2017年10月10日火曜日

解説『オールスター・バットマン:ワースト・エネミー』



アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!

本日ご紹介するのは、明日発売になる新刊『オールスター・バットマン:ワースト・エネミー』です!

オールスター・バットマン:ワースト・エネミー
スコット・スナイダー[作]
ジョン・ロミータ・Jr 他[画]
定価:本体2,300円+税
●10月11日頃発売●

本書は、2016年5月から始まったDCコミックスの新体制“DCリバース”の一環として、同年8月に創刊され、2月までに発売されたシリーズの#1-5を収録したものです。月2回刊行の雑誌が多いDCリバース作品のなかで本シリーズは月刊で刊行されましたが、そのぶん各号のページ数が増えて、#1-4の巻末には短編も併載されました。

内容としては、DCリバース直前からバットマンの仲間になったデューク・トーマスに焦点を当てた本筋シリーズの前日譚で、単行本ではPAGE 138以降にまとめて収録されています。なお、“オールスター”とはかつて存在したDCのレーベル名で、10年ほど前に『オールスター:バットマン&ロビン ザ・ボーイ・ワンダー』『オールスター:スーパーマン』の2作が発売されました。しかし、本書との直接的な関係はありません

本シリーズで脚本を担当するのはスコット・スナイダー。DCリバースに先立つ“ニュー52”でアーティストのグレッグ・カプロとともに『バットマン』シリーズ(小社刊)を成功に導き、DCを支える主柱の一人になったライターです。

本シリーズ立ち上げ時のインタビューによると、約5年間にわたったニュー52の雑誌が終わりを迎えようとする頃には、しばらくコミックの仕事から離れることまで考えていたとのこと。しかし、まだ使っていないバットマンの主要ヴィランがいることや、彼らを使って表現したい物語があると思い至りました。そして、彼が注目しているさまざまなアーティストと組んで、それぞれのヴィランを掘り下げる本シリーズが生まれることになったのです。作家陣と登場ヴィランが“オールスター”というわけです。

ちなみに、本書で取り上げられたヴィランは下記になります。

▊主要ヴィラン

○トゥーフェイス
本名ハービー・デント。かつては地方検事として犯罪と戦っていたものの、ギャングに硫酸を浴びせられて精神のバランスを崩し、ヴィランに身を落とした。両面とも表側の柄になっているが、片方に傷のある“双頭”の銀貨を持ち歩く。従来の設定としては、数字の“2”や二面性に病的にこだわり、コインを投げて表裏どちらが出るかによって、自分の行動を決めることで知られていた。


○ビースト
本名アナトリ・クナイゼフ。旧ソ連で育成された暗殺者で、同国の国家保安委員会(KGB)にちなんだ“KGビースト”という名前でも知られる。コミック史的な初登場は『バットマン』#417(1988年3月号)。古い設定では、レーガン大統領(当時)を含む要人を殺すためにアメリカに派遣されるが、最終的には前述の「フェイス・ザ・フェイス」でヴィランに殺害された。ニュー52では、『アクアマン&アザーズ』でメイヘムというチームを率いてヒーローと戦った。


こうして経緯で組まれた豪華ラインナップのアーティスト陣の先鋒として本書のアートを務めたのが、『キック・アス』で日本でも知られるジョン・ロミータ・ジュニアである。彼はマーベル・コミックスで長年アート・ディレクターを務めた伝説的な父親を持ち、1970年代から作画を始め、マーベルコミックスでほとんどの有名キャラクターを手掛けてきました。そんな彼が2014年からDCコミックスで仕事をするようになった際には、大きな話題を呼びました。本シリーズの幕開けにふさわしい強力な人選といえるでしょう。

ちなみに、現在までにロミータがDCで担当した作品としては『スーパーマン』や、『バットマン:ダークナイト・リターンズ』(小社刊)の前日譚である『ダークナイト・リターンズ:ラスト・クルセイド』などがあります。

コミックとシリアス、両方のテイストを併せ持った当代きっての人気アーティスト、ロミータ・ジュニアと、バットマンシリーズの屋台骨を支える人気ライター、スコット・スナイダー。二人のコラボレーションを心ゆくまで担当のしてください。

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!

(文責:山口)


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