先日、ついに感動の大団円を迎えたコミック『キック・アス3』。皆さんお読みいただけましたでしょうか? じつはそちらの作品では、アメコミ史に残る大ヒットシリーズの結末とともに、新たなユニバースの誕生がこっそり描かれていました。その新ユニバースこそが、“ミラーワールド”です!
▲『ネメシス』 マーク・ミラー[作] スティーブ・マクニーブン[画] 定価:本体2,000円+税 ●好評発売中!● |
ミラーワールドとは……2003年のコミック『ウォンテッド』以来、人気ライターのマーク・ミラーがオリジナル作を刊行する際に使っていた個人ブランド名。発表する出版社が異なっても、本のどこかにミラーワールドのロゴが踊っていたので、自分の制作会社をアピールしているのかと思いきや、じつは文字通り一つの“ユニバース”を形成していることが最近判明しました。つまり、マーク・ミラーのオリジナル作品の多くは、同じ世界で起こっている出来事だったのです。
そして、『キック・アス3』の“ある部分”で言及されていた事件でもある作品が、今月同時に発売された『ネメシス』。では、その物語は……
強靭な肉体、莫大な資産、そして邪悪極まりない頭脳……すべてを兼ね備えたスーパーヴィラン“ネメシス”。世界中の有能な警官を次々と葬り去ったヤツが次に狙いを定めたのは、アメリカのブレイク・モロウ本部長。しかも、今回の標的はヤツにとって特別な意味があった……。大胆かつ卑劣な作戦で、アメリカ全土を混乱に陥れるネメシス。肉体と精神の限界に挑むかのような攻防戦の行方は……?
この“逆転したバットマン”とでもいえる過激な物語で、アートを担当したのは、次回のキャプテン・アメリカ映画の元ネタでもある『シビル・ウォー』や、年老いたウルヴァリンを主人公にした刺激的なディストピアもの『オールドマン・ローガン』といった話題作でミラーとタッグを組んだ、トップアーティストのスティーブ・マクニーブン。アメコミ界を代表する人気作家コンビによるオリジナル作品『ネメシス』、ぜひ『キック・アス3』と合わせてお楽しみください!
さて、他に一体どんな作品がミラーワールドにはあるのかというと……
●『ウォンテッド』(小社刊行)=2003~2005年刊。
○『チョーズン(Chosen)』=2004年刊。ピーター・グロス画。自分が現代に生まれ変わったイエス・キリストだと気づいた少年の運命を描く。
●『キック・アス』(小社刊行)=2008~2010年刊。
○『ネメシス』(本書)=2010~2011年刊。
○『スペリアー』(小社刊行予定)=2010~2013年刊。レイニル・フランシス・ユー画。重病をわずらった少年が、異星人の猿にスーパーマン的ヒーローに変身する力を授けられるが……。
●『キック・アス2』(小社刊行)=2010~2013年刊。
○『スーパークルックス』(小社刊行予定)=2012年刊。レイニル・フランシス・ユー画。落ちぶれたB級ヴィランたちが企てた、一発逆転の大勝負の行方は……?
●『キングスマン:ザ・シークレット・サービス』(小社刊行予定)=2012~2013年刊。デイブ・ギボンズ画。社会の底辺であえぐ少年が、スーパースパイであるおじの紹介で、エリートぞろいの英国スパイ学校に入学することに!
●『ヒットガール』(小社刊行)=2012~2013年刊。
○『ジュピターズ・レガシー(Jupiter's Legacy)』=2013~2015年刊。フランク・クワイトリー画。現代社会におけるスーパーヒーロー一族の苦闘、堕落、世代間の葛藤を描く。
○『スターライト(Starlight)』=2014年刊。ゴーラン・パーロフ画。フラッシュ・ゴードンやバック・ロジャースを思わせるパルプSF的ヒーローが年老いて、最後の冒険に臨む。
○『MPH』=2014年~。ダンカン・フィグレド画。4人の不良少年が手に入れたストリート・ドラッグには、高速移動を可能にする作用があった!
○『クロノノーツ(Chrononauts)』=2015年~。ショーン・ゴードン・マーフィー画。世界初の時間旅行者となった二人の青年を描いたバディもの。
●=映画化作品、○=ここ2~3年で映画化に向けて動きのあった作品――となります。そして赤字が『キック・アス3』内で言及されている作品です。映画化の状況はさまざまですが、なんだかスゴい勢いですね。コミック作家の個人レーベルといえば、かつてアラン・ムーアがジム・リーのもとでアメリカズ・ベスト・コミックス(ABC)を立ち上げたこともありましたが、展開の規模ではABC以上。一流のアーティストと組んで質の高いエンターテインメント作をコンスタントに刊行するミラーワールド、今後の発展に要注目です。
小社では、アメリカでヒットを飛ばした映画版の日本公開も楽しみな『キングスマン:ザ・シークレット・サービス』をはじめ、『スーパークルックス』『スペリアー』といった作品が発売予定となっていますので、そちらのほうもどうぞお楽しみに!
ではでは、今日はこんなところで
(文責:中沢俊介)