読者の皆様、こんにちは! 「アメコミ魂」ライターの乙間です。
さあ、今週は明日発売する待望のコミック『ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ』を紹介したいと思います。お題に「裏話」とありますが、それは後程に……。
本書は、2004年に発表されたロバート・ロディ脚本、エサッド・リビッチ作画による4話のリミテッドシリーズ「ロキ」を中心に、1962年に発表されたロキ初登場の「ジャーニー・イントゥ・ミステリー」85号、1965年に発表されたロキの出生を明かした「ジャーニー・イントゥ・ミステリー」112号、さらに2009年に発表された「ソー」12号が収録されており、ソーファン、特にロキファンには堪らない内容となっています。
ⓒ 2016 MARVEL |
このアニメシリーズには、先月小社より発売したレジナルド・ハドリン(脚本)、ジョン・ロミータJr.(作画)の『ブラックパンサー:暁の黒豹』も加わっており、その他にも以前小社より発売していたポール・ジェンキンス(脚本)、アンディ・キューバート(作画)の『X-MEN ウルヴァリン:オリジン』やウォーレン・エリス(脚本)、アディ・グラノフ(作画)の『アイアンマン:エクストリミス』などもアニメ化されています。そもそも「マーベル・ナイツ」という名称は、1998年からスタートしたマーベル・コミックスによる大人向けのインプリント(レーベル/ブランド名の意。DCコミックスでいうと、バーティゴもインプリントですね)のことで、デアデビルやパニッシャーなどのクライムヒーローが多く扱われています。また、独自の世界観が確立された外伝なので、重厚な読み切り作品として楽しめます。 ちなみに小社より6月22日に発売する『デアデビル:イエロー』や発売中の『スパイダーマン:ブルー』もこのマーベル・ナイツより刊行されました。
ⓒ 2016 MARVEL |
■北欧神話
前段として、「マイティ・ソー」は北欧神話(9世紀頃からスカンディナビア半島を中心に伝わる古代神話)がベースです。 北欧神話は、世界樹ユグドラシルを基軸に、神々が住む世界アスガルド(アースガルズ、アースガルド)などの宇宙、人間が住む世界ミッドガルド(ミズガルズ、ミズカルド)などの宇宙、死者が住む世界ヘルヘイムなどの宇宙と、大きく三層の宇宙に分かれた9つの世界が舞台となり、そこで神々や精霊、人間や巨人、怪物などといった者たちが絡み合う壮大な物語になっています。また、ギリシア神話同様、北欧神話も数々の創作作品に影響を及ぼしており、最終戦争や終末の日の意味である「ラグナロク」という言葉も一度は聞いたことがあるかと思いますが、こちらも北欧神話からきています。北欧神話の登場人物の神々で有名なのは全知全能の神オーディン、最強の神ソー(トール)、邪神ロキのほか、オーディンに使える女神ヴァルキリー(ワルキューレ)なども有名ですね。ちなみに、北欧神話の神々は曜日の語源にも足跡を残しており、北ゲルマン語(北欧語)で「Torsdag」(木曜日/英語:Thursday)は、「Tor(トール)の日」を意味し、雷神ソーからきているようです。
■ソー&ロキ
先の通り、「マイティ・ソー」の世界観は北欧神話をベースにしているので、当然北欧神話の彼らと通じるものはありますが、あくまでマーベル・ユニバースのキャラクターなので、彼らのことも簡単に紹介したいと思います。
ソー
初登場:「Journey into Mystery」#83(1962年8月)
アスガルドの支配者オーディンとミッドガルド(人間界)の地母神ガイアの間に生まれた息子。アスガルド最強の戦士。魔法のハンマー「ムジョルニア」を操る。
ロキ
初登場:「Journey into Mystery」#85(1962年10月)
ソーの義弟(巨人族の息子だが、オーディンの養子として育てられる)にして最大の宿敵。オーディンの後継者であるソーを妬み、数々の策略をはかる。魔術を操り、瞬間移動、テレパシーや変身能力、そして天才的な知性をも備えている。ちなみに北欧神話では、ロキはオーディンの義兄弟として知られている。
オーディン
アスガルドの王にしてソーの父親。ロキの養父。
ボールダ―
ソーの異母兄弟にして親友。
シフ
ソーの幼馴染で恋仲になったこともある女神。
では、世界観やキャラクターも理解したところで、『ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ』の話に戻りましょう。本書は、映画『アベンジャーズ』をはじめとする数々のマーベル映画やアニメ作品で、圧倒的な存在感を発揮した人気ヴィラン「ロキ」が主演するコミックの初邦訳作品です。また、冒頭で述べたように巻末には、ロキ初登場号も収録しているので、ロキファンは絶対見逃せません。光あるところに影がある……と、アニメ『サスケ』(1968)の口上ではありませんが、『ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ』は、「光」にあたる雷神ソーと、「影」にあたる邪神ロキの切っても切り離せない二人の関係が凝縮されています。ロキの飽くなき権力欲とアスガルドの神々から受けた屈辱、そして兄と冷淡な父に対する根深い羨望と怒り……それらの鬱積した感情が爆発し、ロキはとうとうアスガルドを掌握することになります。いったいアスガルドはどうなってしまうのか、そしてソーは……結末はぜひ本誌でお楽しみください!
最後に本書の「裏話」を……と申しましても、正確には、本書の「邦訳版が決まった背景」を簡単にご紹介しようかと思います。2~3年くらい前のことになりますが、「アメコミ魂」のTwitterアカウントを閉鎖する直前に、アメコミのキャラクター人気投票のようなものを行っていました。上位にランクインしたキャラクターは邦訳を検討するという内容だったかと思います。その頃のロキ人気(もしくはロキ役のトム・ヒドルストン人気)もあって、第1位がロキ、第2位がシャザムでした。もちろん組織票はあったと思いますが、編集部はこの上位2キャラの邦訳化について真剣に考えていたようです(もちろん第3位以降のキャラクターについても検討していたようです)。結果、翻訳者の内藤真代さんの持ち込みもあって、第2位のシャザムが『シャザム!:魔法の守護者』として先に邦訳されましたが、ロキについても、編集部は読者アンケートに再度目を通しながら、どのタイトルを邦訳するか悩んでいました。そんな折、小社が初めて出店した昨年の神保町ブックフェスティバルにて、二人の女性読者から一編の試訳と企画書の持ち込みを頂戴し、その中の一つにあったのが、『ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ』だったのです。人気投票に参加していただいた読者の皆様と、持ち込みにより邦訳のきっかけを作っていただいた方々のおかげで邦訳版が世に出ることができました。編集部に代わってお礼申し上げます。
思えば、ShoPro Booksは、直接的にせよ、間接的にせよ、常に読者の声に耳を傾けているかと思います。古くは、『バットマン:アーカム・アサイラム』や『キングダム・カム』の復刊、『バットマン:ノーマンズ・ランド』、『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』、『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』なども読者の声から生まれました。『トランスフォーマー:オール・ヘイル・メガトロン』も『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』も推薦してくれる読者がいなかったら刊行されていなかったかもしれません。直近で申しますと、『ゴッサム・アカデミー』や『ティーン・タイタンズGO!』も読者アンケートの上位にありました。今後も、常に読者と向き合っている編集部であってほしい、そう願っています。
来週は発売直前の『ホークアイ VS. デッドプール』と『クァンタム&ウッディ3』を紹介したいと思います。
では、また来週火曜日の正午に。
(文責:乙間萌生)
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