミックはかなり酷いよ。なんたって、1章まるまるスペイン語で書かれてるんだぜ!(スペイン語かどうかすら分かんないけどね…)マジでどうなってんだ!まぁ、第4の壁を壊したり、全体的には面白かったけどね。

★★☆☆☆
デッドプールは最高だけどこのコミックは最低だ。なぜってスペイン語で書かれてるんだ!俺はコミックを読むときに座って翻訳しながら読みたくなんてないんだよ。もし英語圏でコミックを売るなら英語のコミックを作るべきだ。登場人物がスペイン語を話すって設定なら、昔スタン・リーがやったみたいにアポストロフィーを使えばいいだけだろ!

~米国版Amazonレビューから抜粋

……「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!
いきなりAmazonレビューから入りましたが、今日ご紹介する『デッドプール:エンド・オブ・エラー』は、本国アメリカで出版された当初ファンの間で物議を醸した一冊です。

何が物議を醸したかというと、レビューにあるとおり、1章まるまるスペイン語で書かれていたからです。「読めねーよ!」ってわけです。

でもご安心ください。ShoPro Books邦訳版は、全ページ日本語で書かれてます!

( ̄^ ̄)ドヤッ!

ジェリー・ダガン他[作]
スコット・コブリッシュ他[画]
定価:本体2,100円+税
言語:日本語
●好評発売中●


それよりっ!

本日デッドプールを紹介するなら、まず触れるべきはAmazonレビューじゃなくて、6月1日公開映画『デッドプール2』ですね。


映画『デッドプール2』


いよいよ今週金曜日6月1日に、映画『デッドプール2』が全国ロードショーとなります。
2016年に公開された前作は、全米で20世紀フォックス史上最高のオープニング成績を達成し、日本でも興収20億円という特大ヒットとなり、デップー旋風が世界中に吹き荒れました。

あれから早2年。ついに続編が見れるんです!
といいつつ実は私、一足先に5月21日に完成披露試写会で見てきました。



いやー、面白い!めっちゃ面白かった!

よく映画の続編は1作目より興収が下がると言われますが、デップー2は明らかにパワーアップしてます。これは1作目以上のヒットが期待できるんじゃないでしょうか。

(*以下、ポスターやトレーラーで公開されている情報を除き、ネタバレなしにトークを進めます。)

『デッドプール2』のテーマは、本映画キャッチコピーが「もう、ぼっちじゃない♥」とあるように、「ファミリー」「仲間」です。

"1"では、デッドプールは自らの目的のためだけに戦っていて、コロッサスにX-MENに勧誘されても二つ返事で断っていました。

しかし"2"でデッドプールは自らリクルートした最強チーム「Xフォース」を結成します。この「Xフォース」メンバー中心に、魅力的なキャラクターが映画に多数登場します!

前作で人気を博したネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドやコロッサス、おとぼけタクシー運転手ドーピンダーのほか、"ラッキーガール"ドミノ、日本人俳優の忽那汐里演じるユキオ、ただのおっさんピーターなど、デッドプールは多くの仲間(チーム)とともに活躍します。

前作ではデッドプール単体で十分世界中のファンを魅了しましたが、チームになってその魅力は何倍にもパワーアップしてます。

チームの魅力は、完璧でないメンバー同士が補完し合って一つの目的に向かうときに生まれるパワーと、それを見た人に与える感動だと思います。
仮にメンバーが5人だとしたら、力を合わせて5人分以上の力を発揮できるのがチームの素晴らしい点ですよね。


最新コミックス・シリーズ「ワールド・グレイテスト」


実は今日ご紹介するデッドプール最新コミックス・シリーズ「ワールド・グレイテスト」でも、一つの大きなテーマが、映画同様「仲間」となってます。

前シリーズ「マーベル・ナウ」では、基本的にデッドプールというキャラクター単体に焦点が当たっていたように思います。
彼のバックボーンや人間性を掘り起こすことでキャラクターに深みを持たせ、さらに彼の秘められた家族や過去などにスポットを当て、シリーズ全体通してデッドプール個人の魅力を次々と発見して見せることでファンを惹きつけていたように思います。

しかし、今や世界一のヒーローとなったデッドプールは、一匹狼のアンチヒーローというステレオタイプに収まらなくなっており、新シリーズ「ワールド・グレイテスト」では、「マークス・フォー・マネー」という彼自身のヒーローチームを持つこととなりました。


マークス・フォー・マネー


ここでマークス・フォー・マネーを簡単にご紹介します。

作家のジェリー・ダガンによって2015年に生み出されたマークス・フォー・マネーは、マーベル「シークレット・ウォーズ」イベントの8か月後、「オールニュー・オールディファレント」にて、デッドプールが結成した新しいチーム「ヒーローズ・フォー・ハイヤー」として登場しました。
しかし、同名ヒーローチームの商標を侵害しているとして、マット・マードック(デアデビル)とルーク・ケイジによって法的手段に訴えられ、デッドプールはチーム名を「マークス・フォー・マネー」に改名しました。
(意味はほぼ一緒ですね)

メンバーは以下のとおりです。

◇マサクレ

本名不詳。もともとはメキシコの神父だったが、デッドプールに感化されて、マサクレ(スペイン語で"虐殺"の意味)という名の私刑人として悪と戦うようになった。初登場は本書掲載の『デッドプール』#3.1(2016年2月)。
※この話が、冒頭のAmazonレビューで散々に叩かれていた"全編スペイン語"話です。

◇ソロ

本名ジェームズ・ボーン。テロと戦う一匹狼の傭兵。体内に埋め込んだ装置により瞬間移動ができる(制限あり)。初登場は『ウェブ・オブ・スパイダーマン』#19(1986年10月)。

◇スティングレイ

本名ウォルター・ニューウェル。特殊な潜水スーツを着用した海洋学者。初登場は『テイルズ・トゥ・アストニッシュ』#95(1967年9月)。

◇テラー

本名不詳(おそらくシュレック)。ゾンビ系の不死身の怪人。自分の体の一部(たとえば臓器)を他者のそれと交換することで、相手の能力や記憶を手に入れることができる。初登場は『セント・ジョージ』#2(1988年8月)。

◇フールキラー

本名グレゴリー・サリンジャー。愚かな犯罪者を殺すことをライフワークとするサイコ系ビジランテ。初登場は『オメガ・ジ・アンノウン』#9(1977年7月)。

◇スラップスティック

本名スティーブン・ハーモン。ギャグアニメのキャラのような異色ヒーロー。初登場は『スラップスティック』#1(1992年11月)。

……「ワールド・グレイテスト」シリーズ第1巻『デッドプール:ミリオネア・ウィズ・ア・マウス』では、既にチームが組まれた後で、メンバーがどういったキャラなのか特に説明がないままでした。

しかし、本作『エンド・オブ・エラー』(※ちなみに、時代の終わり"The End of an Era"にひっかけた造語。その意味は不明)では、メンバー一人一人のオリジンを紹介し、丹念にそのキャラクターを深掘りしてます。と同時に「マークス・フォー・マネー」の成り立ちも明らかになってます。


『デッドプール:エンド・オブ・エラー』の紹介【ネタバレあり】


マークス・フォー・マネー結成の動機

デッドプールが自らの傭兵チームを結成したわけは、実はソロにあります。
本書『ソロの単独行動』にて、お金に困っていたソロは、世界一有名なデッドプールのふりをして傭兵の仕事にありつきます。しかし図らずもその時の英雄的行動が、さらにデッドプールの名声を高めることとなりました。
そして、デッドプールはそこからヒントを得て、仕事にあぶれた傭兵を集め、彼のコスチュームを着せたフランチャイズ傭兵ビジネスを思いつき、最初の従業員としてソロを雇うこととなりました。
デップーは商才まであるんだね!

スティングレイの裏の顔

前巻『デッドプール:ミリオネア・ウィズ・ア・マウス』でスティングレイは何やらキャプテン・アメリカと怪しい密談をしていました。
本書『水面下の活動』にて、スティンググレイの裏の顔(というか真の顔)と経歴、そして彼がマークス・フォー・マネーに入った動機がそれとなく明らかにされます。

デッドプールに感化されたマサクレ

神父だったマサクレがなぜ傭兵になったのか?
マサクレが神父を務めるメキシコの教会に、ある男が告解(匿名で罪を懺悔すること)にやってきます。
その男が、一人でテロ組織アルティメイタムを虐殺(マサクレ)した話をした後、マサクレは突如何かに気付いて、神父を辞めて傭兵稼業に手を染めることになりました。
(※本書同録の別エピソードで、メキシコに巣食うマフィア一党をマサクレ単独で皆殺しにした初めてのビジランテ活動が語られています。)

告解室に現れた人物はそう、デッドプールですが、彼の懺悔を聞いてマサクレは何を思ったのでしょうか。
折しも、デッドプールと告解室にいるとき、まさにその教会の目の前で、ある悪者がアメリカ人旅行者を襲っていました。つまり、神に祈っているだけでは正義は実現しないと気付いたのでしょう。
悪者を斃したマサクレは最後、その悪者の得物である巨大な出刃包丁を手に去っていくシーンが大変印象的です。

このエピソードは本書の中で個人的に一番好きな話でした。

脚本もさることながら、画の雰囲気が気に入りました。
全頁全体的にオレンジ色っぽい色彩で覆われていて、メキシコの湿気と高温の息苦しさが紙面から伝わってくる感じがして、漫画というよりショートムービーを見た印象でした。(メキシコに行ったことはありませんが……)
ふと思いましたが、色遣いが「わたせせいぞう」っぽかったです。

テラー、スラップスティック、フールキラーの話は端折ります。

……どれも面白かったんですが、先に紹介した3つの方が個人的に面白かったので。

タスクマスター、アイアンフィストも出てくるよ。

……特にタスクマスターは、「スラップスティック」の短編中にがっつり出てきます。フォトグラフィック・リフレクシズ(写真的反射能力)も出てきます。

タスクマスター:「誰かの動きを一度見ただけで再現できるのさ。そして… 愛した女も忘れない」

……えっ、そうでしたっけ?? 皆様、小社刊『タスクマスター:失われた過去』をぜひ見てください!


デッドプール誌本編、2099年未来のデップー

……他にも、これが本来的にデッドプール誌メインのエピソードになりますが、前号、いやもっと前の「マーベル・ナウ」シリーズからのデッドプール誌と、次号『デッドプール:セイバートゥース(仮)』をつなげる、重要な伏線ありまくり(デップーの記憶障害だったり、「奴(セイバートゥース)がガソリンを用意した」というメモだったり……とかとか)の短編や、2099年のデップーのお話も収録されています。

玉手箱をひっくり返したようなバラエティ豊かな本書、書店で見かけたらぜひ手に取っていただけたら嬉しいです!

以上、今週はこの辺りで!また来週お会いしょう。

(文責:小出)


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