2018年9月11日火曜日

『バットマン/フラッシュ:ザ・ボタン』――DCユニバースの転換点をウォッチせよ!



アメコミ魂をご覧の皆様こんにちは!
本日ご紹介する書籍は9月20日ごろ発売の『バットマン/フラッシュ:ザ・ボタン』です。

ジョシュア・ウィリアムソン、トム・キング[作]
ジェイソン・ファボック、ハワード・ポーター[画]
定価:本体2,100円+税
●2018年09月20日頃発売●

本書籍の注目ポイントはズバリ、80年に及ぶDCコミックスの歴史を改編した2011年「フラッシュポイント」からの、「ニュー52」~「DCリバース」と続く大きな流れの転換点となる作品である点です。

そこで今回のアメコミ魂では、フラッシュポイントから本書に至るDCユニバースの流れを私なりに整理してみたいと思います。

事の発端はフラッシュ(二代目フラッシュ/バリー・アレン)でした。


フラッシュポイント事件とニュー52シリーズのスタート


バリーの母親を殺した真犯人が、フラッシュの宿敵であるリバース・フラッシュ(イオバード・ソーン)だと知ったバリーは、スピードフォースで過去に遡りソーンから母親を救いました。

しかしこの禁断の歴史改変行為によりバタフライ効果(*)が生じ、1935年以来脈々と続いてきたDCユニバースの世界が大きく改変されてしまったのです!

*ブラジルで一匹の蝶が羽ばたけば、連鎖反応によってテキサスで竜巻が起きるかもしれないという理論的事象。

そして改変されたDCユニバースにおいては、バリーの母親が健在で、ゴッサムシティの路地裏で強盗に殺されたのはブルース・ウェインで、ブルースの父親トーマス・ウェインがバットマンになり、さらにヨーロッパ全土を災禍に巻き込むアクアマンVSワンダーウーマンの大戦争が起こっていました!(ややこしい・・・)

なんとか歴史改変を元に戻そうとするバリーは、バリーの話を聞いて息子ブルースが生きる本来の世界に希望を見いだしたトーマス・ウェインの力を借りて、世界を元に戻すことに成功したかに見えました。

・・・・・・しかし、バリーが戻った世界はそれまでのDCユニバースとは微妙に違っており、三つの世界(ヴァーティゴコミックス、ワイルドストーム、DCコミックス)が融合し、世界にスーパーヒーロー達が誕生したのはわずか5年前、という世界でした。

こうして始まったのがニュー52の世界です。

このニュー52の世界では、それまでのDCユニバースの設定を引き継いでいる部分もあるものの、「スーパーマンの死」や「ノーマンズ・ランド」といった有名な事件は消えてしまいました。

そして、この「フラッシュポイント」と同月(2011年8月)に刊行されたのが、世界にスーパーヒーロー達が誕生した5年前の瞬間を描いた『ジャスティス・リーグ:誕生(THE NEW 52!)』でした。

『ジャスティス・リーグ:誕生(THE NEW 52!)』


新章突入となるDCリバース


世界にスーパーヒーローが誕生してから10年、ニュー52がスタートしてから約5年後の2016年5月に始まった新シリーズが「DCリバース」です。
そしてその嚆矢として刊行されたタイトルが『DCユニバース:リバース』です。

『DCユニバース:リバース』

『DCユニバース:リバース』は、フラッシュポイントのようにそれまでのDC世界を一変させる"リランチ"ではなく、ニュー52の世界を前提とした"新章突入"でした。
ですので基本的には、DCリバースの世界において、ニュー52で描かれた事件はすべて"起こった出来事"として理解してよいでしょう。

この『DCユニバース:リバース』において、大いなる謎とともに登場するのが、三代目フラッシュであるウォリー・ウェストです。

ウォリー・ウェストはニュー52シリーズでは全く登場しなかったことから、DCユニバースに"いないもの"と思われていましたが、そうではなく、フラッシュポイント事件を契機に時間軸の外側に弾き飛ばされていたのでした。

そしてウォリーは、歴史改変を引き起こした真の原因はフラッシュポイント以外にあることをバリーに告げます。

バリー:「犯人はソーンか?」
ウォリー:「いや、ダークサイドやリバース・フラッシュよりもっと強い存在だ」「会ったことのない未知の存在だ」
ウォリー:「今も僕らをウォッチ(監視)している」

そうです、フラッシュポイントの裏でDCユニバースを10年にわたりウォッチ(監視)し、操る存在がいたのです!
それは一体誰なのでしょうか?

『DCユニバース:リバース』のストーリーは最後、バットケイブの岩に埋まった黄色いスマイルマークのボタンをバットマンが見つけるところで終わりました。


ウォッチメンとの関わりは?


『DCユニバース:リバース』の注目すべき点は、新シリーズのオープニングタイトルというだけではありません。
その巻末資料で語られたように、物語の随所に『ウォッチメン』との関わりを仄めかす描写が存在する点です。

『ウォッチメン』

1986~1987年にDCコミックスから発表されたアラン・ムーア脚本の『ウォッチメン』は、SF文学の最高峰ヒューゴー賞をコミックとして史上初めて受賞し、今でもアメコミ最高傑作との称号をほしいままにする作品です。
日本においても人気が高く、おそらく日本で最も販売部数の多いアメコミだと思われます。

しかし、DCコミックスにとってこれだけ重要な作品にも関わらず、その内容はというと他のDCキャラクター達(バットマンやスーパーマン、ワンダーウーマン、フラッシュ、ジャスティス・リーグなど)は一切登場せず、その後のDCの他の作品においても正式に語られることのない孤高の作品となっています。

そのため、作品やキャラクターがクロスオーバーすることの多いアメコミ(DC、マーベル問わず)において、ウォッチメンはDCユニバースに属さない別次元の作品と思われてきました。

ところが、『DCユニバース:リバース』において、おそらく初めてウォッチメンが、スーパーマンやバットマンと同じDCユニバースに存在することが仄めかされたのです!

・・・・・・『ウォッチメン』は1985年10月のロールシャッハの日記から物語が始まります。
そして現在のDCユニバースにおいては、この世界に初めてスーパーヒーローが登場したのは2011年の5年前、2006年ということになっています。

果たしてその21年前に、オジマンディアス、ナイトオウル、ドクター・マンハッタンといったウォッチメンに登場したヒーロー達がDCユニバースに存在していたのでしょうか?
もしそうなら、彼らは今どこで何をしているのでしょう?
(ロールシャッハはやはり死んでしまったんでしょうか・・・・・・)

また、ウォッチメンがDCユニバースの一員だとしたら、俄然気になってくるのが『DCユニバース:リバース』にウォッチメンの元ネタとなったキャラクター達(*)が描かれている点です。

*キャプテン・アトム(⇒ドクター・マンハッタン)、サンダーボルト(⇒オジマンディアス)、ブルービートル(⇒ナイトオウル)

果たしてこれららのキャラクターはどうウォッチメンと絡んでくるのでしょうか?

いずれにせよ、ウォッチメンは現実のアメリカ現代史と濃厚に関わりを持つ、非常にリアリティの強い作品でした。
ウォッチメンがDCユニバースに存在するとなると、バットマンやスーパーマンといったスーパーヒーロー達は今後さらに強いリアリティを帯びて描かれていくことでしょう。

今後のDCユニバースの展開が気になるところです。


『バットマン/フラッシュ:ザ・ボタン』の冒頭紹介


物語はバットケイブでバットマンが、血のついた黄色いボタンを調べるシーンから始まります。

このボタンはもちろん、『ウォッチメン』冒頭で死亡したコメディアンが付けていたボタンでしょう。

ボタンからは放射線が発せられていることが判明し、テーブルに置いたサイコ・パイレートの仮面と反応しました。
(※なぜサイコ・パイレートの仮面がバットケイブにあるのかというと、精神を病んだゴッサムガールを治療するために使用したためです。詳しくは『バットマン:アイ・アム・ベイン』をご覧ください。)

その間均等な9コマのレイアウトが多用されますが、ここでも『ウォッチメン』を連想させる描写となっています。

そして、そこに突然現れバットマンを襲うのが、イオバード・ソーンことリバース・フラッシュです。

ソーンはフラッシュポイント事件の際トーマス・ウェインによって殺されましたが、すでに時間の因果律を超越した"生きたタイムパラドックス"になっている彼は、死亡しても別の時間軸から現れ復活することができるようです。

しかし、トーマス・ウェイン版バットマンに一度"殺された"復讐と、謎の黄色いボタンを手に入れるため、現在の時間軸のバットケイブに出現し息子ブルース・ウェインに襲いかかったのです。

均等な9コマのレイアウトの中、延々とソーンに殴られ続け気絶するバットマン。

黄色いボタンを手にしたソーンは一瞬どこかに移動します。しかし次の瞬間、体の左半分が干からび骨が剥き出しになった無残な姿でバットケイブに再び現れ、「神を見た」と言って息絶えます。
そしてソーンの手には黄色いボタンはありません・・・・・・。

果たしてソーンは誰に殺されたのか?
そしてボタンはどこへ消えたのか?

ここから先はぜひ本書を手に取ってご覧ください。DCユニバースの一大転換点となる本書、ぜひお見逃しなく!


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今週のアメコミ魂はこの辺りとさせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました。

(文責:小出)

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