2020年4月14日火曜日

『ワンダーウーマン:ヒケテイア』 ヒケテイアってそもそもなんだ?


アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは。

最近はあまり外出できない日々が続いていますね。
テレワークとなり、家にいながらオンライン会議などもするようになったのですが、この時はなんとなくバーチャルyoutuber感を味わえて楽しい気がしています。「はいどうもー! バーチャルyoutuberの~」って言いたくなりますね。僕だけでしょうか。


さて、今回は来週木曜日に刊行となる『ワンダーウーマン:ヒケテイア』を改めてご紹介できればと思います。

▲『ワンダーウーマン:ヒケテイア』書影

見るたびにすごいアートだなぁと思わされますね……。
この作品は2002年に発表された作品となり、最近の邦訳刊行の中では少し昔のタイトルになります。映画『ワンダーウーマン 1984』の公開にあわせて、ワンダーウーマンの名作を楽しんでいただければと思い、今回刊行を決めたこのタイトル。残念ながら映画公開は延期となってしまいましたが、ワンダーウーマン誌の中でも是非読んで頂きたい、編集部おすすめのタイトルです。

▐ ヒケテイアとは一体何なのか?? 


あらすじに関しては以前の「4月以降のアメコミ刊行ラインナップをご紹介!」にて触れましたが、改めてこちらにも記載します。


自らの故郷「セミッシラ」より外界に出てきたワンダーウーマンは、
自分の知る世界とこの世界の違いに慣れ始めたところであった。
そんな彼女の元に、突如ダニエルという女性が助けを求めに現れ、
ワンダーウーマンと古代ギリシアの儀式「ヒケテイア」を交わすことになる。
この儀式により、ワンダーウーマンはダニエルを守る使命を帯びることになるが、
彼女はとある理由から殺人の罪を抱えていた……。
グレッグ・ルッカが紡ぐ、ワンダーウーマンの悲劇が今、幕を開ける……。




ここで気になるのはタイトルにもなっている「ヒケテイア」という単語。皆さんはご存知でしたでしょうか。僕は初めて目にする単語だったのですが、このヒケテイアというのは、古代ギリシアで実際に行われていたとされる嘆願儀礼のことだそうです。


アメコミ初心者の方は「なぜ古代ギリシア?」と思われる方もいるかもしれません。その理由はワンダーウーマンの生い立ちにあります。彼女はギリシア神話でお馴染みのオリンポスの神々によって生み出されたという経緯があるキャラクターなのです。(ワンダーウーマンとは何者だ?という記事も読んでみて下さいね)。急にヒケテイア? 古代ギリシア??? となった方も、このワンダーウーマンの生い立ちに触れると納得がいくのではないでしょうか。


さて、このヒケテイアは他に取るべき手段を持たない者が、自分より大きな力を持つ者の膝にすがり、あごに触れることで援助や保護を乞うというもの、だそうです。
実際に本書の中で描かれる、ダニエルがワンダーウーマンに行うヒケテイアの儀礼を見てみると、かなり忠実に描かれているのが見て取れるのではないでしょうか。

▲左ページで膝にすがる様子、右ページ1コマ目であごのあたりに手を触れていますね。

そして、この儀礼をおこなった者は嘆願者を守るゼウスの庇護下におかれ、嘆願者に被害を加えるようなことがあれば、神からの報復を受けることになる……というのがヒケテイアです。つまり、この儀礼を受けたワンダーウーマンは何があってもダニエルを守らなくてはいけなくなってしまったのです。この儀礼により、ワンダーウーマンはゴッサムシティで殺人を犯したダニエルを追ってきたバットマンと対立することとなってしまいます。


▲バットマンとワンダーウーマンの争い

そして、庇護者であるワンダーウーマンを監視する神々の影も……。エリニュスと呼ばれるヒケテイアの儀礼をつかさどる3人の女神が、儀礼が果たされるかどうか、ワンダーウーマンと嘆願者の運命を監視しているのです。


▲ワンダーウーマンに警告をするエリニュス

儀礼を守らねばならないワンダーウーマン、犯罪との闘いに身をささげるバットマン、とある理由から殺人を犯したダニエル、そして神々……それぞれの持つ正義が複雑に絡み合い、やがて悲劇的な最後を迎えることになってしまうワンダーウーマンの物語。是非お手に取ってみてくださいね。



それでは、今回のアメコミ魂はここまでです。
次回の更新もお楽しみに。


(文責:比嘉)
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