ただいま一部で熱狂的な支持を集めている注目作が、待望の日本上陸!……ということで、今回は『クァンタム&ウッディ:世界最悪のスーパーヒーロー』(以下『Q&W』)をご紹介させていただきます。
▲『クァンタム&ウッディ: 世界最悪のスーパーヒーロー』 ジェームズ・アスムス[作] トム・ファウラー[画] 定価:本体1,800円+税 ●好評発売中!● |
□エリック(カバーイラスト向かって左):真面目な性格のアフリカ系アメリカ人。元軍人。現在は民間軍事会社の警備員。
☆ウッディ(カバーイラスト向かって右):おちゃらけた性格の白人男性。幼い頃、エリックの父に養護施設から引き取られた。家を飛び出して以来、定職にもつかずにブラブラしている。
このように何から何まで正反対の二人。ある日、天才科学者だったエリックの父が何者かに殺され、葬式で久しぶりに顔を合わせても、さっそくケンカを始める始末です。しかし、事件の真相を究明しようと父親の研究所に忍び込んだ二人は、アクシデントに見舞われ、スーパーパワーを手に入れてしまいます。
□エリック(ヒーロー名:クァンタム)→量子エネルギーで防御バリアを作る。
☆ウッディ→指先からエネルギー・ブラストを発射。
研究所でひと騒動巻き起こした二人は、父親殺しの容疑者にされ、しかも、父親の研究の秘密を狙う組織にも目をつけられる羽目に。謎を追いながらも追われる身になった二人の運命やいかに?
かたやカタブツ、かたやトラブルメーカー――そんな二人の凸凹コンビぶりが本作の最大の魅力。破たんしているように見えながらも、ますます結び付けられてしまう関係性、ふだんはいがみ合いながらも、不思議と噛み合ってしまう相性のよさ――まさに“バディもの”の醍醐味を満喫できます。あと、ひょんなことから二人についてくることになる“ヤギ”(カバーイラスト下)にもご注目を。
翻訳を担当されたのは光岡三ツ子さん。じつは、本作は1997年から2000年にかけて刊行されていたカルト・コミックのリ・イマジネーション版なのですが、そんな旧シリーズからのファンだった光岡さんによる解説も含め、ぜひお楽しみください!
さて、『Q&W』はDCでもマーベルでもない出版社――バリアント・エンターテインメントからのアメコミです。同社は2012年から新作コミックの刊行を始めた新興の出版社ですが、“バリアント”という名前のコミック会社は過去にも存在しました。1980年代末期、マーベル・コミックスの元編集長を中心に立ち上げられたバリアント・コミックス(以下、旧バリアント)です。
1991年からスーパーヒーロー系のコミックを出版するようになった旧バリアントは、大人びた内容と斬新な販売戦略で、間もなくDC/マーベルに次ぐ勢力として頭角を現し、翌年出版を開始した『スポーン』『ワイルドキャッツ』のイメージ・コミックスとともに、1990年代を象徴するコミック会社として一時代を築いたのです。90年代半ばにはコミック業界のバブル崩壊もあって失速してしまいましたが(一時期、ゲーム会社の傘下に入ってアクレイム・コミックスと改名)、2000年代に入って、キャラクターの権利を買い取ったバリアント・エンターテインメントが再び新作コミックの出版に乗り出しました。『Q&W』もそんな作品の一つです。では、バリアントには他にどんな作品があるかというと……
○『X-Oマノウォー』:1600年前、宇宙人にさらわれた西ゴート族の戦士が、謎のアーマーを手に入れて現代の地球に帰還する。
○『ハービンジャー』:世界征服を企む超能力者トーヨー・ハラダの施設から逃げ出した少年たちが、トーヨーの野望を阻止するために戦いを挑む!
○『ブラッドショット』:ナノマシンを注射されて超人的な戦士となった男。失われた記憶を求める彼を待ち受ける、戦いに次ぐ戦い……。
○『アーチャー&アームストロング』:秘密結社に育てられた少年アーチャー。彼の使命は、メソポタミア文明の時代から生き続ける男アームストロングの抹殺だったが……?
そしてバリアントの作品は、すべて一つのユニバース内で展開しています。つまり、『Q&W』も、じつは上記の作品群と同じ世界の出来事なのです!
これらの作品を皮切りに、バリアント・ユニバースにはシャドウマン、エターナル・ウォリアー、ライといったキャラクターが加わり、2013年の“ハービンジャー・ウォーズ”、2014年の“アーマー・ハンターズ”といったクロスオーバー・イベントを経ながら、順調に成長しています。圧倒的な歴史を抱えた大手2社とは対照的な、バリアントの“今、生まれつつあるユニバース”の動向は、アメリカのメインストリームでは、新旧どちらのファンにとっても見逃せないものになっています。
ところで、“大手2社のものでない”“バディもの”のアメコミといえば、小社からは『R.I.P.D.アール・アイ・ピー・ディー』(ダークホース・コミックス)と『2ガンズ』(ブーム・スタジオ)が出ています。どちらも映画化作品。そういえば、まだ具体的な話はないようですが、『Q&W』もドラマか映画になったら面白そうだなあ……なんて思ったりして。
ではでは、今日はこんなところで失礼します。
(文責:中沢俊介)