2018年7月3日火曜日

2人のスパイダーマンって…誰と誰??

アメコミ魂をご覧の皆様、こんにちは!
本日ご紹介する書籍は、2人のスパイダーマンが次元を超えて初めて出会う物語『スパイダーメン』です。

ブライアン・マイケル・ベンディス[作]
サラ・ピチェッリ[画]
定価:本体2,100円+税
●2018年6月20日頃発売●


「2人のスパイダーマン??」「次元を超えて??」
……どういうこと?

「スパイダーマンといえば、ピーター・パーカーじゃないの?」「何この黒いコスチュームの人?」
……疑問だらけです。

これを理解するには、まずはマーベルの「アルティメット・ユニバース」から理解する必要があります。
……アルティメット・ユニバース?? もう訳分かりませんね^^;

ですが、ご安心ください。

この機会に「アルティメット・ユニバース」「アルティメット・スパイダーマン」について詳しく調べてみました。本書を読む前にこれだけ知っていれば、色々な疑問にくじけずに本書を最後まで読めることでしょう!

やや長文になりますが、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。


アルティメット・ユニバースとは?


マーベル多元宇宙について


マーベル・ユニバースは一つではありません。我々のよく知るマーベル・ヒーローが活躍するいわゆる"正史"と呼ばれるメイン・ストリーム(「アース616」)とは別に、スパイダー・グウェンがいる「アース65」、スパイダーハムがいる動物の世界「アース8311」、マーベル・シネマティック・ユニバースの世界「アース199999」などが存在し、多元宇宙(マルチバース)構造となってます。
ちなみに、私たちが住むこの現実世界は「アース1218」という設定です。

こういった多元宇宙の中でも、正史に次いで奥行きある幅広い世界を構築しているのが、本書の舞台になっているマイルズ・モラレス版スパイダーマンが活躍する「アルティメット・ユニバース」(「アース1610」)です。

アルティメット・ユニバースが生まれたわけ


なぜこのような多元宇宙が生まれたのでしょうか。

それは、1939年からマーベルの正史世界が何十年にもわたって脈々と積み重ねられた結果、一方で設定が複雑になりすぎて新規読者が入りずらくなり、一方で築き上げた設定に縛られストーリーがマンネリ化してきたことにより、90年代にコミック市場が大きく低迷したためです。

この状態を打破するため、マーベルは既存の正史世界を残しつつ、「マーベルのヒーローが実際に今、現実にいたらどうなるか」というテーマを突き詰め、よりリアリティのある娯楽性の高い作品レーベルとして世に送り出したのが「アルティメット・ユニバース」です。

この取り組みは成功を収め、特にそのリアリティのある世界観やビジュアル、深みのある人物描写、読者を飽きさせないテンポよい展開は、『アベンジャーズ』などのマーベル・シネマティック・ユニバースに多大な影響を与え、今日のマーベル人気への貢献度は大といえるでしょう。

そして、2000年に始まった「アルティメット」シリーズの第一弾としてリリースされたのが『アルティメット・スパイダーマン』です。


スパイダーマン史の概略


このアルティメット・スパイダーマンは、正史と同じくピーター・パーカーを主人公として始まりましたが、シリーズが進むにつれ少しずつ正史とは異なる歴史を辿っていくことになります。

それはおそらく、正史版スパイダーマンにおいてファンの共感を得られなかった出来事や、時代に合わない設定を刷新したためだと思われます。

アルティメット・スパイダーマンを理解するには、正史世界のスパイダーマン史の概略だけでも知っていると、その違いが分かりより楽しめます。

そこで、まずは正史スパイダーマンにおいて、いつどんな出来事が起こったのか、歴史を紐解いていきたいと思います。

正史世界(アース616)のスパイダーマン


●『アメイジング・ファンタジー』#15(1962年)
ニューヨーク・ミッドタウンで親戚のメイおばさんとベンおじさんに育てられた高校生のピーター・パーカーは、見学に行った研究所の実験中に特殊なクモに噛まれ、特殊な能力を得てスパイダーマンとなる。
さらに、自作の「ウェブ・シューター」とコスチュームを着て、テレビ出演して人気者になる。
しかし、たまたま見逃した強盗がベンおじさんを殺害したことにより、「大いなる力には大いなる責任が伴う」ことを学ぶ。
この記念すべきエピソードは、小社刊『ベスト・オブ・スパイダーマン』に掲載されてますので、機会がございましたらぜひご覧ください。


●『アメイジング・スパイダーマン』#2(1963年)
ピーターは、スパイダーマンの能力を生かしヴィランの写真を撮り、「デイリー・ビューグル」社に写真を売ってお金を稼ぎ始める。

●『アメイジング・スパイダーマン』#28(1965年)
ピーターがミッドタウン高校を卒業。

●『アメイジング・スパイダーマン』#31(1965年)
ピーターがエンパイア・ステート大学に入学。同級生のグウェン・ステイシーやハリー・オズボーン、マイルズ・ウォーレン教授らと知り合う。

●『アメイジング・スパイダーマン』#42(1966年)
ピーターがメリー・ジェーンと初めて顔を合わせる。

●『アメイジング・スパイダーマン』#90(1970年)
グウェンの父であるジョージ・ステイシー警部が、スパイダーマンとドクター・オクトパスの戦いに巻き込まれ殉職。

●『アメイジング・スパイダーマン』#121(1973年)
グウェン・ステイシーが、スパイダーマンとグリーン・ゴブリンの戦いの最中に首の骨を折って死亡。

●『アメイジング・スパイダーマン』#149(1975年)
グウェンを恋慕していたマイルズ・ウォーレン教授である怪人ジャッカルが、スパイダーマンのクローン体を作り本物と戦わせる。敗れたクローン体は消滅した(と思われた)。

●『アメイジング・スパイダーマン』#185(1978年)
ピーターがエンパイア・ステート大学を卒業。

●『アメイジング・スパイダーマン』#257(1984年)
メリー・ジェーンが、スパイダーマンの正体を昔から知っていたとピーターに告白。

●『アメイジング・スパイダーマン』#258(1984年)
スパイダーマンが別の惑星で手に入れた強力な黒いスーツが、エイリアン共生体「シンビオート」であることが判明し、決別する。裏切られたと感じたシンビオートはスパイダーマンに復讐を誓う。

●『アメイジング・スパイダーマン』#290-292(1987年)
ピーターはメリー・ジェーンにプロポーズし、最初ためらっていたMJも結婚を決意する。

●『アメイジング・スパイダーマン・アニュアル』#21(1987年)
ピーターとメリー・ジェーンが結婚。

●『アメイジング・スパイダーマン』#298(1988年)
スパイダーマンから離れたシンビオートが元新聞記者のエディ・ブロックと融合してヴェノムが誕生。

●『アメイジング・スパイダーマン』#344(1991年)
ヴェノム共生体の一部が連続殺人鬼クレタス・カサディと融合してカーネイジが誕生。

●『ウェブ・オブ・スパイダーマン』#118(1994年)
『アメイジング・スパイダーマン』#149で死んだと思われたクローン体、ベン・ライリーがピーターの前に現れ「スカーレット・スパイダー」としてヒーロー活動を開始する。以後2年に及ぶ「クローン・サーガ」開幕。

●『スペクタキュラー・スパイダーマン』#226(1995年)
実はベン・ライリーの方が本物で、ピーター・パーカーの方がクローン体だったと判明する!

●『スペクタキュラー・スパイダーマン』#229(1995年)
ピーターは引退を決意し、スパイダーマンの座をベンに譲る。

●『スパイダーマン』#75(1996年)
やはりピーターが本物でベンがクローン体だったという真実が明らかとなる。ベンはピーターをかばって死亡。「クローン・サーガ」完結。

●『ニューアベンジャーズ』#1(2005年)
スパイダーマンがアベンジャーズの正規メンバーとなる。トニー・スタークはピーターを自らの後継者として育てようと決意する。

●『シビル・ウォー』#2(2006年)
トニー派としてピーターは超人登録法に賛成し、政府側につく。15才からスパイダーマンをやっていたとマスコミの前で公表。
なお、この公表および後のトニー・スタークとの決裂によるMJとメイおばさんの警護解除を一因として、メイおばさんがキングピンが雇った殺し屋に狙撃され重傷を負う。

●『アメイジング・スパイダーマン』#544-545(2007-2008年)
大型クロスオーバー・イベント「ワン・モア・デイ」開始。メイおばさんを救うため、ピーターはMJとの「愛」と引き換えに大悪魔メフィストと取引をする。これによりMJとの結婚、メイおばさんの負傷、「世間に正体を明かしたこと」などの出来事が消滅する。
この一連の出来事は、邦訳版『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』(小社刊)で読むことができます。


●『アメイジング・スパイダーマン』#546(2008年)
世界中の人々はスパイダーマンの正体を知らない状態に戻った。ピーターは独身に戻りメイおばさんと暮らし始め、独身に戻ったMJも西海岸で一人暮らしを始める。
設定を変更した"新しい"スパイダーマンシリーズは、邦訳版『スパイダーマン:ブランニュー・デイ1~3』(小社刊)にまとめられてます。


●『スパイダーメン』#1-5(2012年)
異次元のスパイダーマンであるマイルズ・モラレスと出会う。(*本書)
正史世界であるアース616とアース1610が初めてクロスオーバーした歴史的事件となる。

●『アメイジング・スパイダーマン』#682-687(2012年)
ドクター・オクトパスが臨終の時を迎える。

●『アメイジング・スパイダーマン』#698-700(2012-2013年)
ピーターとオクトパスの肉体が入れ替わり、ピーターは末期状態のオクトパスの肉体のまま命を落とし、ピーターの体に入ったオクトパスが生き残るという結末を迎える。アメイジング・スパイダーマン誌一旦終了。

●『スペリオル・スパイダーマン』#1-31(2013年)
ピーターの体に入ったドクター・オクトパスが新たなスパイダーマンとして活動開始。様々な装備を開発し、パーカー・インダストリーズを設立。数々の戦いの後、ドクターオクトパスは自分よりピーター・パーカーこそスパイダーマンとして優れていると認め、肉体をピーターの精神に明け渡し消滅。

●『アメイジング・スパイダーマン』#1-18(2014-2015年)
新シリーズがリランチ。#9-15では、様々な次元のスパイダーマンが集結、共闘する「スパイダーバース」イベントが行われる。

●『アメイジング・スパイダーマン』#1-32(2015-2017年)
さらに新シリーズがリランチ。スパイダーバースから帰還したピーターは、パーカー・インダストリーズを巨大企業へと成長させ、ピーターとしてもスパイダーマンとしても大成功を収め今に至る。

……いかがでしょうか。50年に及ぶスパイダーマンの歴史のほんの概略ですが、私自身こうやって整理してみると、正史世界のスパイダーマンを大分理解できたように感じます。

続いてアルティメット・ユニバースのスパイダーマン史をご紹介します。

アルティメット・ユニバース(アース1610)のスパイダーマン


【初代スパイダーマン】

●『アルティメット・スパイダーマン』#1-7(2000-2001年)
15才のピーター・パーカーは、オズボーン産業が遺伝子改良を施したクモに噛まれ、クモに似た超能力を手に入れ、スパイダーマンとしての活動を始める。ベンおじさんが強盗に殺される。

●『アルティメット・スパイダーマン』#13(2001年)
ピーターは密かに恋心を抱くメリー・ジェーンに自分の正体を告白する。

●『アルティメット・スパイダーマン』#14(2001年)
ピーターが通う高校にグウェン・ステイシーが転校してくる。

●『アルティメット・スパイダーマン』#28-32(2002-2003年)
グウェンの父親ジョン・ステイシー警部が死亡。ジョンの元妻は娘を引き取ることを拒否したため、グウェンはパーカー家で居候を始める。

●『アルティメット・スパイダーマン』#33-39(2003年)
ピーターの父親が開発していた特殊スーツが、大学生のエディ・ブロックと融合してヴェノム誕生。

●『アルティメット・スパイダーマン』#54-59(2004年)
グウェンがスパイダーマンの正体に気づく。

●『アルティメット・スパイダーマン』#60-65(2004年)
カート・コナーズ博士がピーターのDNAを使ってカーネイジを作り出す。グウェンがカーネイジに生命力を吸い取られて死亡。

●『アルティメット・スパイダーマン・アニュアル』#1(2005年)
メリー・ジェーンと別れたピーターが、X-MENのキティ・プライドと交際開始。

●『アルティメット・スパイダーマン』#97-105(2006-2007年)
ドクターオクトパスがピーターのDNAを使って複数のクローン体を作り出す。グウェンとカーネイジのハイブリッド体がクローンとして復活。ピーターはメイおばさんに自分の正体を明かす。

●『アルティメット・スパイダーマン』#123-128(2008-2009年)
ヴェノムがカーネイジの共生体を吸収・融合。それによりグウェンは普通の人間に戻る。

●『アルティメット・スパイダーマン』#155(2011年)
ピーター16才の誕生日を迎える。

●『アルティメット・スパイダーマン』#156-160(2011年)
「アベンジャーズvs.ニュー・アルティメッツ」事件に巻き込まれ重傷を負ったスパイダーマンは、ゴブリンら宿敵たちに襲撃を受け、最後ゴブリンと相討ちになり、メイおばさんたちに見守られつつ息を引き取る。


【二代目スパイダーマン】

●『アルティメット・コミックス:オールニュー・スパイダーマン』#1-5(2011-2012年)
ピーター死亡の11か月前、マイルズ・モラレス少年はオズコープ研究所から盗み出された遺伝子改良されたクモに噛まれ、ピーターと同じ超能力を手に入れる。数か月後、ピーターが死亡する現場を目撃したマイルズは、彼の遺志を継いでスパイダーマンになることを決意する。シールドのニック・フューリー長官から黒いコスチュームを与えられる。

●『スパイダーメン』#1-5(2012年)
マイルズは異次元から来たピーター・パーカーと出会う(*本書)

●『アルティメット・コミックス:オールニュー・スパイダーマン』#13-18(2012-2013年)
マイルズはメイおばさんとグウェンから、ウェブ・シューターを手渡される。キャプテン・アメリカがアメリカ臨時大統領に就任するとともに、マイルズはアルティメッツ(アルティメット・ユニバース版アベンジャーズ)に加入する。

●『アルティメット・コミックス:オールニュー・スパイダーマン』#19-22(2013年)
マイルズとヴェノムの戦闘中、マイルズの母親リオが警官の放った流れ弾に当たって死亡する。マイルズはスパイダーマンとしての活動から引退する。

●『アルティメット・コミックス:オールニュー・スパイダーマン』#23-28(2013年)
母の死から1年、14才になったマイルズは再びスパイダーマンのコスチュームを着る決意をする。

●『マイルズ・モラレス:アルティメット・スパイダーマン』#1-7(2014-2015年)
死んだはずのピーター・パーカーが生きていることが発覚。ピーターはスパイダーマンの座をマイルズに託し、メリー・ジェーンとともに旅立っていく。

●『アメイジング・スパイダーマン』#9-14(2015年)
異世界のスパイダーマンが一同に会するクロスオーバー・イベント「スパイダーバース」にマイルズも参加。

●『マイルズ・モラレス:アルティメット・スパイダーマン』#8-12(2015年)
アース616の地球とアース1610の地球が衝突して、二つのユニバースが一時的に消滅する。この場面は『デッドプールVol8:オール・グッド・シングス』(小社刊)でも描かれていた。

●『シークレット・ウォーズ』#1-9(2015-2016年)
アース616の地球とアース1610の地球が衝突したことによって複数の異世界が融合して一つになる。これによりマイルズは正史世界の住人となり、正史世界に2人のスパイダーマンが存在することとなった。

●『スパイダーマン/デッドプール』#2(2016年)
正史世界でピーターとマイルズ(それとデップー)が共闘する。詳しくは『スパイダーマン/デッドプール:ブロマンス』(小社刊)をご覧ください。



……以上になります。ふぅ、膨大な歴史に目がくらみますね。調べる方もかなり大変でしたよ……。

というのは本当は嘘で、実はアルティメット・スパイダーマンの歴史については、訳者の高木亮氏による本書封入解説にこれ以上ないくらい詳しくまとめられていたんです。私はそこから抜粋しただけでした(๑≧౪≦)
(これでも、ほんの一部です。)

細かい文字で6ページに渡って、アルティメット・ユニバースからアルティメット・スパイダーマンの歴史まで網羅したこの解説書を読むだけでも、本書は一見の価値ありです。

以上、今週のアメコミ魂はここまでとさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました!来週またお会いしましょう。

(文責:小出)

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