2017年6月6日火曜日

正反対の力を持つ“二人の天才”によるチームアップ!



アメコミ魂をご覧の皆様、こんにちは!

先日、六本木ヒルズで開催中の「マーベル展」に行ってきました!


「マーベル展」でドクター・ストレンジが大注目!


会場に入ると、いきなり巨大アイアンマン像があったり、撮影禁止でお見せできないんですが、貴重な生原稿、キャプテン・アメリカやドクター・ストレンジなどの等身大フィギュア、そして個人的に一番見応えがあったアイアンマンの歴代アイアン・アーマーの展示など、見どころ満載のイベントとなってます(※東京では、6月25日まで開催中です)。


ところで話は変わりますが、先日発売した小社刊『マーベル・アベンジャー事典』、皆さま手に取っていただいたでしょうか?

ヒーローチーム「アベンジャーズ」に関わった全てのヒーローを1人1ページずつ紹介する本書は、アメコミ勉強中の私には正直「神」のような本なんです!

ヴィレッジヴァンガードイオンモール日吉津様のTwitterでも「もうね、少しだけ読みましたけど、すごい!死ぬまで読んでられる物になってます!」と熱いツイートがありました!(ありがとうございます!!)

アラン・カウシル[著]
定価:本体3,000円+税
◆好評発売中◆

この本が面白いのは、ヒーローの能力を6項目に分けて7点満点で数値化していて、ゲームの攻略本みたいで大変分かりやすくなってるところです。例えば、ハルクは、腕力と耐久力は満点の7だけど、非物理攻撃は1(殴る蹴るだけってこと?)。人間であるホークアイ(クリント・バートン)は腕力3、耐久力2だけど、テクニックは7(女性をくどくテクニック?)……といった具合です。

そしてドクター・ストレンジも載っていて、腕力・耐久力・テクニックはそれぞれ2・3・3と低めですが、さすが魔術師だからでしょう、非物理攻撃は6、そしてそれ以上にスピードは7と最高点です。


ドクター・ストレンジもアベンジャーズの一員だったんですね!(スイマセン、初心者で……)

「マーベル展」でも、アイアンマンやキャプテン・アメリカなどと並んで、ドクター・ストレンジは大々的にフィーチャーされており、ドクター・ストレンジの紹介パネルの前で、カップルが興奮気味に「おぉ、ドクター・ストレンジだ!」とつぶやいてました。

今年映画化されたこともあり、マーベル・ユニバースの中でも大注目のキャラクターなんですね!

展示されてた年表を見て知ったんですが、ドクター・ストレンジの歴史はかなり古く、初出は1963年の「ストレンジ・テイルズ」#110まで遡ります。もう既にご存じの方も多いとは思いますが、ドクター・ストレンジを簡単にご紹介します。

宇宙最強の魔術師。
かつての彼は優秀な外科医である一方、冷たく傲慢な性格だった。しかし、自動車事故で両腕の神経を損傷して二度とメスを握れなくなってしまった。
治療を求めて東の地の伝説的魔術師エンシェント・ワンに弟子入りし、長く厳しい修行の結果、地球を守る至高の魔術師(ソーサラー・スプリーム)となった。

2017年1月公開映画「ドクター・ストレンジ」で初めて知った人もいると思いますが、ドクター・ストレンジ関連本としては、小社からも既に『ドクター・ストレンジ:シーズンワン』と『ドクター・ストレンジ:プレリュード』の2冊が刊行され絶賛発売中です。そして、3冊目となるのが、今回ご紹介する『ドクター・ストレンジ & ドクター・ドゥーム』です。


『ドクター・ストレンジ & ドクター・ドゥーム』の見どころ


ロジャー・スターン[作]マイク・ミニョーラ[画]
定価:本体2,200円+税
◆好評発売中◆

3冊目とはいえ、本書は読みきりエピソードなので、前の2冊を読んでなくても問題なく理解できる内容となってます(もちろん、前の2冊も読んでいただけたら大変うれしいです^^!)。

まずは、本書のあらすじ紹介から。

魔術を操る天才ドクター・ストレンジと、科学を愛する天才ドクター・ドゥーム。相反する力を合わせ、二人は魔王メフィストに挑む!

ファンタスティック・フォーの宿敵でもある天才科学者、ドクター・ドゥーム。彼は母親の魂を地獄から解放するための孤独な戦いに、何度も敗れていた。その戦いに手を貸したのが、天才脳外科医の魔術師、ドクター・ストレンジだった! まったく逆の力を武器にする二人は、魔王メフィストを倒し、母シンシアの魂を救うことができるのか。そしてそのために彼らが払わなければならない犠牲とは、いったいどれほどのものなのか……? 天才ヴィランと天才ヒーローによる、予想外のチームアップ。

◆収録作品:『ドクター・ストレンジ&ドクター・ドゥーム』、『ドクター・ストレンジ』#54、『アストニッシング・テイルズ』#8、『マーベル・ファンフェア』#16&#43


多くのエピソードが収録されて大変お得な1冊となってますが、その中でもメインエピソードの『ドクター・ストレンジ&ドクター・ドゥーム』は、マーベルの「グラフィックノベル・レーベル」として1989年に発表され、その名のとおり、小説のようなストーリー性に優れた作品となってます。

老ジェンギスが大魔術大会を開催する「起」、そこからドゥームの母を救うという主題が与えられる「承」、そして魔王メフィストとの対決のため冥界へ赴く「転」、読者の予想を裏切る戦いの展開とその結末を描いた「結」と、怒涛のごとく一気に78ページを読ませてくれます。私のようなアメコミ初心者には分かりやすくアマチュア・フレンドリーな作品です。

しかし、小説的だからといって、アメコミ最大の魅力であるキャラクターが疎かになっているわけではありません!

むしろ78Pと短い本編の中だけでも、「ドクター・ストレンジ」「ドクター・ドゥーム」「魔王メフィスト」「ドゥームの母シンシア」「老ジェンギス」など、個性豊かで魅力的なキャラクターが目白押しです。

中でも本書で最大の魅力を放っているのが、ドクター・ストレンジではなく、彼とチームアップするドクター・ドゥームだと個人的に思います。


最初、本書はドクター・ストレンジを主人公とした物語なのかなーと思って読み始めたのですが、読み進めるうちにすっかりドクター・ドゥームに感情移入してしまいました。本作でドゥームは、完全に主人公のドクター・ストレンジを食ってます!


魅力あふれるドクター・ドゥーム


ここで簡単にドクター・ドゥームをご紹介します。

科学の天才である一方、魔女である母の血を受け継ぎ、魔術にも秀でている。
並はずれて自尊心が強い一方、傷つき醜い素顔をつねに仮面で覆っている。
東ヨーロッパの小国ラトベリアの独裁者として他国から憎まれる一方、ラトビア国民からは深く愛されている。
ラトビア旧領主から迫害されたロマ民族の生まれで父母をラトビア軍に殺害されたが、自らの科学技術と魔力によりラトビア王位を簒奪した。
世界支配を目論む暴君だが、彼の最大の悲願は魔王メフィストに囚われた母の魂を解放することである。


どうですか!

彼の概略だけでも十分魅力が伝わってきませんか。

本書を読んでいると、彼が何を考え、どう行動するのか、気にせずにいられません。

なぜドクター・ドゥームは読者を魅了してやまないのでしょうか。

それは彼が、矛盾した人物だからだと思います。

独裁者なのに国民に愛され、魔術師の血が流れているのに科学技術を愛し、世界征服を目指しているのに母親一人の魂を救うためならどんな犠牲も厭わない……。

その意外性にやられちゃいます。

「普段突っ張っている不良少年が、雨の中で捨て猫を拾う姿をたまたま見て、クラス一の美少女が、その優しさにキュンとなって恋に落ちる・・・」

そんな気分です(笑)。

ぜひ皆さんも本書を手にとってドゥームの魅力に触れてください!


全てがつながっている!3つのエピソード


ところで、本書は以下3つの短編で成り立ってます。
(※他にネイモア・ザ・サブマリナーを主人公にした短編2つも収録)

(1)『ドクター・ストレンジ&ドクター・ドゥーム』(ライター:ロジャー・スターン、1989年発表)
(2)『アストニッシング・テイルズ』#8(ライター:ジェリー・コンウェイ、1971年発表)
(3)『ドクター・ストレンジ』#57(ライター:ロジャー・スターン、1983年発表)

実は、この3つの短編は(2)→(3)→(1)の順につながっています。

ライターのロジャー・スターンが、ジェリー・コンウェイが書いた(2)を読んで、ドクター・ドゥームにスポットを当てた(1)を最初に構想したのは1982年です。

「ドクター・ドゥームが本気で母親の魂を救う気があるなら、直接冥界にアタックするはずだ。だが、そのためには科学の力だけでは足りない。最強の魔術師の援助が必要なはずだ。しかし自尊心が高いドゥームがドクター・ストレンジに助力を乞うなど考えられない。そうだ、100年に一度の魔術師の世界大会を開き、優勝者は準優勝者の願いを一つ適えなければならない、というルールを設けよう。それによって、ドクター・ストレンジが地球最高の至高魔術師であるという正式なお墨付きを与えることもできる。」というアイデアを思い付きました。

その伏線として、ロジャー・スターンは自身の作品である、ドクター・ストレンジを主人公とした(3)で、ドクター・ドゥームがドクター・ストレンジに弟子入りしようかと一瞬考える、というシーンをさりげなく入れてます。足かけ6年に及ぶ壮大な伏線です!

このあたりの本作の成り立ちは、本書P144・145に、ロジャー・スターンのインタビュー記事として載っていて、大変読み応えがあります。(1)(2)(3)を読み終えた後に必ず目を通していただきたいです!

……本書について語りたい事はまだまだたくさんありますが、いい加減他の仕事もしないと周りに怒られそうなので、今週はこのあたりで。最後までお読みいただきありがとうございました! 来週の更新もお楽しみに。

(文責:小出)


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