2016年1月18日月曜日

“エメラルドの射手”、グリーンアローとは?

「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!

この冬は暖冬と言われていますが、本日の東京は雪景色。皆さま、お足元はお気を付けください。

さて、今年から「DCエクステンデッド・ユニバース」が本格的に始動し、DCコミックスをモチーフにした映画の製作が続々と決まっていますが、その流れはドラマにも及んでいます。その嚆矢となったのがグリーンアローを元にした『ARROW / アロー』(予告編はこちら)です。

201210月に第1シーズンがアメリカで放送開始になり、昨年10月に第4シーズンの放送がスタート。アメコミドラマとしては長寿のシリーズです。本シリーズのスピンオフとして、一昨年からフラッシュが主人公の『THE FLASH / フラッシュ』(予告編はこちら)も放送がスタート。こちらも第2シリーズの放送が決まっており、着実に人気を集めていることがうかがえます。他にもゴッサムシティを舞台に若き日のゴードンの活躍を描く『GOTHAM / ゴッサム』(予告編はこちら)が放送され、DCコミックスのドラマは着実にユニバースを広げています。

さて今回は、それらDCコミックスのドラマ群の先駆けになった『ARROW / アロー』と縁の深いコミック、『グリーンアロー:イヤーワン』のご紹介です。本書『グリーンアロー:イヤーワン』は、「ニュー52」以前の2007年に、全6号のリミテッドシリーズとして刊行されました。今月27日に邦訳版が小社より刊行される本書のあらましをご紹介いたします。


アンディ・ディグル[作] ジョック[画]
定価:2,200円+税
127日頃発売予定◆
本書では、スリル中毒の若き富豪オリバー・クイーンが“エメラルドの射手”ことグリーンアローへと変貌するきっかけとなるエピソードが描かれます。

信頼するボディーガードの裏切りに遭い、絶海の孤島へと漂着したオリバー。手製の弓矢だけを頼りに、生と死が隣り合わせのサバイバルを生き抜くうちに正義に目覚めます。そして彼を苦境へと追い込んだドラッグ商人たちと対決することになるのですが……。

若き富豪が絶海の孤島でのサバイバルのなかで正義に目覚めるという設定は、多少の改変こそあるものの、ドラマ『ARROW / アロー』でも踏襲されています。そもそもグリーンアローことオリバー・クインが初登場したのは1941の『モアファンコミック#73になります。この頃のグリーンアローの設定では、オリバーは考古学者という設定で、ネイティブ・アメリカンの研究をしていたため、弓矢の腕に秀でていたということになっていました。

60年代に入り、ビジュアル面では、コスチュームが野性的なデザインになり、その後のトレードマークになるヒゲが加わりました。また億万長者から没落したという設定が加わり、より市民に近い目線を持ったヒーローになりました。同じく“緑のヒーロー”であるグリーンランタンとコンビを組み、ヴィランではなく、人種差別やフェミニズム、カルト宗教など当時の社会問題と対峙するヒーローとして、社会派コミックの古典となっていきました。

90年代にはオリバー・クイーンのグリーンアローはメトロポリスを守るために死亡し、実の息子コナー・ホークが2代目グリーンアローを襲名。21世紀には、コミック好きの映画監督ケビン・スミスをライターに迎えた新シリーズの立ち上げにともない、オリバーが華々しく復活します。そして2011年に行われたDCコミックスの一大リランチ「ニュー
52」以降は、オリバーはハイテク企業「Qコア」の若き社長として、ヒゲや息子、結婚といった設定はなかったことになりました。ちなみに「ニュー52」のオリジンは『DCキャラクターズ:オリジン』(小社刊)に収録されていますので、気になる方はそちらもお手にとっていただけたらと思います。

創刊当初は頻繁にライターが変わり、方向性が定まりませんでしたが、2013年の#17以降からシリーズを任されたライターのジェフ・レミアとアーティストのアンドレア・ソレンティノが描き出した“アロー一族”の物語によって高評価を獲得。現在に至ります。

ここまで、グリーンアローの来歴を駆け足でご紹介してきました。本書『グリーンアロー:イヤーワン』には、グリーンアローの成り立ちから現在に至るまでの経緯を、翻訳家・中沢俊介さんがより詳細に解説していますので、そちらもぜひご覧ください。

従来のアメコミファンはもちろん、ドラマ『ARROW / アロー』にハマっている方にもぜひオススメしたい1冊です。

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!


(文責・山口侘助)