2018年8月28日火曜日

仁義なき戦い!『デッドプール:デッドプールVS.セイバートゥース』



アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!
本日ご紹介するコミックスは、先週発売されたばかりのデッドプール第4期レギュラーシリーズ「ワールドグレイテスト」VOL3となる『デッドプール:デッドプールVS.セイバートゥース』です。


ジェリー・ダガン[作]
マテオ・ロリ他[画]
定価:本体2,100円+税
●2018年08月23日頃発売●

収録されているのは、セイバートゥースとの死闘を描いた本編#8-11と、2099年のデッドプールを描いた「デッドプール2099」第2章です。

それでは、前号VOL2「アメコミ魂」に引き続いて、今回も米国版Amazonレビューから見ていきましょう。

まずは最も好意的なレビューから。

★★★★★

"迷惑なくらい面白い!"

デッドプール最高!(映画がね!)
ライアン・レイノルズは、グリーンランタンより断然いいね。
実はデッドプールのコミックスは読んだことがなかったんだけど、映画がヒットしてから『DEADPOOL: Secret Invasion』を買いに行ったんだ。話の雰囲気が気に入ったよ。
『デッドプールVS.セイバートゥース』はキンドル版で読んだけど、紙の本と同じ程度だね。次VOL2をまたキンドルで買おうと思うよ!

(-_-).o0○(…絶賛してるのはコミックスじゃなくて映画ですよね!
キンドル版と書籍版が同じクオリティって、そらそうよ。
そして、VOL2はVOL3の前に読んだ方がいいよ!)

…と、なんかツッコミどころ満載なレビューでしたが、続いて最も批判的なレビューも見てみましょう。

★★★☆☆

"ウルヴァリンの絵が似てない事を除けば良かった"

このコミックスは最高だよ…、もしアーティストがウルヴァリンをもっと良く描いていたらね。彼の見た目は本当に酷いよ。デッドプールは最高さ、楽しいし狂ってるし、ウルヴァリンを何度も痛めつけるんだ!

(-_-).o0○(…ウルヴァリン出てきてましたっけ? セイバートゥースの間違いじゃ…?)

最も好意的も最も批判的もどちらも微妙なレビューでしたので、もう一つだけ引用させていただきます。

★★★★☆

"最初からVOL3の内容でシリーズを始めれば良かったのに!"

VOL1『ミリオネア・ウィズ・ア・マウス』、VOL2『エンド・オブ・エラー』ではマークス・フォー・マネーにフォーカスが当たってたけど、VOL3でついにデッドプールがセンターステージに帰ってきた! 冗談を言い、戦い、爆発し、殺す…。うん、期待どおりのデップーだよ!

新しいデッドプールファンには、このコミックスを読むように絶対薦めるよ! 昔からのファンにはどうだって? …だって彼らはもう既に読んでるだろ?

…そうです。このレビューのとおり、本書でついにデッドプールがストーリーの中心に帰ってきました。
しかも前「マーベル・ナウ」シリーズから続くウェイド・ウィルソンの過去の精算と、彼の未来へと繋がる内容となっているのです。

新旧問わずデッドプールファンの皆さんに読んでいただきたい一冊です。

それでは本書の紹介に入りましょう。
あ、ちなみに本ブログは"ネタバレ有り"です。
本書を既にお持ちでまだ読んでないという方は、本書を先に読んでから本ブログを見ていただけたらと思います。


『デッドプールVS.セイバートゥース』に至る経緯


まずは前号『デッドプール:エンド・オブ・エラー』のおさらいから

記憶障害と双極性障害で俺ちゃん"悪意の手帖"に書いてある人物を何度も襲うデッドプール。
その手帖の中で「セイバートゥースがガソリンを用意した」というメモを見つけたデッドプールはセイバートゥースをぶっ殺そうと決意します。

…ってこれだけじゃ訳が分かりませんね。

話は前シリーズ「マーベル・ナウ」に遡ります。

デッドプールはバトラー博士の被検体として洗脳されていた一時期、傭兵として彼が命令する人物を殺していました。そのときバトラーに一緒に協力していたのがセイバートゥースです。
そして、デッドプールはバトラー博士に命じられるまま、カナダの自分の生家にガソリンで火を放ち、両親を焼き殺してしまいました。
(詳細は、『デッドプールVOL.6:オリジナル・シン』をご覧ください。)

しかしデッドプールはこの出来事を覚えていません。
そう、デッドプールは人を殺しても次の日にはそれを忘れてしまうのです。

彼の記憶力がこうも悪い理由は、『エンド・オブ・エラー』P7に描かれているように、過去の戦いで頭に銃弾をぶち込まれたり刀で真っ二つにされたりしてきたから。
…というのは冗談で、ウェポン・プラス計画によりヒーリングファクターを手に入れた結果、癌による脳細胞の破壊と再生が繰り返されることと、バトラー博士による洗脳の結果です。
(詳細は、デッドプールの哀しいオリジンを語った名作『デッドプールVOl.3:グッド・バッド・アンド・アグリー』をぜひご覧ください。泣けます!)

ウェポン・プラス計画とは、アメリカ政府とカナダの秘密組織デパートメントKが共同で行った超人兵士計画。特にウルヴァリンにアダマンチウム合金を結合し、セイバートゥースを強化し、デッドプールを生み出したウェポンX計画が有名です。

バトラー博士はウェポン・プラス計画メンバーの一人です。
デッドプールがウェポンX計画から逃げ出してから一時期、デッドプールを被験体にヒーリングファクターの研究をしていました。
その目的は、ウェイド・ウィルソンと同じく癌で余命幾ばくもない妹を救うためです。
(※バトラーとデッドプールの因縁と結末は上記『グッド・バッド・アンド・アグリー』でご覧ください。)

…おぼろげな記憶を頼りにデッドプールは、バトラー博士の閉鎖された薬局、カナダの生家跡、そして放火前に酒を飲んだバーを訪れ、そこにセイバートゥースがいたことを思い出し、さらにセイバートゥースが両親を殺したという誤った記憶が蘇ります。

そしてデッドプールはセイバートゥースへの復讐を誓います!


セイバートゥースの略歴


ここで、本書のもう一人の主人公、セイバートゥースの略歴をご紹介します。

セイバートゥースとは?

本名ビクター・クリード。
初登場は『アイアンフィスト』#14(1977年)。

ウルヴァリンの宿敵で、ほぼ同等の能力を持つミュータント。ウェポンX計画の被験者でもあり記憶障害を持ち、過去の経歴等は謎に包まれています。

ウルヴァリン同様、超回復能力ヒーリングファクターと加齢遅延属性を持ち、獣のような俊敏性と戦闘力、鋭い爪と牙を武器に戦います。

ウルヴァリンを目の敵にし、彼の誕生日の度に彼の大事なものを奪うというイカレタ趣味を持ちます。かつてウルヴァリンの恋人シルバー・フォックスを惨殺したこともあります。

2014年のイベント『アベンジャーズVS.X-MEN:アクシス』で、<反転>呪文によりヴィランからヒーローへ変身しました。
ヒーロー活動としては、アベンジャーズ・ユニティ・スクワッドに参加し、ウルヴァリン亡き後は彼の遺志を継いで行動しています。

現在はマグニートーらとともに新生X-MENを結成し、後述するテリジェン・ミストからミュータントを守るための活動をしています。

2009年映画『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』では、ローガンの兄という設定で、ウルヴァリンとともにW主人公として出演しました。
その能力は鋭い爪を武器とした戦闘能力やヒーリングファクターなど、コミック版をほぼ踏襲しています。


不死身VS.不死身の終わりなきバトル勃発!


「ローガンができなかったことをやってやる」
「てめえをぶっ殺す!」



二人の戦いは、セイバートゥースの頭蓋骨が剥き出しになり、デッドプールの内臓が飛び出してと、…文字どおり血で血を洗うグロい戦いが展開されます。

お互いヒーリングファクター能力を持つ者同士。…この戦いに終わりはあるのでしょうか?
そして、お互い死なないのに戦う意味はあるのでしょうか?

そもそも戦う理由がデッドプールの勘違いによる敵討ち。
そして両親殺しの真犯人は実は自分自身という…。
デップーさん、ソレどうなんでしょう…。

デッドプールは本気でセイバートゥースを殺しにきますが、一方のセイバートゥースはどこか手加減気味。
セイバートゥースは、バトラーの被検体だった頃からデッドプールに同情的で、戦いの最中もデッドプールを気遣います。

「ウェイドが罪悪感を感じる必要はない」
「オレは何百人も殺してきた。オレの犯行にすればいい」
「そうすれば、こいつを救える」

セイバートゥース、滅茶苦茶いい奴じゃん!


テリジェン・ミスト――ミュータント絶対殺すガス!


警察ヘリと取材ヘリが空中で衝突し、トラックの積み荷が路上に転がり落ち、デッドプールがトラックに飛び乗り…と、映画さながらのアクションシーンが続く中、不死身同士の戦いを終わらせる秘密兵器をデッドプールは取り出します。

ミュータント種族を殺すガス、テリジェン・ミストです。

テリジェン・ミストはインヒューマンズの能力の発現を促す触媒ですが、ミュータントにとっては死をもたらす伝染病M-ポックスを発病させる毒物です。

2013年「インフィニティ」事件においてサノスが地球侵攻した際、インヒューマンズの王ブラックボルトは地球の大気に大量のテリジェン・ミストを放出しました。
これによりインヒューマン遺伝子を持った何百人の人間がインヒューマンズのパワーを獲得すると同時に、空中のテリジェン・ミストは大気中の物質と反応し、ミュータントの生存を脅かす物質となりました。

デッドプールはこの、ミュータントにとって禁断の武器をセイバートゥースに使おうとします。

いや、さすがにやりすぎなんじゃ、デッドプール…と、読者も引くぐらい今回のデッドプールはガチです。
果たしてデッドプールは本当にセイバートゥースを殺してしまうのでしょうか?
(繰り返しますが、セイバートゥースが両親を殺したというのは勘違いです…)。


デッドプールの未来へとつながる伏線


ここでセイバートゥースは、デッドプールの未来を左右しかねない重大な秘密を告白します。

「こいつの娘はミュータントだ」
「X遺伝子が目覚める頃にはTミストが消えていればいいが」

その後、デッドプールはドクター・ストレンジのサンクタム・サンクトラムの館を訪れ、過去のデッドプールの行動を録画したVHSビデオを暖炉で燃やし、さらにバトラーとデッドプールに関する日記を焼き払います。

「もう過去は振り返らない」
「人生の無駄だ」
「俺には未来があるんだ」

…そう、デッドプールはついにバトラーの洗脳のくびきを脱したのでしょう。
思うに、それもこれもセイバートゥースの優しさのおかげです。

こうしてデッドプールは未来へと新たな一歩を踏み出します。
そして物語は巻末に同時収録のミニシリーズ「デッドプール2099」へと続きます!
(未来に飛びすぎじゃ・・・)

※「デッドプール2099」では、本編に関連する"ある人物"が登場します。この人物の登場で今後、本編と「デッドプール2099」が繋がってくる気がします。

以上、今週のアメコミ魂はこの辺りとさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました。

追伸:
改めて本書を読んだ感想を一言。
「セイバートゥースはめっちゃいい奴だ!」

そして、セイバートゥースのバイクのシートに接着剤を塗るデッドプール、「最低な奴だな!」(笑)

(文責:小出)

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