2019年12月24日火曜日

クリスマス・イブにぴったり!『バットマン:ノエル』



『アメコミ魂』をご覧の皆さま、こんにちは!

早いもので12月ももう終盤。そして本日はクリスマス・イブですね。残念ながら弊社が居を構える東京ではホワイトクリスマスとはなりませんでしたが、イルミネーションが街を彩っているのが見受けられます。

さて、今回は先週の予告通り、クリスマス・イブの今日にぴったりのアメコミ『バットマン:ノエル[新装版]をご紹介いたします!


▲バットマン:ノエル書影


『バットマン・ノエル』は『ジョーカー』でアートを手掛けたリー・ベルメホが、作・画をともに務めた名作です。この作品は19世紀のイギリスの小説家であるチャールズ・ディケンズが、1843年に発表した作品『クリスマス・キャロル』を下敷きにした物語となっております。『クリスマス・キャロル』は有名な作品ですので、皆さんもご存知かもしれませんが、簡単にストーリーをご紹介いたします。

▐ 『クリスマス・キャロル』の物語


『クリスマス・キャロル』の舞台はロンドンの下町。そこで事務所を携えるスクルージという強欲で冷酷非道な老人は、ボブ・クラチットという秘書を薄給でこき使っています。
そんなスクルージの前に、クリスマスの前日、過去に事務所を共同経営していた仲であるマーレイという男の亡霊が現れます。マーレイはスクルージがこれまでの生き方を改めなければ悲惨な運命をたどること、そして3人の精霊がスクルージの生き方を改めるためにこれから現れることを告げて、彼の目の前から消えてしまいます。

その後、スクルージの目には予告通り3人の精霊が現れます。最初に現れた精霊は過去を見せる精霊で、スクルージが強欲な守銭奴になる前の純粋な姿を見せてきます。
2人目の精霊は現在を見せる者で、秘書であるクラッチト家の貧しいながらも幸せな生活と、その一方で一家の末っ子ティムが病のために長く生きられないことを示します。
そして最後に現れた精霊は、今の生活を続けると孤独で悲惨な死がスクルージに訪れるという未来を見せます。この体験を受けて、スクルージが今までの自分を悔い改め、改心する……というのが『クリスマス・キャロル』の大まかなストーリーです。


今回ご紹介する『バットマン:ノエル』は、この冷酷な老人スクルージをバットマンに置き換えたお話になります。

とはいえこの作品のバットマンはヴィランなどではなく、読者にとってはお馴染みのゴッサムシティの守護者として活動しています。しかし、彼はロビン(ティム・ドレイク)を失った過去から、悪を排除するためには手段を選ばない冷酷な人間に成り果てていました。

▐ バットマンという"スクルージ"


バットマンは、貧しさからジョーカーの使い走りをしているボブという男を囮にすることで、ジョーカーを捕らえようと企みます。その際に冷徹なバットマンは、ボブの息子であるティムやボブ自身に降りかかるだろう危険などは一切目もくれません。なんでも持っている富豪のバットマンからすれば、ボブの貧しさや貧しさから犯罪に手を貸すことになってしまう境遇は理解できない様子。ボブのことを「雑魚」と言い捨てる様子は、とても人々を救うヒーローとは思えない姿であり、さすがのアルフレッドも彼のことをたしなめます。



そして、この冷徹な計画をバットケイブで見守っている最中、バットマンの目の前に亡くなったはずのロビンの亡霊が現れるという奇妙な現象が起こります。ロビンはバットマンに生き方を改めることと、今の怒りや悪意、復讐に囚われて生きる人生を続けるのであれば、必ず報いを受けることになるという警告を彼に伝えて消えてしまいます。





この体験を皮切りに、クリスマス・イブの夜、バットマンは宿敵を追い求める最中で奇妙な出来事に巻き込まれていきます。その中でバットマンは一体何を得ることになるのでしょうか。闇の騎士の『クリスマス・キャロル』をぜひお手に取ってご覧頂ければと思います。

▐ バットマンを変える3人の精霊たち


この作品における3人の精霊役は、作品の背表紙にも特徴的に描かれている、キャットウーマン、スーパーマン、ジョーカーの3人。この精霊役にバットマンと最も関係が深いともいえる3人が配置されているのは注目のポイントです。

▲バットマン:ノエル裏表紙(一部切り取り)

バットマンに関係の深い彼らが見せる過去、現在、未来は一体どのようなものなのでしょうか。そしてそれを受けてバットマンは何を感じ、何を想うのでしょうか。リー・ベルメホが描く『バットマン』版の『クリスマス・キャロル』のストーリーは必見です。

またやはりベルメホといえばそのアート。彼の描くキャラクターたちと雪景色のゴッサムシティの様相は思わず見入ってしまうほどの美しさです。ベルメホが『ジョーカー』で描いたダークで陰鬱なゴッサムシティとは、また違った美しさが感じられるのではないでしょうか。

▲ゴッサムシティの雪景色

また、この作品は読み切り作品ともなっていますので、最近DCコミックスに触れ始めたというファンの方でも安心して読むことができます。

バットマン史上、最も心温まる物語。ぜひこの機会にお手に取ってみてくださいね。


それでは、今日はこの辺で失礼いたします。

来週の「アメコミ魂」は年内最後になります!
更新は12月31日(火)19時~20時頃を予定しております。引き続きよろしくお願いいたします!

(文責:比嘉)
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