2014年9月29日月曜日

担当編集も涙した『スパイダーマン:ステイシーの悲劇』

みなさんこんにちは!

今月のShoProBooksは、アメコミ新刊が3日と26日の2回発売でした。もう皆さんのお手元には届きましたか?

まず9月3日に発売したのがガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:プレリュードや、『猿の惑星:創世記(ジェネシス)&新世紀(ライジング) アートブック』といった映画公開と同じタイミングでお届けしたかった作品。

それから先週金曜日・26日は、大好評のバットマン「喪われた絆シリーズ」3部作完結編ジョーカー:喪われた絆〈下〉、そして前作発売より1年経っても人気の衰えないマーベルワールドの異端児デッドプール:スーサイド・キングスなどなど、重要&話題作品目白押し月間です。

それらの中でまだ1点、この「アメコミ魂」でご紹介していない重要なコミックがあるのにお気づきでしょうか? そう、我らの親愛なる隣人「スパイダーマン」の最新刊スパイダーマン:ステイシーの悲劇です!

ShoProBooks編集部と「アメコミ魂」では、このコミックを『アメコミ&スパイダーマン初心者』に贈るこの秋の推薦図書としてオススメします!


◆重要なポイントとは!
『スパイダーマン』の世界に根底ともいえる重要エピソードには、”愛する人の死”が描かれてきました。スパイダーマンシリーズを長く読んでいる方にはもうお馴染みですね。

ひとつは、ベンおじさんの死。
「スパイダーパワー」を手に入れた主人公 ピーター・パーカーが、父親代わりだったベンおじさんを殺されてしまう出来事。自分が強盗を見逃すことさえなければ、おじさんを喪うことはなかった、という自責の念が、今に至るまで「スパイダーマン」の根底を形作っています。このエピソードは、記念すべきスパイダーマン登場のストーリーのクライマックス。ShoProBooksベスト・オブ・スパイダーマンの最初のエピソードにもちろん収録!これまたアメコミ魂でも紹介しています。
そしてもうひとつが、このスパイダーマン:ステイシーの悲劇に納められているエピソード。
今年公開された映画『アメイジング・スパイダーマン2』ストーリーのモチーフともなっている、といえばもうお分かりでしょうか? ピーター・パーカーにとって最初の恋人「グウェン・ステイシーの死」です。


◆グウェンの「悲劇」
アメコミ魂では、7月にスパイダーマン:ブルーを紹介しました。
スパイダーマン史上でも特に魅力的なヒロインといえば、そこでも登場する「グウェン・ステイシーとメリー・ジェーン」2人のうちどちらかと言っても過言ではないでしょう!
全世界の半分を占めるであろう「MJファン」の方には申し訳ないのですが、本作でのMJはピーターたちの友人としてほんの少しの登場です。その代わりに、グウェンの肉親であり、スパイダーマンのよき理解者でもあるステイシー警部が登場します。

新聞「デイリー・ビューグル」の報道から、市民に反社会的な存在だとしてネガティブイメージをもたれているスパイダーマン。しかしステイシー警部は、スパイダーマンの本質を信じてくれた数少ない理解者でした。 その警部が、スパイダーマンとヴィランとの戦いに巻き込まれたことはスパイダーマンに大きな衝撃を与えます。スパイダーマンの腕の中で息絶える寸前、ヒーロー「スパイダーマン」にではなく娘の恋人「ピーター・パーカー」へと語りかける警部。愛する娘をその恋人へ託す父親の姿には、涙なくしては読み進むことができません。

しかしスパイダーマンの正体は絶対の秘密。「父親を亡くした原因はスパイダーマンである」と思い込んでしまったグウェンを前に、ピーターはどうすることもできないのでした…。


◆復活しない命
…といっても、アメコミといえば「実は生きていた!」というストーリーはよくあります。
絶命シーンまで描かれていたのに死んでいたはずのヴィランが復活するのは序の口で、メインストリーム『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』では過去にまで遡ってストーリーの改変が起きました。

現在、アメリカのマーベルコミックス刊行中のスパイダーマンはスパイダーマン:ブランニュー・デイ 1 以降の世界が基本設定になっています。一方で、復活していないキャラクター……それが「ベンおじさん」であり「ステイシー警部」であり「グウェン・ステイシー」です。
これらのキャラクターたちについては、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ編集者 トム・ブレブールトの「創作の手引き」にも考え方が記されています。(スパイダーマン:ブランニュー・デイ 1 に収録)

もしかすると、まだ今のところ登場していないだけかもしれません。しかし過去を背負ったヒーロー「スパイダーマン」は、この悲しみを乗り越えてこそのヒーローであって欲しいとも思うのです。

いかがでしたか?

「映画から『スパイダーマン』を知った」という方には、もしかするとグウェンは登場人物紹介の一人でしかなかったかもしれません。そんな方でも本書を読んでいただければ、1970年代に全米のコミックファンに衝撃を与えた大事件の一端を感じることができるのではないでしょうか。

そしてさらに既刊スパイダーマン:ブルーと繋げて楽しんでいただくと、主人公 ピーター・パーカーの、ヒロイン グウェン・ステイシーへの秘めた悲しみと想いがよりいっそう深いものとして味わうことができると思います。

この時期にスパイダーマンのエピソードを綴った脚本担当 ジェリー・コンウェイにまつわる秘話や、原書のストーリーではこのあとどうなったか、などなど資料性も高いと好評の解説小冊子も付属。翻訳担当 高木亮氏、渾身の増ボリューム!全6ページでお届けします。

秋の夜長に、ちょっとセンチメンタルな1冊、読んでみませんか?


(文責:石割太郎)