2016年1月11日月曜日

ヴィランの特攻部隊「スーサイド・スクワッド」とは?

「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!

お正月が過ぎて、今日は三連休の最終日。お休み気分をそろそろ切り替える時期ですね。

さて、今回の「アメコミ魂」では、ヴィランによって結成されたチーム「スーサイド・スクワッド」をご紹介したいと思います。

スーサイド・スクワッドの初登場はけっこう古く、19599月に刊行された『ブレイブ&ボールド』誌になります。
写真右から1987年にスタートした『スーサイド・スクワッド』第2期シリーズの#2、#14
※原著イメージ
その後、19875月に刊行された第2期シリーズの『スーサイド・スクワッド』#1によって、基本的なコンセプトが確立されます。そのコンセプトとは、「減刑と引き換えに政府の無謀な作戦に駆り出されたスーパーヴィランたちによる特殊部隊」というもの。

ヴィランたちの活躍を描くという作品の性質上、いわゆる一般的なスーパーヒーロー物と比べると、ハードボイルドな展開が特徴で、冷徹に作戦を遂行していく姿にはケイパー物(計画犯罪劇)、アンチ・ヒーローの魅力が詰まっています。

正義の側に立ったスーパーヒーローたちのストーリーとは対照的な彼らの活躍は、コミックファンにも受け入れられ、後のDCコミックスのユニバースを形成する大きな要素になっていきます。

また、デッドショットが人気ヴィランに昇格したという点も、このシリーズの功績として記しておきたい点といえるでしょう。

「ニュー52」によってリランチされて以降は、基本的な設定は踏襲しつつも、人気ヴィランのハーレイ・クインなどがメンバーに加入。この「ニュー52」版『スーサイド・スクワッド』の#1-7201111月〜20125月)をまとめた単行本を『スーサイド・スクワッド:悪虐の狂宴』として、今月27日に刊行いたします。本書には、ここまで述べてきたスーサイド・スクワッドの詳細な解説がついていますので、ぜひそちらもご一読いただきたいです。

スーサイド・スクワッド:悪虐の狂宴』のあらすじを軽くご説明いたしますと、減刑と引き換えに集められたヴィランたち(デッドショット、ハーレイ・クイン、エル・ディアブロ、ブラックスパイダー、キングシャーク、ボルテイク)がベースボールスタジアムに送り込まれます。そこには、生体兵器と化した6万人の観客がいました。彼らは観客たちを、“処理”するために送り込まれたのです。非情な任務を遂行するにつれ、その事件の背景にある陰謀などが明らかになっていきます。果たして彼らは生き延びることができるのか? 
スーサイド・スクワッド 悪虐の狂宴
アダム・グラス[作]
フェデリコ・ダロッチオ[画]
定価:2,000円+税
部隊の実質的なリーダーであるデッドショットを中心に、ハーレイ・クインの暴走などにより物語は過激に展開していきます。デッドショットの冷徹に任務を遂行していくハードボイルドな魅力や、ハーレイ・クインの病的かつエロティックなキャラクター(単独誌では、コミカルでキュートな面が強調されています)などなど、まさに「悪(ワル)の魅力」が詰まった物語を、ぜひ手に取って楽しんでいただきたいです。

さて「スーサイド・スクワッド」といえば、今年は映画版が公開されることでも話題になっています(予告編はこちら)。

前回の「2016年公開のアメコミ映画特集」でも取り上げましたが、ここで改めて映画版『スーサイド・スクワッド』の追加情報をご紹介したいと思います。

まず、映画版『スーサイド・スクワッド』のメンバーをご紹介します。()内はそれぞれ演じる俳優たちを記載しています。

デッドショット(ウィル・スミス)
ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)
リック・フラッグ(ジョエル・キナマン)
エル・ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)
スリップノット(アダム・ビーチ)
キャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー)
カタナ(カレン・フクハラ)
エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)
キラー・クロック(アドウェール・アキノエ=アグバエ)

そして本作最大の注目キャスティングが、ジョーカーを演じるジャレッド・レトです。『ダラス・バイヤーズクラブ』(2014年公開/予告編はこちら)で、トランスジェンダーのHIV患者レイヨンを演じ、第86回アカデミー賞を筆頭に、第71回ゴールデングローブ賞、第20回全米俳優協同組合賞、第79回ニューヨーク映画批評家賞など数々の映画賞で助演男優賞を受賞して地位を確立した若手実力派俳優です。ビジュアルから徹底的に役になりきるレトですが、その姿勢は今回も健在です。先日、日本で公開された公式ビジュアルの狂気に満ちたジョーカーの笑顔は、これまでジョーカーを演じてきたジャック・ニコルソン、ヒース・レジャーと比較しても見劣りしません。予告編で見られる笑顔が張りついたまま変化しないジョーカーの表情が印象に残ります。

豪華キャスティングでも話題になっている本作によって、コミックの『スーサイド・スクワッド』にもますます注目が集まることでしょう。元々、邦訳化を望んでいたコアなコミックファンはもちろんですが、映画をきっかけにコミックに興味がわいた方々は、映画の予習として『スーサイド・スクワッド:悪虐の狂宴』を読まれてはいかがでしょうか?

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!


(文責・山口侘助)