アメリカでは先月からテレビドラマ『ゴッサム』の放送が始まりました。ブルース・ウェインが両親を殺された頃のゴッサムシティを描いた群像劇で、ジェームズ・ゴードンをはじめアルフレッド、キャットウーマン、ペンギン、リドラー、ポイズンアイビーといったおなじみのキャラクターが次々と登場し、若い日の姿を見せてくれるこのドラマ、本国でも好調な滑り出しのようです。早く日本でも見てみたい! 『アロー/ARROW』~『フラッシュ』とはまた違う流れで、実写版DCユニバースを拡張してくれそうです。
コミックブックのほうでも、本国では今秋『ゴッサム・アカデミー』『アーカム・マナー』『ゴッサム・バイ・ミッドナイト』と、ゴッサムの住民を主人公にした新雑誌が次々と創刊されて、まさにバットマン75周年にふさわしい盛り上がり!
そんなゴッサムシティの活況に合わせるかのように、日本でも先日ついに『バットマン:ノーマンズ・ランド1』が発売されました! そこで、2012年の映画『ダークナイト ライジング』の元ネタの一つにもなった、バットマン史に残る伝説の超大作を、今回は紹介させていただきます。
▲『バットマン:ノーマンズ・ランド1』 ボブ・ゲイル他[作] アレックス・マリーヴ他[画] 定価:本体4,200円+税 ●好評発売中!● |
・「無法地帯のルール」……ゴッサムシティが政府によって立入禁止地域に指定されて、3ヶ月が過ぎた。だが、なぜかバットマンはずっと姿を消していた。一方、ライフラインを絶たれた街では、犯罪者たちが縄張り争いを繰り返している。そんなある日、バットマンのコスチュームをまとった謎の女性が現れる。
・「恐怖の信仰」……ゴッサムに残った一般市民にとって、教会は数少ない憩いの場である。だが、避難民に混ざって身を寄せていたスケアクロウの求めるものは、“憩い”などではなかった……。
・「地獄の歓楽」……街の混乱に乗じて闇市場を築き、暴利をむさぼるペンギン。だが、物品の流通を掌握し、一大勢力となっていた彼に対して、危険なゲームを仕掛ける者が現れる。
・「モザイク」……ゴードン本部長率いるゴッサム市警は、秩序の回復を目指し、少しずつ領土を広げていた。そこに襲来するブラックマスクの一団。しかも奴の狙う時計塔には、身動きの取れないバーバラ・ゴードンがいた!
スタート後しばらく経つと、『ノーマンズ・ランド』は全5巻の単行本として、順次まとめられていきました。これだけでも充分大長編ですが、それでも全エピソードの半分ほど(!)。今回の日本版の底本になっているのは、約10年後の2011年から本国で刊行された、全4巻の“完全版”です。
両者を簡単に比較してみると……
Ⓐ旧版(1999年~2001年刊)
・合計ページ数:約1050ページ(全5巻)
・内容:『ディテクティブコミックス』『バットマン』『バットマン:レジェンズ・オブ・ダークナイト』『バットマン:シャドウズ・オブ・バット』という、当時のバットマン系レギュラー雑誌を中心に展開された主要エピソード。
Ⓑ新版(2011年~2012年刊)→今回の日本版に
・合計ページ数:約2100ページ(全4巻)
バットマン史的には、これまた映画『ダークナイト ライジング』のモデルの一つになった、1993年の大作クロスオーバー『ナイトフォール』(バットマンが半身不随に)あたりからの流れの総決算でもあるこの作品、その間には『コンテイジョン』『レガシー』『カタクリズム』といったクロスオーバーがあって、ゴッサムシティは疫病や大地震に襲われるわけですが、そのあたりの流れも、翻訳を担当された高木亮さんによる解説でばっちりフォローされているのでご安心を。ちなみに、この時期のバットマンコミックとしては、『バットマンvs.ベイン』が小社から刊行されています。
▲『バットマン vs. ベイン』 チャック・ディクソン他[作] グラハム・ノーラン他[画] |
本巻の個人的なおすすめエピソードは、ヴィランたちの縄張り争いに翻弄される退役軍人の頑固おやじを描いた「安らぎの我が家」。作画はのちに『ヘルボーイ』のスピンオフ『B.P.R.D.』を手がけるガイ・デイビスが担当。ヒーローとヴィランの戦いだけでなく、市井の人々の多彩な人間模様を読むことで、脳内にゴッサムシティが立ち上がっていくような感覚が味わえるのが、本作の特徴の一つかなと。あと、『バットマン:ハッシュ完全版』をお読みいただいた方には必読のエピソードもあります!
皆様にぜひじっくり読んでいただきたい『ノーマンズ・ランド』、第2巻の発売はもう少し先になります。今月末に発売されるのは、グラント・モリソンが『バットマン・アンド・サン』以来つづってきた新サーガのクライマックスの幕開けとなる『バットマン・インコーポレイテッド』。そちらのほうもお楽しみに!
ではでは、今回はこのへんで失礼いたします。
(文責:中沢俊介)