アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは。
早いもので今年も半分が終了し、あっという間に7月になりましたね。春は外に出れなかったので、冬の次に夏が来ているような感覚です。
さて、本日は8月に増補改訂版として3度目の刊行を迎える作品『バットマン:アーカム・アサイラム』をご紹介しようと思います。
▐ バットマン史に残る衝撃の問題作『バットマン:アーカム・アサイラム』
▲『バットマン:アーカム・アサイラム 完全版』書影 |
前回の記事『名作ぞろい! クラシック作品はいかが?【DC編】』では『ウォッチメン』や『DARK KNIGHT バットマン:ダークナイト』といったクラシックな作品を紹介しました。今回ご紹介する『バットマン:アーカム・アサイラム』もそんな作品の一つ。刊行されたのは1989年と30年以上昔になりますが、今でも色あせることのない、バットマン史上屈指の衝撃作として有名です。
ShoPro Booksからは2000年に初めて刊行し、その後2010年に完全版を刊行しており、今回は3回目の刊行になります。それだけアメコミ読者の皆さまに読んでいただきたい名作の一つです。
ShoPro Booksからは2000年に初めて刊行し、その後2010年に完全版を刊行しており、今回は3回目の刊行になります。それだけアメコミ読者の皆さまに読んでいただきたい名作の一つです。
▐ 狂気が渦巻く館、アーカム・アサイラム
物語は4月1日のエイプリルフールに動き出します。犯罪者たちの精神病院「アーカム・アサイラム」で暴動が発生し、囚人たちに病院が乗っ取られてしまう事態が発生。アーカムの囚人たちは家具やマネキン、食べ物や衣装と、職員たちを人質に異質な要求を行っていました。その要求の中にはバットマンの存在も――バットマンはジョーカーに誘われ、アーカム・アサイラムを訪れることになります。
物語は4月1日のエイプリルフールに動き出します。犯罪者たちの精神病院「アーカム・アサイラム」で暴動が発生し、囚人たちに病院が乗っ取られてしまう事態が発生。アーカムの囚人たちは家具やマネキン、食べ物や衣装と、職員たちを人質に異質な要求を行っていました。その要求の中にはバットマンの存在も――バットマンはジョーカーに誘われ、アーカム・アサイラムを訪れることになります。
▲デイブ・マッキーンの描くジョーカー。禍々しさがすごいですね。 |
ジョーカーに招かれるかたちでアーカムの門をくぐるバットマン。精神を病んだヴィランたちに占領されているこの狂気の館の内部は、恐ろしく陰鬱で、混沌とした様相でした。
バットマンはこの館の中で、ジョーカーにより開催された「かくれんぼ」を通して、様々なヴィランと対峙し、彼らの内面に持つ狂気に触れながら館の中をさまようことになります。この「かくれんぼ」を通じて、バットマンも次第に彼らの狂気に感化され、飲み込まれてしまい……? バットマンと共に、この狂気の世界を旅してみてはいかがでしょうか。
この作品はグラント・モリソンの描くストーリーと、デイブ・マッキーンの幻想的という言葉では言い表しきることのできないアートが融合した、唯一無二の作品です。普段アメコミに慣れ親しんでいる読者の皆さんも、思わずぎょっとしたのではないでしょうか。特にジョーカーは一度見れば目に焼き付けられてしまうのではないでしょうか。他にも、登場するヴィランたちは皆個性豊かに描かれています。しかし、一方でバットマンは黒塗りの影のように描かれていることがほとんど。ここには何か意味があるのでしょうか……?
最後に、個人的に印象的な部分をご紹介します。まずは、バットマンがアーカムに向かう前に、ジム・ゴードンに漏らしたこの言葉。
「だから、アーカムの門をくぐって…背後で扉が閉じた時に、
自分の家に帰ったような気がしそうで…それが怖いんだ」
バットマンはヒーローであり、収容されている囚人たちとは違う、正義の人物であるはずです。その彼が、何故アーカムを自分の家と錯覚するかもしれないと恐れているのでしょうか。その理由とは一体……?
そしてもう一つ、バットマンがアーカム内でマッドハッターと遭遇したこのシーン。
顔も見えないほど黒く塗られたバットマンとは対照的に、色彩も表情も豊かに描かれる彼のセリフも大変印象的です。
「アーカムは鏡の国じゃよ」
「わしらはおぬしなのさ」
アーカムのヴィランたちがバットマンである、その言葉の真意は一体何なのでしょうか。恐らくそれは、バットマンと共にアーカムをさまようことで理解できると思います。ぜひ、皆さんもバットマンと共にアーカムの囚人たちの内面に潜む狂気に触れてみてください。
また、8月刊行の『バットマン:アーカム・アサイラム 増補改訂版』では、グラント・モリソンによるスクリプトはもちろん、デイブ・マッキーンによるアートも収録されております。バットマン史に残る衝撃の問題作を、ぜひ本書で味わい尽くしてくださいね。
それでは、今回のアメコミ魂はここまでです。
次回の更新もお楽しみに。
(文責:比嘉)
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