「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!
10月からShoPro Booksでは、「マーベル・ナウ!」で仕切り直されたデッドプール第3期シリーズをナンバリングして刊行してきました。
今月16日に刊行される『デッドプール Vol.3:グッド・バッド・アンド・アグリー』で、このシリーズは大きな山場を迎えます(ちなみにVol.1~2をご紹介した記事はこちらです)。
『デッドプール Vol.3:グッド・バッド・アンド・アグリー』 ジェリー・ダガン、ブライアン・ポゼーン[作] スコット・コブリッシュ他[画] 定価:2,000円+税 ◆2015年12月16日頃発売!◆ |
荒涼とした大地を舞台にした本書のストーリーは、確かに引用元の映画の雰囲気を彷彿とさせます。
本書はデッドプール第3期シリーズの#13~19をまとめた単行本で、前作『デッドプール Vol.2:ソウル・ハンター』のエンディングで示唆されたデッドプールのルーツが明かされます。前作、前々作の大きな特色となっていたオカルト色はグッと後退し、シリアスなストーリーが語られます。
デッドプールはなぜ不死身なのか? なぜ醜い姿になってしまったのか? その背景にはキャプテン・アメリカやウルヴァリンにも関係する、ある極秘軍事計画が関わっていました。極東アジアの某国で行われているその計画と、彼の家族のエピソードが絡まりながら、物語は彼の過去を解き明かしていきます。
前作同様、本書の冒頭にはスコット・コブリッシュがアートを手がけるレトロ風味のコメディエピソードを収録。本編の複線となる因縁の女カルメリタとの出会い、ヒーローズ・フォー・ハイヤーとの共闘がユーモアたっぷりに描かれます。
▲実験施設らしき場所に監禁されているデッドプール。その身にいったい何が起きたのか? |
▲荒野に廃棄された被験体デッドプール。彼の誕生の秘話が明らかになる |
明るく陽気でちょっとウザいデッドプールの裏に隠された悲劇を描くことで、キャラクターにさらなる深みを与えているのが本書です。ここまでデッドプールを追いかけてきたファンの方々には、ぜひ読んでいただきたいオススメの1冊です。
さて、2015年に刊行されたデッドプール関連作品は実に8冊になります。これもひとえにファンの皆さまの熱いリクエストがあったからに他なりません。
ここで、今年刊行したデッドプール関連作品を駆け足で振り返りたいと思います。
3月『デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション』
邦訳版第3弾。デッドプールのはちゃめちゃな魅力が詰まった読み切りエピソード集。併録された「デッドプール・チームアップ」は日本を舞台にしたエピソードです。
8月『アイデンティティ・ウォー:デッドプール/スパイダーマン/ハルク』
ひょんなことからパラレルワールドに来てしまったデッドプール、スパイダーマン、ハルクの3人。その裏に隠された陰謀とは…? 1冊で3人のヒーローの活躍を楽しめるお得な1冊です。
同月『デッドプールVS.カーネイジ』
デッドプールと最凶のシンビオート、カーネイジの対決を描いた作品。限界ギリギリのバイオレンス描写とデッドプールのユーモアセンスのバランスが絶妙です。
9月『デッドプール:モンキー・ビジネス』
ファン待望!? メイド姿のデッドプールが登場する人気エピソードを邦訳化。NYで起きた連続殺人事件の容疑者としてデッドプールを逮捕したスパイダーマンでしたが、その真犯人が伝説の“殺人猿”だったことから壮絶なバトルが展開されます。敵役ヒットモンキーのオリジンも併録しています。
同月『デッドプールの兵法入門』
『孫子の兵法書』を自身の著作として出版してひと山当てようと目論んだデッドプールが、人間界、アスガルドを巻き込んだ大戦争を仕掛けるというぶっ飛んだエピソード。アスガルドが舞台ということで、敵役はロキが務めます。
10月『デッドプール Vol.1:デッド・プレジデント』
「マーベル・ナウ!」で仕切り直された記念すべき第1巻。アメリカの行く末を憂うSHIELD隊員マイケルが、魔術の力で歴代大統領たちを蘇らせたら凶暴なゾンビになってしまった!? アメリカ各地から成層圏までデッドプールとゾンビ大統領たちが激戦を繰り広げます。
11月『デッドプール Vol.2:ソウル・ハンター』
よりオカルト色が強くなった第2巻では、悪魔ベティスに雇われたデッドプールが過去に悪魔と契約した人々の魂を回収して回るのですが、そのなかにSHIELD隊員マイケルがいたから、さあ大変! 契約を反故にするために一計を案じますが…。
こうして振り返ると、デッドプール作品の幅の広さに驚かされますね。小社デッドプール作品のすべてを翻訳した高木亮氏は、その魅力をこう語ります。
「メタ認識を持っていることですね。第四の壁(※)を越えることが一過性のギャグではなく、常にキャラクターの属性になっています。まさに前代未聞のキャラクターなので、その面白さが一番の魅力なんだと思います。今後は、シリアスな部分とギャグの部分が上手くミックスされていくので、ファンの方にはそこを楽しんでもらいたいです。影を背負って、キャラクターとして深みを増していきますから」
※演劇用語で、現実とフィクションを隔てる境界のこと。
ただのアンチヒーローではなく、時にコミックからハミ出して、編集者の文句を言ったり読者に話しかけてしまう破天荒さに加え、ハードボイルドな魅力まで加わったデッドプール。来年2月には映画版の全米公開(公式予告編はこちら)も決定しており、ますます目が離せません。
2016年も、ShoPro Booksではデッドプールをフィーチャーしていきます!
それでは今週はこの辺りで失礼します。また来週お会いしましょう!
(文責:山口侘助)