2018年8月28日火曜日

仁義なき戦い!『デッドプール:デッドプールVS.セイバートゥース』



アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!
本日ご紹介するコミックスは、先週発売されたばかりのデッドプール第4期レギュラーシリーズ「ワールドグレイテスト」VOL3となる『デッドプール:デッドプールVS.セイバートゥース』です。


ジェリー・ダガン[作]
マテオ・ロリ他[画]
定価:本体2,100円+税
●2018年08月23日頃発売●

収録されているのは、セイバートゥースとの死闘を描いた本編#8-11と、2099年のデッドプールを描いた「デッドプール2099」第2章です。

それでは、前号VOL2「アメコミ魂」に引き続いて、今回も米国版Amazonレビューから見ていきましょう。

まずは最も好意的なレビューから。

★★★★★

"迷惑なくらい面白い!"

デッドプール最高!(映画がね!)
ライアン・レイノルズは、グリーンランタンより断然いいね。
実はデッドプールのコミックスは読んだことがなかったんだけど、映画がヒットしてから『DEADPOOL: Secret Invasion』を買いに行ったんだ。話の雰囲気が気に入ったよ。
『デッドプールVS.セイバートゥース』はキンドル版で読んだけど、紙の本と同じ程度だね。次VOL2をまたキンドルで買おうと思うよ!

(-_-).o0○(…絶賛してるのはコミックスじゃなくて映画ですよね!
キンドル版と書籍版が同じクオリティって、そらそうよ。
そして、VOL2はVOL3の前に読んだ方がいいよ!)

…と、なんかツッコミどころ満載なレビューでしたが、続いて最も批判的なレビューも見てみましょう。

★★★☆☆

"ウルヴァリンの絵が似てない事を除けば良かった"

このコミックスは最高だよ…、もしアーティストがウルヴァリンをもっと良く描いていたらね。彼の見た目は本当に酷いよ。デッドプールは最高さ、楽しいし狂ってるし、ウルヴァリンを何度も痛めつけるんだ!

(-_-).o0○(…ウルヴァリン出てきてましたっけ? セイバートゥースの間違いじゃ…?)

最も好意的も最も批判的もどちらも微妙なレビューでしたので、もう一つだけ引用させていただきます。

★★★★☆

"最初からVOL3の内容でシリーズを始めれば良かったのに!"

VOL1『ミリオネア・ウィズ・ア・マウス』、VOL2『エンド・オブ・エラー』ではマークス・フォー・マネーにフォーカスが当たってたけど、VOL3でついにデッドプールがセンターステージに帰ってきた! 冗談を言い、戦い、爆発し、殺す…。うん、期待どおりのデップーだよ!

新しいデッドプールファンには、このコミックスを読むように絶対薦めるよ! 昔からのファンにはどうだって? …だって彼らはもう既に読んでるだろ?

…そうです。このレビューのとおり、本書でついにデッドプールがストーリーの中心に帰ってきました。
しかも前「マーベル・ナウ」シリーズから続くウェイド・ウィルソンの過去の精算と、彼の未来へと繋がる内容となっているのです。

新旧問わずデッドプールファンの皆さんに読んでいただきたい一冊です。

それでは本書の紹介に入りましょう。
あ、ちなみに本ブログは"ネタバレ有り"です。
本書を既にお持ちでまだ読んでないという方は、本書を先に読んでから本ブログを見ていただけたらと思います。


『デッドプールVS.セイバートゥース』に至る経緯


まずは前号『デッドプール:エンド・オブ・エラー』のおさらいから

記憶障害と双極性障害で俺ちゃん"悪意の手帖"に書いてある人物を何度も襲うデッドプール。
その手帖の中で「セイバートゥースがガソリンを用意した」というメモを見つけたデッドプールはセイバートゥースをぶっ殺そうと決意します。

…ってこれだけじゃ訳が分かりませんね。

話は前シリーズ「マーベル・ナウ」に遡ります。

デッドプールはバトラー博士の被検体として洗脳されていた一時期、傭兵として彼が命令する人物を殺していました。そのときバトラーに一緒に協力していたのがセイバートゥースです。
そして、デッドプールはバトラー博士に命じられるまま、カナダの自分の生家にガソリンで火を放ち、両親を焼き殺してしまいました。
(詳細は、『デッドプールVOL.6:オリジナル・シン』をご覧ください。)

しかしデッドプールはこの出来事を覚えていません。
そう、デッドプールは人を殺しても次の日にはそれを忘れてしまうのです。

彼の記憶力がこうも悪い理由は、『エンド・オブ・エラー』P7に描かれているように、過去の戦いで頭に銃弾をぶち込まれたり刀で真っ二つにされたりしてきたから。
…というのは冗談で、ウェポン・プラス計画によりヒーリングファクターを手に入れた結果、癌による脳細胞の破壊と再生が繰り返されることと、バトラー博士による洗脳の結果です。
(詳細は、デッドプールの哀しいオリジンを語った名作『デッドプールVOl.3:グッド・バッド・アンド・アグリー』をぜひご覧ください。泣けます!)

ウェポン・プラス計画とは、アメリカ政府とカナダの秘密組織デパートメントKが共同で行った超人兵士計画。特にウルヴァリンにアダマンチウム合金を結合し、セイバートゥースを強化し、デッドプールを生み出したウェポンX計画が有名です。

バトラー博士はウェポン・プラス計画メンバーの一人です。
デッドプールがウェポンX計画から逃げ出してから一時期、デッドプールを被験体にヒーリングファクターの研究をしていました。
その目的は、ウェイド・ウィルソンと同じく癌で余命幾ばくもない妹を救うためです。
(※バトラーとデッドプールの因縁と結末は上記『グッド・バッド・アンド・アグリー』でご覧ください。)

…おぼろげな記憶を頼りにデッドプールは、バトラー博士の閉鎖された薬局、カナダの生家跡、そして放火前に酒を飲んだバーを訪れ、そこにセイバートゥースがいたことを思い出し、さらにセイバートゥースが両親を殺したという誤った記憶が蘇ります。

そしてデッドプールはセイバートゥースへの復讐を誓います!


セイバートゥースの略歴


ここで、本書のもう一人の主人公、セイバートゥースの略歴をご紹介します。

セイバートゥースとは?

本名ビクター・クリード。
初登場は『アイアンフィスト』#14(1977年)。

ウルヴァリンの宿敵で、ほぼ同等の能力を持つミュータント。ウェポンX計画の被験者でもあり記憶障害を持ち、過去の経歴等は謎に包まれています。

ウルヴァリン同様、超回復能力ヒーリングファクターと加齢遅延属性を持ち、獣のような俊敏性と戦闘力、鋭い爪と牙を武器に戦います。

ウルヴァリンを目の敵にし、彼の誕生日の度に彼の大事なものを奪うというイカレタ趣味を持ちます。かつてウルヴァリンの恋人シルバー・フォックスを惨殺したこともあります。

2014年のイベント『アベンジャーズVS.X-MEN:アクシス』で、<反転>呪文によりヴィランからヒーローへ変身しました。
ヒーロー活動としては、アベンジャーズ・ユニティ・スクワッドに参加し、ウルヴァリン亡き後は彼の遺志を継いで行動しています。

現在はマグニートーらとともに新生X-MENを結成し、後述するテリジェン・ミストからミュータントを守るための活動をしています。

2009年映画『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』では、ローガンの兄という設定で、ウルヴァリンとともにW主人公として出演しました。
その能力は鋭い爪を武器とした戦闘能力やヒーリングファクターなど、コミック版をほぼ踏襲しています。


不死身VS.不死身の終わりなきバトル勃発!


「ローガンができなかったことをやってやる」
「てめえをぶっ殺す!」



二人の戦いは、セイバートゥースの頭蓋骨が剥き出しになり、デッドプールの内臓が飛び出してと、…文字どおり血で血を洗うグロい戦いが展開されます。

お互いヒーリングファクター能力を持つ者同士。…この戦いに終わりはあるのでしょうか?
そして、お互い死なないのに戦う意味はあるのでしょうか?

そもそも戦う理由がデッドプールの勘違いによる敵討ち。
そして両親殺しの真犯人は実は自分自身という…。
デップーさん、ソレどうなんでしょう…。

デッドプールは本気でセイバートゥースを殺しにきますが、一方のセイバートゥースはどこか手加減気味。
セイバートゥースは、バトラーの被検体だった頃からデッドプールに同情的で、戦いの最中もデッドプールを気遣います。

「ウェイドが罪悪感を感じる必要はない」
「オレは何百人も殺してきた。オレの犯行にすればいい」
「そうすれば、こいつを救える」

セイバートゥース、滅茶苦茶いい奴じゃん!


テリジェン・ミスト――ミュータント絶対殺すガス!


警察ヘリと取材ヘリが空中で衝突し、トラックの積み荷が路上に転がり落ち、デッドプールがトラックに飛び乗り…と、映画さながらのアクションシーンが続く中、不死身同士の戦いを終わらせる秘密兵器をデッドプールは取り出します。

ミュータント種族を殺すガス、テリジェン・ミストです。

テリジェン・ミストはインヒューマンズの能力の発現を促す触媒ですが、ミュータントにとっては死をもたらす伝染病M-ポックスを発病させる毒物です。

2013年「インフィニティ」事件においてサノスが地球侵攻した際、インヒューマンズの王ブラックボルトは地球の大気に大量のテリジェン・ミストを放出しました。
これによりインヒューマン遺伝子を持った何百人の人間がインヒューマンズのパワーを獲得すると同時に、空中のテリジェン・ミストは大気中の物質と反応し、ミュータントの生存を脅かす物質となりました。

デッドプールはこの、ミュータントにとって禁断の武器をセイバートゥースに使おうとします。

いや、さすがにやりすぎなんじゃ、デッドプール…と、読者も引くぐらい今回のデッドプールはガチです。
果たしてデッドプールは本当にセイバートゥースを殺してしまうのでしょうか?
(繰り返しますが、セイバートゥースが両親を殺したというのは勘違いです…)。


デッドプールの未来へとつながる伏線


ここでセイバートゥースは、デッドプールの未来を左右しかねない重大な秘密を告白します。

「こいつの娘はミュータントだ」
「X遺伝子が目覚める頃にはTミストが消えていればいいが」

その後、デッドプールはドクター・ストレンジのサンクタム・サンクトラムの館を訪れ、過去のデッドプールの行動を録画したVHSビデオを暖炉で燃やし、さらにバトラーとデッドプールに関する日記を焼き払います。

「もう過去は振り返らない」
「人生の無駄だ」
「俺には未来があるんだ」

…そう、デッドプールはついにバトラーの洗脳のくびきを脱したのでしょう。
思うに、それもこれもセイバートゥースの優しさのおかげです。

こうしてデッドプールは未来へと新たな一歩を踏み出します。
そして物語は巻末に同時収録のミニシリーズ「デッドプール2099」へと続きます!
(未来に飛びすぎじゃ・・・)

※「デッドプール2099」では、本編に関連する"ある人物"が登場します。この人物の登場で今後、本編と「デッドプール2099」が繋がってくる気がします。

以上、今週のアメコミ魂はこの辺りとさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました。

追伸:
改めて本書を読んだ感想を一言。
「セイバートゥースはめっちゃいい奴だ!」

そして、セイバートゥースのバイクのシートに接着剤を塗るデッドプール、「最低な奴だな!」(笑)

(文責:小出)

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2018年8月21日火曜日

オススメ!『オールスター・バットマン:エンド・オブ・アース』



アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!
本日ご紹介する書籍は、DCリバースシリーズバットマン関連誌の一つ、「オールスター・バットマン」VOL.2となる『オールスター・バットマン:エンド・オブ・アース』です。

スコット・スナイダー[作]
ジョック他[画]
定価:本体2,300円+税
●2018年8月23日頃発売●

本書の見どころはズバリ、"バットマン、アメリカ大陸を転戦"です。

VOL.1『オールスター・バットマン:ワースト・エネミー』に引き続き、バットマンは慣れ親しんだゴッサムシティを離れ、アメリカ大陸を股にかけてヴィラン達と戦います。

アラスカの凍原でミスター・フリーズと死闘を演じ、ネバダの砂漠でポイズン・アイビーを必死に説得し、ミシシッピの沼沢地ではマッドハッター相手に思わぬ苦戦を強いられます。

トム・キングが新たなバットマン像を描くメイン・タイトル誌「バットマン」シリーズも大変面白いですが、いつもの見慣れたゴッサムシティ以外の場所でバットマンが活躍する様は大変新鮮で、面白く感じることでしょう。

他にも、本シリーズにはバットマン本誌とは違った数々の魅力があります。

「なぜ、あなたにオールスター・バットマンをお薦めするのか?」
本ブログでその魅力の一端をご紹介させていただければ幸いです。


「オールスター・バットマン」シリーズの見どころ


見どころ1 スコット・スナイダーが脚本を書いている。★★★


2016年に始まった現行の「DCリバース」シリーズに先立つ「THE NEW 52!」シリーズで、その旗艦誌とも言うべき「バットマン」シリーズを大成功に導き、一躍DCコミックスを代表する人気ライターとなったのがスコット・スナイダーです。

その魅力を私なりに分析すると、物語序盤から伏線や意味を敷き詰めつつ、それらが有機的につながり一貫性を持ちながら、クライマックスに向かってきちんと盛り上がれるところに、映画的な面白さがあるからだと思います。

本作でも、一見4人のヴィランの物語がオムニバス的にバラバラと収録されている印象を受けるかもしれませんが、最後まで読むと4編の物語が有機的に結びついていて、無駄なエピソードが一つもないどころか、ニュー52から続く一続きのストーリーとなっていることを実感できることでしょう。

さらに訳者の解説によると、本書にはバットマン誌のみならずDCユニバース全体にかかわる重要な伏線が仕掛けられているそうです。

バットマンファンのみならず、全DCファンの皆さまに機会があれば読んで欲しい一冊です。

見どころ2 ヴィランの物語である。★★


「これはバットマンの物語ではない…」「…たとえそう見えたとしても」

これは本書収録の「終末への道:最終章」に記されたナレーションです。
そう、まさに「オールスター・バットマン」は、バットマンの物語ではなくヴィランの物語なのです。
本シリーズのタイトル"オールスター"とは、バットマンのヴィラン達がオールスター(総出演)というわけです。

他のヒーローに比べても、バットマンには魅力的なヴィランが多い!と思っているのは私だけではないでしょう。

そもそも本シリーズ開始のきっかけについて、スコット・スナイダーがインタビューで語ったところによると、「ニュー52で描き切れていない魅力的なヴィラン達がたくさん残っている。彼らを使って表現したい物語がある」からだそうです。

そんな中、今日ご紹介する『エンド・オブ・アース』は一人のヴィランに一章まるまる割り当てられており、トゥーフェイス一人にメインスポットが当てられ他の多数のヴィラン達はゲスト的な出演にとどまったVOL.1『ワースト・エネミー』と比べても、ヴィランの魅力を一人一人深掘りしてじっくり堪能したい読者にとっては企画意図に沿った満足できる構成といえるでしょう。

見どころ3 アーティスト陣が"オールスター"である。★★


本シリーズの意欲的な試みの一つとして、スコット・スナイダー注目の様々なアーティスト達が作画を担当している点が挙げられます。

…とはいえ、この点についても『ワースト・エネミー』ではジョン・ロミータ Jr.が一人で本編のペンシルを担当していました。

しかし本書『エンド・オブ・アース』では、各章ごとに異なるペンシラーを立てており(※ジョックだけは2章を担当)、その意味でも"オールスター"のコンセプトに忠実な制作体制が実現できているといっていいでしょう。

各アーティストの魅力は各章の紹介で改めて取り上げます。

スコット・スナイダーは本シリーズ立ち上げの際、アーティストそれぞれに描きたいヴィランを聞いてから、各作家の個性を生かしつつヴィランを選定したそうです。

なんとなく、各アーティストの筆致に合ったヴィランがうまくチョイスされていると感じるのは私だけでしょうか?
(テュラ・ロテイによるポイズン・アイビーの妖艶な表情や、ジョゼッペ・カムンコリによるマッドハッターの狂気じみたコミカルな表情、そしてジョックによる躍動感あふれるミスター・フリーズの身のこなしなど。)

しかし物語全体の構成や演出は、各アーティストに丸投げではなく、まとまりが出るようにスコット・スナイダー自身が考えているそうです。

ネームも彼が切っているのでしょう。
たとえば各章1ページ目は、遠くから一コマずつ歩いて近づいてくるバットマンが、共通して描かれます。
エピソード毎に舞台が異なりアーティストも違うとなると、どうしても統一感が失われがちですが、1ページ目で同じ構図がデジャブのように描かれることで、全体としてピリッと引き締まった印象を受けます。

さらに「さすがスコット・スナイダー!」と感じさせるのは、本編最終章の最終ページでは逆に歩いて遠ざかるブルース・ウェインが描かれ、物語のエンディング感をバッチリ表現している点です。
お洒落です!

見どころ4 デューク・トーマスが活躍する。


DCリバースからバットマンの元で修業を始めたデューク・トーマスが、本シリーズでは本格的にサイドキックを務めています。

デュークの心の葛藤と成長を描く、彼を主人公としたミニシリーズ「呪われた輪」での活躍はもちろん、本編中でもサイドキックとして常にバットマンをサポートします。

もちろん、バットマンのメイン・タイトル誌「バットマン」シリーズでもデューク・トーマスは出演しますが、そちらでは、どちらかといえばバットマン一人に焦点が当たっている感が否めません。

新たな相棒の活躍と成長は、読んでいて新鮮な気持ちにさせてくれます。

…続いては、本書各章の見どころをそれぞれ紹介してまいります。


終末への道:第1章


冒頭、雪原を歩くバットマンという珍しいシーンから始まります。
そのスーツは寒冷地対策もバッチリなされ、ミスター・フリーズを連想させるバブルヘルメット(耳付き!)、首にファーの付いたマント、腕には高温バッタランを連射できるアームキャノン…とどこかユーモラスな装いのバットマンは新鮮です!

そして本章で対峙するヴィランは、ミスター・フリーズです。

ミスター・フリーズ


ニュー52以降の設定では、元ブルース・ウェインの会社、ウェイン産業で働く冷凍技術の研究者でしたが、研究の中止を言い渡され逆上し施設を壊した際に化学物質を浴びて、極低温でしか生きられない体質となりました。そのせいで常に特殊なスーツを着用しています。冷凍銃を武器に使います。
研究対象として出会った、半世紀近く冷凍睡眠している女性ノーラを自分の妻だと思い込み、今も目覚めさせようとしています。

ジョック


本章のアーティストはジョックです。

その特徴は、バンド・デシネを彷彿とさせる細い線と大胆なベタの印影が、とにかくお洒落なんです!
どことなく、超絶技巧で人気の二コラ・ド・クレシーに似た雰囲気を感じさせ、個人的には本書の中で一番好きなアーティストさんです。

またコマ割りやフキダシの配置も独創的で、黒い配線コードやメインカットの影の部分をフキダシに見立てたりと工夫を凝らしています。


コマ割り、フキダシ、フォントも絵の一部になっていて、"コミック芸術"と呼びたくなるクオリティの高さです。(フォントは日本語に置き換わっていますが…)

彼の線は丁寧さより勢いを重視した筆致で、かつコマ割りが独創的なので、もしかしたら見辛いと感じる読者さんもいらっしゃるかもしれませんが、そういった自らの特徴を意識してでしょう、多用される大胆な大ゴマや余白が見やすさとともにメリハリをもたらし、それも相まって芸術性の高さを感じます。

またフキダシの背景色にも注目していただきたいです。
雪原では白、暗い建物の中は黒、そして焼夷弾で燃え盛る建物の中では赤茶色と、場面に応じて色を変えることでシーンの印象を構築しています。

ジョックが手掛けた作品としては、他に『バットマン:ブラックミラー』『グリーンアロー:イヤーワン』(共に小社刊)などがあります。彼の絵が気に入った方はぜひチェックしてみてください。


終末への道:第2章


第2章では、ポイズン・アイビーをフィーチャーしています。

ポイズン・アイビー


ニュー52以降の設定では、ウェイン産業の生化学部門インターン生としてフェロモンの研究をしていた彼女は、洗脳技術の有用性をブルース・ウェインにプレゼンしますが、逆に危険視され解雇されてしまいます。その際自らが開発した薬品を浴びて、植物や人間をフェロモンで操り、死に至らしめる能力を手に入れました。

テュラ・ロテイ


本章のアーティストはテュラ・ロテイです。
大胆な太い線と原始的な配色がポール・ゴーギャン(ポスト印象派フランス人画家)を彷彿とさせます。
ジョックとはまた違った芸術性を感じさせる作風で、普段アメコミではちょっと見ない絵柄で新鮮でもあります。
多用される黄色やオレンジ、茶色などの暖色系の色合いが太い線に合っていると同時に、ネバダの砂漠を舞台にした本章のストーリーに親和性が高いです。


終末への道:第3章


本章ではマッドハッターというややマイナーヴィランを取り上げています。

マッドハッター


特殊な帽子を使って相手の精神を操ります。「不思議の国のアリス」に偏執的な愛着を持っています。
ニュー52以降の設定では、子供の頃に背の低さからコンプレックスを抱き、まだ開発中の薬を飲んだことがきっかけで精神のバランスを崩し、アーカム・アサイラムに入院させられました。

ジョゼッペ・カムンコリ


本章のペンシルを担当したのはジョゼッペ・カムンコリです。
主な代表作として、ダン・スロット脚本の『アメイジング・スパイダーマン』『スーペリア・スパイダーマン』のほか、最近の仕事として『バットマン:ヨーロッパ』があります。

…本章の見どころとして、ストーリー的には本書の中で一番面白かったです。
『バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街(THE NEW 52!)』で語られたバットマンの誕生譚、そしてそれに続くバットマンの活躍全てを全否定するような驚愕のエピソードが、正直小物感のあるマッドハッターの口から語られます。
バットマンのみならず、ベインやジョーカー、リドラー、ハーレイ・クインなどA級ヴィラン全員を全否定しかねない仕掛けとは!?

余談ですが、バットマンがフラミンゴを武器に戦うシーンは最高に笑えます!


終末への道:第4章


実は第1章から第3章までは壮大な伏線にすぎず、全ては第4章で正体が明かされる黒幕へとストーリーはつながっていきます!

ミスター・フリーズがもたらした災厄、ポイズン・アイビーの役割、そしてマッドハッターの技術がどのように第4章につながってくるかは本書を手に取ってお楽しみください。

以上、今週のアメコミ魂はこの辺りで。最後までお読みいただきありがとうございました。来週の更新もお楽しみに!

(文責:小出)

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2018年8月14日火曜日

ジェダイへの復讐譚『スター・ウォーズ:ダース・モール』



アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!
今週ご紹介する書籍は、来週発売の『スター・ウォーズ:ダース・モール』です。

カレン・バン[作]
ルーク・ロス[画]
定価:本体1,800円+税
●2018年8月23日頃発売●

本書は、『エピソード1/ファントム・メナス』で登場するや瞬く間にシリーズ屈指の人気キャラクターになったシスの暗黒卿ダース・モールを主人公とした単独コミックスで、時系列的には32BBY(Before Battle of Yavin)以前の出来事を描いた正史作品です。

本書底本となる原書は、2017年2月から7月まで米国で刊行された全5章のミニ・シリーズ『ダース・モール』と、同じく2017年2月に刊行された読み切り短編『プローブ・ドロイド・プロブレム』からなります。

まずは簡単にダース・モールの略歴をご紹介します。


ダース・モールの略歴


ダース・モールは、頭の角と顔の入れ墨が特徴的なダソミリアン・ザブラク(※惑星ダソミアに住むザブラク種族で、別称ナイトブラザー)です。
魔女マザー・タルジンの息子として生まれ、幼い頃ダース・シディアスに才能を見出され彼のアプレンティス(弟子)となります。

エピソード1では、ジェダイ・オーダーを抹殺するというダース・シディアスの壮大な復讐計画の実行部隊として活躍するも、最後オビ=ワン・ケノービとのライトセーバーの戦いで胴体を真っ二つに割られ、惑星ナブーの反応炉シャフトの底へ落下して死んだと思われました。

しかしモールは、腰から下を失った状態でなんとか生き延び、アウター・リムの惑星ロソ・マイナーに棄てられ、廃棄物でできた6本脚の下半身を手に入れ、怒りと復讐心でほとんど正気を失った状態で10年以上生きていました。

そしてクローン戦争期の20BBY、マザー・タルジンの命令でモールを探しに来た弟サヴァージ・オプレスに発見され、故郷ダソミアに連れ戻され、タルジンの魔法で正気を取り戻します。

その後、モールは闇社会の勢力をまとめたシャドウ・コレクティヴを組織し、クローン戦争の第3勢力として暗躍するとともに、オビ=ワン・ケノービへの復讐を開始することとなります。

……モールというと、ジェダイへの"強烈な怒り"という印象が強いですが、本書ではそのルーツが語られます。
それでは、本書の粗筋を注目ポイントとともにを見ていきましょう。


『スター・ウォーズ:ダース・モール』粗筋


シスは既に死に絶えた、と長く思われていた時代。シス・オーダーはジェダイに気づかれることなく1000年以上脈々と受け継がれていました。
そして32BBY、ついにシスが動き出します。

ダース・モールの抑圧された怒り

物語は、熱帯雨林の惑星トゥオン・ケテイでダース・モールがラスター狩りをする場面から始まります。


ラスターといえば、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で初登場した捕食クリーチャーですが、非常に獰猛で捕獲が難しいことから希少価値が高く、収集家にとって垂涎の的となってます。"トリリアの虐殺"を引き起こしたことでも有名です(その詳細は現時点では不明)。

"恐れ""怒り""憎しみ"……。
そんな感情のはけ口として、モールは次々とラスターを倒していきますが、ラスターを倒してもモールの怒りの感情は慰められません。

続いてのシーンは、銀河共和国の首都惑星コルサント。
ダース・モールは暗闇から、ジェダイ・ナイトのカト・キインとそのパダワンに憎しみの視線を向けます。

しかしジェダイと戦うことはマスター・シディアスに禁じられているため、その抑圧された怒りが晴れることはありません。

シディアスはジェダイ・オーダーを抹殺するための深淵な復讐計画を持っており、モール個人の怒りの感情でシスの存在をジェダイに知られることは決して許せることではありません。

「もしお前が余の施した準備と作戦を危機に陥れることがあれば…、ジェダイ以外の者がお前を始末すると知れ」

シディアスは、決して弟子に優しいタイプのマスターではありません。一方のモールもまた、師に従順なアプレンティスではありません。

先の話ですが、クローン大戦期以降モールの怒りの矛先は元師であるダース・シディアスにも向けられますが、その兆候がすでに本書で垣間見ることができます。

キャド・ベインとオーラ・シング

シディアスが危惧したように、モールの怒りの感情は定期的にガス抜きしないと計画を台無しにする危険があるため、シディアスはモールに新たな任務を授けます。

シディアスの手駒の一つである通商連合の協力者が、ケラックス星系で海賊に軟禁されているのを助けるよう命じられたモールは、その救出作戦の過程で、ある機密情報を偶然知ることとなります。

ジェダイ・パダワンが犯罪カルテルに捉えられていて、なんとオークションにかけられるというのです。

シディアスに知られることなくジェダイ(パダワンですが…)を殺す絶好の機会と捉えたモールは、シディアスには内緒でオークション会場への潜入を試みようとします。

ここでモールは、ある大物賞金稼ぎ達を雇います。

…キャド・ベインとオーラ・シングです。

キャド・ベイン:
クローン戦争期に活躍した惑星デュロ出身の賞金稼ぎです。共和国軍クローン軍団の遺伝子提供者としても有名な賞金稼ぎジャンゴ・フェットがジオノーシスの戦いで死んだ後、銀河一有能な賞金稼ぎと目されました。
後にドュークー伯爵やダース・シディアス、ハット大評議会の仕事も請け負い、特殊能力はないもののその武器と知恵でジェダイとも堂々と渡り合う実力者です。パルパティーン最高議長誘拐計画にも参加しました。
その活躍は、主にTVシリーズ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』で描かれます。

オーラ・シング:
衛星ナー・シャッダ出身の女性賞金稼ぎ。銀河で最も恐れられる殺し屋の一人で、スキンヘッドに突き出たアンテナが特徴的。
クローン戦争中、父親ジャンゴ・フェットを亡くした幼いボバ・フェットを訓練しました。
また、ズィロ・ザ・ハットの依頼を請けて、惑星オルデランでパドメ・アミダラ元老院議員暗殺未遂事件を引き起こしたこともあります。
その最期は、映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の作中、ソロの師匠トバイアス・ベケットによって殺されたと噂されました。

……本書を通じてキャド・ベインとオーラ・シングはモールと行動を共にします。二人の活躍も本書注目ポイントの一つです。

ダース・モールの怒りの理由

「天の高みか、地の底か どこへ我らは落ちてゆくか かつての巨人はかくも小さくなりにけり…」

これは作中度々出てくるマントラで、かつて何千人もの古代シスがマラコアの大戦でジェダイによって虐殺された恨みを忘れぬようにモールが唱えるものです。

作中モールのヴィジョンの中で、幼い頃シディアスに連れて行かれて見た惑星マラコアが記憶として蘇ります。
荒廃したシス・テンプル、戦いに敗れ石と化したシスの先人達、自分達の自由のためにシスの自由を無慈悲に奪ったジェダイ……、若きシスにとってジェダイへの復讐心を掻き立てるに十分な光景がヴィジョンとして展開されます。

殺戮者ジェダイによるシス大虐殺の歴史……それがモールの憎しみが癒えぬ理由なのです!


なお、その際ジェダイによって使用された武器がクロスガード型ライトセーバーで、ファースト・オーダー=レジスタンス紛争期に、ダークサイドの戦士カイロ・レンのライトセーバーのデザインに取り入れられました。

TVシリーズ『スター・ウォーズ/反乱者たち』では、ジェダイ・ナイトのケイナン・ジャラス、その弟子エズラ・ブリッジャー、元ジェダイのアソーカ・タノがマラコアを訪れ、モールが見たのと同じ悲惨なマラコアの光景を目にしました。

エルドラ・カイティスとの接触

まんまとジェダイ・パダワンのオークション会場に潜入したモールは、ついに念願のジェダイ(パダワンですが…)と一対一で対面し、ライトセーバーを抜きます。

ジェダイとシスが対峙する1000年ぶりの出来事です。

ジェダイとシスの1000年ぶりの対決といえば、『エピソード1/ファントム・メナス』で、ダース・モールとクワイ=ガン・ジンがライトセーバーで戦ったタトゥイーンの対決が有名ですが、実はその前に1000年ぶりの対決(?)が実現していたのです。

エルドラ・カイティスは、美人と名高いトワイレックの女性パダワンです。
トワイレックのジェダイといえば、オーダー66で死亡したアイラ・セキュラが有名ですが、カイティスもセキュラに負けず劣らずの美人かつフォースの実力者です。

果たしてモールの復讐は完遂するのでしょうか?

以上、簡単ですが『スター・ウォーズ:ダース・モール』第2章までの粗筋をご紹介しました。ここまでは本書のほんの触りです。ここから先は来週ぜひ本書を手に取ってお楽しみください。

今週のアメコミ魂はこの辺りとさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました!

(文責:小出)

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2018年8月7日火曜日

期待の新シリーズ『スーパーサンズ』が満を持して登場!



「さあ、やるぞ!ロビンとスーパーボーイ、反撃開始だ!」
「なんで君の名前が先なの?」
「年が上だから」
「身長は?」
「黙れ」

いよいよ今月23日頃に邦訳本が刊行される『スーパーサンズ』
2016年にはじまったDCリバースの中でも、DC期待のニューホープ、スーパーボーイことジョナサン・ケントと、ロビンことダミアン・ウェインの活躍を描く本シリーズは、看板タイトルの一つといってよいでしょう。
本日のアメコミ魂では一足先に『スーパーサンズ』の見どころをご紹介したいと思います。

ピーター・J・トマシ[作]
ホルヘ・ヒメネス[画]
定価:本体2,300円+税
●2018年8月23日頃発売●


『スーパーサンズ』人気の秘密


本国アメリカでは、『Super Sons』は2017年2月に創刊され、2018年5月に#16および1 Annualをもってファースト・シーズンが一旦終了となってますが、今月8月1日に続編の『Adventures of the Super Sons』がミニシリーズとして始まっています。

日本でも池袋ヴァースコミックスさんはじめ原書の売行きが上々らしく、前評判が高いといって良いでしょう。

クリエイター陣は、本書のプレリュード(序章)ともいうべき『スーパーマン:トライアルズ・オブ・スーパーサンズ』やニュー52で『バットマン&ロビン』を執筆した脚本家のピーター・J・トマシと、『ドラゴンボール』の鳥山明や『NARUTO』の岸本斉史の影響を受けたと語るスペイン人アーティスト、ホルヘ・ヒメネスのコンビです。

ホルヘ・ヒメネスは日本の読者には馴染みやすい絵柄で、愛くるしいジョンや意地悪なダミアンの仕草や表情を描くのにうってつけのアーティストといえます。
赤いスニーカーに破れたジーンズ、Sマークのジップアップパーカー姿というジョナサン・ケント扮するスーパーボーイのデザインは、ホルヘ・ヒメネスの手によるものです。

一方、作家として過去ダミアンとジョンのどちらにも深く関わってきたピーター・J・トマシは、本シリーズの根幹ともいうべき作家です。
特にアメコミ界の鬼才グラント・モリソンから『バットマン&ロビン』のバトンを見事に引き継いだように、ロビンことダミアンについて現在彼の右に出るライターはいないでしょう。

またDCリバース『スーパーマン』シリーズについても、ライター兼アーティストのパトリック・グリーソンとともに担当しており、将来DC全体を牽引する人気キャラクターになるポテンシャルを秘めたスーパーボーイを、現在進行形で育てているといっても過言ではありません。

アメリカでの人気の高さ

アメリカでは『スーパーサンズ』は大変人気があり、子どもたちがジョナサンやダミアンの格好をしたり、親子でコスプレを楽しむ人もいるそうです。
また、ファースト・シリーズが#16で終了した際には、惜しむ声がネットを中心に多く聞かれたそうです。

なぜこのように人気が高いのでしょうか?

これについてピーター・J・トマシがインタビュー記事で語っており、その理由として、(たとえスーパーパワーを持っていたとしても)子どもが等身大の子どもらしく描かれている一方、ストーリーは子どもから大人まで楽しめる作りとなっているからだろうと推測しています。

また、本シリーズを楽しむのに、DCユニバース全体の世界観を知っている必要がない点も、多くの世代に受け入れられた要因だと語っています。

一方、子どもを主人公とする漫画として、表現が残酷になり過ぎないよう少年漫画特有の配慮もしたそうです。

いずれにしても、『DCスーパーヒーロー・ガールズ』『DCインク』『DCズーム』レーベルの創刊など、新たな若い読者層を獲得するためのDCコミックスの近年の経営方針を考えると、おのずとDCの本作への期待の高さが伺い知れます。


ジョナサン・ケントとダミアン・ウェインのプロフィール


二人のプロフィールを簡単にご紹介しておきます。

まず二人の共通点として、非常に有名かつ偉大な父を持つ点です。
『スーパーサンズ』では、ジョンとダミアン二人の関係性のみならず、偉大な父親達との関係性も見どころの一つです。

ロビン

本名ダミアン・ウェイン。13才。5代目ロビン。
その能力は、卓越した武術、武器のエキスパート、格闘戦術、身体能力です。超人的なスーパーパワーは持っていません。
コミックス史的な初登場は、『Batman』#655(2006年)です。

バットマン(ブルース・ウェイン)と彼の宿敵ラーズ・アル・グールの娘タリアの間に生まれ、幼少期は母方で暗殺者として育てられました。
その結果、13才にしてDCユニバースにおける偉大な戦士達の多くを遥かに超える能力を備える一方、ひどく生意気でひねくれた性格を持つようになりました。

DCリバースでは、若手ヒーローチームである「ティーン・タイタンズ」を結成し、中心メンバーとして活躍します。こちらは小社『ティーン・タイタンズ:ダミアン・ノウズ・ベスト』で描かれています。
その他、ニュー52期には『バットマン・インコーポレイテッド:ゴッサムの黄昏』(小社刊)で一度戦死しますが、その後ニュー52版『バットマン&ロビン』で復活し、主演雑誌『ロビン:サン・オブ・バットマン』で1年ほど活躍し後にDCリバースを迎えました。

スーパーボーイ

本名ジョナサン(ジョン)・ケント。10才。
能力は父親同様(それよりかなり未熟ながら)、高い耐久力と怪力とスピード、飛行能力、透視能力、ヒートビジョン、スーパーブレスといったスーパーパワーを持ちます。
コミックス史的には『Convergence: Superman』#2(2015年)で初登場と、かなり最近のキャラクターです。

父親はDCリバース版スーパーマンです。
すなわち、ニュー52で活躍したスーパーマンではなく、それより前の『クライシス・オン・インフィニット・アース』(1985年)後に登場し、ニュー52版スーパーマンからその立場を引き継いだ者です。
なお、ニュー52版スーパーマンは2016年『ファイナル・デイズ・オブ・スーパーマン』で死亡しました。
母親は元「デイリー・プラネット」敏腕記者のロイス・レーンです。

彼の特徴は何といっても、クリプト人と人間の両方の血を受け継ぐ点です。
その結果、単なる"スーパーマンⅡ世"ではなく、スーパーマンの能力とロイスの活発な性格を持ち合わせた、人間味あふれる魅力的なキャラクターとなるポテンシャルを秘めています。

子どもらしい素直さと可愛らしさを持ち、誰もが愛さずにいられない性格の持ち主です。

先述の『コンバージェンス』で誕生したジョンは、『スーパーマン:ロイス&クラーク』で幼少期が描かれた後、『スーパーマン:サン・オブ・スーパーマン』『スーパーマン:トライアルズ・オブ・スーパーサン』(いずれも小社刊)などで登場した後、本書でいよいよ本格的に活躍を始めることなります。

本シリーズの見どころ

ジョンとダミアンという、共通点より相違点の方が多い二人の少年の関係性と成長が、本シリーズ一番の見どころでしょう。

ダミアンは、優れた知性を持ちながらその頭脳を悪巧みに使うような少年で、常に大人に反抗する悪ガキです。
一方のジョンは素直でまっすぐな性格の持ち主で、周りへの気遣いもできる心優しい少年です。自己中心的なダミアンのことを嫌ってます。

DCは本シリーズの宣伝で、「世界を救うかもしれない永遠の好敵手、ただし先にお互い殺し合わなければ…」と表現しました。そんな二人がどう力を合わせて成長していくか、ハラハラしながら見守るのも本書読者の楽しみ方の一つでしょう。


本書のチラ見せ


最後に少しだけ本書の内容をご紹介します。(※ネタバレなし)

▲冒頭紹介のシーンがコチラ

冒頭からスーパーボーイとロビンのクローン?達に囲まれ、絶対絶命のピンチを迎えるジョンとダミアン。
なぜこんな状況になってしまったのかというと……、

事の発端は、レックスコープ系列施設で侵入やハッキングが頻発しているとの情報を掴んだダミアンが、ジョンを巻き込んで調査に乗り出したことです。

向かった先はメトロポリスにあるレックスコープのビル。

ビルをよじ登っているところをレックス・ルーサーに見つかってしまう二人ですが、ジョンを犠牲にして(^^;)ダミアンは一人ビルに侵入します。

ダミアンはハッキングした監視カメラの映像から、アマゾ・ウィルスに感染したレジー・マイヤーという少年の存在を突き止めます。

やがてレジーの恐るべき性格と能力を知ったダミアンは、父親の力を借りることなくジョンと二人で危機に対処しようとしますが、果たしてうまくいくのでしょうか……。

ダミアンの計画(悪巧み?)にいやいやながら付き合わされるジョン、そして貧乏くじを引くのもいつもジョンというお決まりのパターンが、見ていて微笑ましい限りです(;´∀`)・・・うわぁ・・・

……DCのみならずShoPro Booksも期待を込めてお送りする推しの一冊、再来週の発売をぜひ心待ちにしてください!

今週のアメコミ魂はこのあたりとさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました!

(文責:小出)

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